ワールドカップ日帰り旅行3案:ヴォルゴグラード

観光・自然
トミー・オカラガン
 かつてスターリングラードとして知られたロシア南部の街ヴォルゴグラードは、2018年ワールドカップ開催都市としてこの夏ファンらを迎える。試合が終わり、ママエフ・クルガンや第二次世界大戦関連の博物館もすでに見学済みなら、これからご提案する至福の小旅行で自然を満喫しよう。

 ヴォルゴグラードでは今夏開催される2018年ワールドカップのグループステージ4試合が行われる。6月18日のチュニジア対イングランド戦、6月22日のナイジェリア対アイスランド戦、6月25日のサウジアラビア対エジプト戦、6月28日の日本対ポーランド戦だ。

 この街はスターリングラード攻防戦でよく知られているが、周辺の陽光に輝く草原、きらめく小川が人々を惹きつけ、近年この地はエコツーリズムの目的地になっている。以下、サッカーの試合の勝ち負けに関係なく、南ロシアの夏の日差しを満喫して素晴らしい思い出が作れる日帰り旅行案をいくつかご紹介する。

 

1. ヴォルガ川クルーズ(ヴォルゴグラードの繁華街から)

 ヨーロッパ最長の川で市名の由来にもなったヴォルガ川では、市街地を抜けたその瞬間から息を呑むようなロシアの絶景を目にすることができる。船が旅行客を乗せて広大な川面を下り、都会の風景が遠のくにつれ、森に覆われた洲、果てしない峡谷、人気のない川辺と出会うことになる。ヴォルガは夏が特に美しい。船の乗客はデッキに出て、遠くに広がる峡谷の向こうに沈む夕日を目に焼き付ける。一生の思い出となるはずだ。

 ヴォルガ川を下るクルーズはこの地域の美しい自然を見るのに最も適した方法だ。短時間で満足なら1時間のクルージングもあるが、観光客や現地住民の多くは、夕方の間ずっと船上の日光浴を満喫して過ごせるプランを選ぶ。より冒険感覚を味わいたければ、水上バイクやスピードボートでヴォルガの岸辺まで行くこともできる。利点は、川辺でバーベキューやキャンプができるということだ。ヴォルゴグラードの中心からも見え、手付かずの自然が残るサルピンスキー島は、この目的でよく利用される。

 ヴォルガの遊覧船はふつう街の中心に停泊しており、繁華街のアクセスも容易だ。

 

2. エリトン湖(ヴォルゴグラードから340キロメートル)

 カザフスタンとの国境沿いにあるロシア版の死海は、ヴォルゴグラードから行くにはなかなか骨が折れるが、努力する価値はある。

 エリトン湖はヨーロッパ最大の塩湖で、独特な塩の形成物と塩っぽい空気で溢れている。健康にさまざまな効能があるとされ、湖の周囲にはヘルスセンターがたくさんできている。塩はまた、この浅い湖を視覚的にロシアで最も壮大な自然の驚異の一つにしている。独特の赤紫色の水は午後の日差しの中では金色に輝き、しっかりとしたラズベリーのような香りを放つと言われる。

 特異で孤立した異世界のようなエリトン湖は、ヴォルガのステップにおける真珠のオアシスであり、ヴォルガ川周辺の肥沃な土地にいる時とは全く異なる経験が得られる。南ロシアのうだるような暑さの中、エリトン湖の夏の水深は平均でたったの10センチメートルになり、湖と近くのエリトン自然公園の周囲は、塩の峡谷が果てしなく広がる不均質な平原と、浅瀬、沼地の世界となる。この夏旅行を考えているなら、この塩湖の巡礼がぴったりかもしれない。

 エリトン湖は人里離れた自然の驚異だが、難点はやはり交通の便が良くないことで、最速のルートでも長い(風景はすばらしいが)回り道をしなければならない。ヴォルゴグラードからは車で約5時間かかるため、エリトンのヘルスセンターで一泊するのも一つの手である。エリトンに向かうバスもヴォルゴグラード駅から毎日出ており、一人400ルーブル(約700円)で利用できる。

 

3. ヴォルガ・アフトゥバ流域(ヴォルゴグラードから30キロメートル)

 ヴォルゴグラード中心から河岸の向こうへ目をやると、陽光に輝く大自然がヴォルガ川の穏やかな細い支流、アフトゥバ川の脇に広がっているのが見える。活気に満ち、草原に覆われた自然公園は、地元住民の間で最も人気のある週末の行き先で、日帰りのピクニックに理想的な場所だ。ここを訪れた人は、多様な湖、湿地、オークの林、鳥の保護区など、贅沢な選択肢に悩むことになる。

 アフトゥバ川沿いに下るにつれ、魅力的かつ奇妙なものにたくさん出会うことだろう。例えば、クラスヌイ・ブクシル村の傍にある“蓮の湖”だ。以前は目立たない湖だったが、2007年の夏、突如として数千本のピンク色の蓮の花が咲き乱れ(原因は不明)、湖を夏の午後の牧歌的な避暑地に変えてしまった。川沿いにさらに進むと、ツァレフという興味深い村(ヴォルゴグラードから75キロメートル)に行き着くかもしれない。ここでは1922年にロシア史上最大の隕石の落下(通称「火の竜」)が目撃された。現在でも夏にしばしば流星群が見られる。

 自然公園を回る最適な方法は車だ。保護区の中まで一時間以内で着くことができる。他の手段としては、ヴォルゴグラード中央バスターミナルから一日に12本出ている146番のバスがある。一人70ルーブル(約120円)で公園の中心まで行ける。