1. モスクワとサンクトペテルブルクを結ぶ新しい高速道路の長さは669キロメートルで、モスクワ州、トヴェリ州、ノヴゴロド州、レニングラード州を通る。サンクトペテルブルクの有名な川に因んで「ネヴァ」と名付けられたこの高速道路は、ロシアの現代史における最大のインフラ事業の一つだ。費用総額は5200億ルーブル(8858億円)で、国や個人投資家が出資している。参考までに、最近完成したクリミア大橋(ケルチ海峡大橋)はこれより安く、2280億ルーブル(3883億円)だった。
2. モスクワからサンクトペテルブルクへ至る道はロシア国内で最も交通量が多く、従来の無料のM10高速道路では増加し続ける交通量に対応できなかった。新しいM11は、その負担の一部を引き受けることを目的としており、通過交通はM11が、地域交通はM10が担う。当局職員の話では、M11の開業によってすでにモスクワ・サンクトペテルブルク間の事故件数は半減したという。2030年までに、事故は3分の1から5分の1にまで減ると見込まれている。
3. 新高速道路の利点の一つは、移動時間が5〜6時間に減ることだ(従来のM10ではどちらの都市へ行くにも10時間かかった)。冬の間は制限速度が時速110キロメートルだが、春には時速130キロメートルに引き上げられる。
4. M11は有料道路だ。料金は平日1820ルーブル(3100円)、土日祝日2020ルーブル(3440円)だ。特別なトランスポンダを搭載した車は割引価格が適用される(平日1331ルーブル/2279円、土日祝日1494ルーブル/2550円)。この新ルートは、モスクワからサンクトペテルブルク、またはサンクトペテルブルクからモスクワへ移動する人にとって、鉄道に代わる重要な選択肢となるだろう。車に2人以上乗っていれば高速鉄道のサプサンよりも安く済む。しかも自分の車で、自分の予定に合わせて自由で快適な旅ができることは言うまでもない。
5. もう一つの利点は、M11は渋滞が起きないだろうということだ。交通量の多い都市部を一切通らず、ジャンクションもドライバーが目的地によりスムーズに降りられるようにできている。M11は区間によって、4車線、6車線、8車線、10車線だ(1車線の幅は3.75㍍)。なお一部まだ工事中のところがある。トヴェリを迂回する長さ59キロメートルの道で、最近になってプロジェクトに追加された。
6. M11の建設は2010年に始まったが、計画は常に遅れてきた。プロジェクトに伴う森林伐採に対する市民の怒りもあり、当局が問題の対処に動く結果となった。2018年のFIFAワールドカップまでに完成させるという計画もあったが、道路沿線で発見された貴重な考古学的遺物の回収作業の影響もあり、竣工は2019年秋までずれ込んだ。
7. ウラジーミル・プーチン大統領は、M11プロジェクトは国と経済にとって重要なインフラ事業だとして、2003年の時点ですでに計画への支持を表明していた。「この高速道路は、沿線地域の発展を促進する。経済発展に弾みを付け、アクセスの良さを向上させるだろう」と彼は計画発表に際して話している。ロシア大統領は、2019年11月27日に公式に新高速道路の開業を宣言した。試験走行にも参加し、リムジン「アウルス」から高速道路の眺めを楽しんだ。
ちなみに:
新ルート開設のプロジェクトは、より大きなインフラ事業である「西ヨーロッパ中国西部国際トランジット回廊」の一部でもある。これは、中国とEUの貿易拡大を受けて2000年代半ばに始まった国際プロジェクトだ。中国からカザフスタンとロシアを経由してヨーロッパに達する新しい交通路となる、総延長8500キロメートルの道を作る案が生まれたのである。