廃墟と化した素晴らしいアニワ灯台に隠された物語

観光・自然
ニコライ・シェフチェンコ
 ロシア極東、オホーツク海に、すでに使用されなくなった灯台が立っている。アクセスするのはかなり難しい場所であるにもかかわらず、多くの観光客を魅了している。

 アニワ灯台はロシアでもっとも到達困難場所にある灯台の一つである。長年にわたり、オホーツク海に位置する岩でできたアニワ岬の危険な海岸付近に船で近づかないよう警告されてきた。現在、灯台は打ち捨てられた状態となっているが、今なお、非常に人気の観光スポットとなっている。

日本人による設計

 ロシア極東にあるロシア最長の島サハリンには、比類のないほど美しい灯台がある。すでに使われていないこの灯台には長い歴史がある。

 第二次世界大戦末期、日本人は、サハリン島から追い出される前に、島でもっともアクセスしにくい場所の一つであるアニワ岬に灯台を立てた。

 灯台を設計したのは日本人の三浦忍。建設は1937年に開始され、2年の歳月が費やされた。そして1939年、アニワ灯台はアニワ岬のもっとも到達困難な場所に設置されたのである。日本語でこの灯台は「中知床岬灯台」と呼ばれる。

 この海域は、その海流や濃霧、岩の多い浅瀬など、岬に接近する船にとって危険な場所となっていたことから、灯台は必要不可欠なものであった。

 伝説によれば、日本の設計士がこのプロジェクトを完成させたとき、灯台の縮小模型が天皇に贈られたと言われている。

灯台の内部

 アニワ灯台はコンクリートでできた丸い塔とやや高さのない別棟でできている。塔は高さ31㍍、9階建てである。1階は道具のための倉庫、2階は無線室となっている。

 3階から5階は生活空間となっていて、2段ベッドがいくつかあり、最大12人が同時に滞在できるようになっていた。その上の階は倉庫で、最上階には、照明と灯中央部を流れる電力により自動で動く回転装置が置かれている。

 灯りは19浬(35㌖)先から目にすることができた。

使用停止

 1990年、ロシアは灯台の職員を解雇し、手動式に変更した。灯台にはラジオアイソトープ発電機が設置され、2006年まで稼働していた。しかし現在、灯台は使用されておらず、そのまま打ち捨てられている。

 ロシア極東で旅行サービスの仕事をするドミトリー・クリコフさん、「灯台は今も十分、稼働できる状態です。中に入るのも今のところは安全ですが、部品が劣化し始めており、まもなく危険な場所となる可能性があります。塔はコンクリートとレンガでできていますが、金属製のドアや構造物はかなり錆び付いています」と語っている

 しかし、このような状態にあっても、この独特の灯台は、美しい景色や素晴らしい写真を撮りたいという人々やアドレナリンを求める人々を惹きつけてやまない。

 最寄りの居住区から1時間半自動車に乗り、そこからボートに2時間乗れば、アニワ岬に辿り着くことができる。そこからロープを使って岩に登って、灯台の基礎部分に近づく。それ以外の道はない。しかし、ここまでして灯台に行き着いた者は素晴らしい褒美を手にすることができる。

 クリコフさんは言う。「初めて辿り着いた人には、最高の感動を得ることができます。灯台は素晴らしいです。ゴツゴツしていて頑丈な灯台が、海の真ん中に立ち、切り立った岩壁に張り出しているのです。そして灯台は今はすっかり灰色になっていますが、近寄って見ると、ストライプの模様が描かれているのが分かります。それがすっかり打ち捨てられていたという印象を与えます。そこにはツバメが巣を作っているんですよ」。

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