エレーナ・ベセジナさん
エレーナさんは夫と会う前、ウラル山脈の東側に位置するチェリャビンスク市に暮らし、働いていた。出会ってから、2人は生活を変えることを決め、都市の暮らしをやめて大自然の中に移り住んだ。
「情熱的な旅人の妻というのは、年に2回、2年に1回ぐらいしか夫を見ないもの。愛する人が遠くの旅の地から戻ってくるのを待つばかりで、退屈することが多く、また心配もする。この問題を、風変わりな形で解決した。家族で冒険している」と、エレーナさんは自身のブログに書いている。
エレーナ・ベセジナ撮影
夫のアクブレさんは、六角形の木造の家をわずか3週間でタイガの中に建設した。エレーナさんはとても誇りに思っている。タイガには自分自身を見つけることのできるチャンスがたくさんあるため、とてもロマンチックな場所になることもある。
エレーナ・ベセジナ撮影
この一家の冒険は、3年前にシベリアのクラスノヤルスク地方で始まった。次の拠点は、ヤクーチヤと呼ばれるサハ共和国になった。一家はツンドラでトナカイ飼育民と暮らし、ユネスコ世界遺産のレナ川石柱自然公園を旅し、夏に新年を祝い、当地有数の高い山に登った。列車がとまる場所からは、飛行機に乗り換えた。そして水と泥だらけの道の上を、数千キロ飛行した。
エレーナ・ベセジナ撮影
ヤクーチヤは伝説の地。たとえば、サルクィチャン山脈。ここで子どもを身ごもったら、その子どもはスーパーヒーローになると、地元の人は信じている。ここに来たいと思ったら、サルクィチャン山脈は世界で最も危険な場所で、予測不可能な混乱の王国だということを覚えて置いた方がいい。冬は非常に寒く、太陽が岩を暖め始める春、無数の地滑りが起こる。これは次に氷点下になるまで止まらない。また、雨が降り続く夏には、土砂崩れが発生する。
エレーナ・ベセジナ撮影
冬は長く、気温は零度よりもずっと下になる。
エレーナ・ベセジナ撮影
それでも、ヤクーチヤの生活はおとぎ話のようだ。ディズニーの「アナと雪の女王」のように、トナカイに乗って学校に行くことができる。「もちろん、私もトナカイに乗った。最初のうちは、くらから何度か落ちたり、トナカイと一緒に雪の中に落ちたりした。トナカイに乗って100メートル進んだこともある。トナカイは私が行こうとしていた方向とは80度反対の方向に進んだ。180度ではないの。この意味わかる?」とエレーナさん。
エレーナ・ベセジナ撮影
トナカイはどこに向かって走っているのだろうか。朝のしょっぱい軽食を食べるために走っている。塩は適切な代謝に大切な要素。肉食動物はエサの血から塩を得るが、トナカイの植物のエサには塩がないため、塩のかたまりをなめなくてはいけない。
エレーナ・ベセジナ
ヤクーチヤでは、魚は簡単に手に入る。エレーナさんは冬になると、毎日魚を集める。「この”ブーケ”をほぼ毎日、水をくむ場所で集めてる。太陽が高くのぼるほど、氷穴に集まる魚には心地良くなる。氷穴のまわりにテントをはって、ポータブル・ストーブと熱い紅茶を持ち込んでいる男性の気持ちが理解できる。いつかは私もあれをやりたい」とエレーナさん。
エレーナ・ベセジナ撮影
シベリアでは、普通の松ぼっくりがタイガの強い香りを含む甘いデザートに変わる。「夕食、昼食、朝食は、どんな健康食ファンにもうらやまれるもの」とエレーナさん。
エレーナ・ベセジナ撮影
子どもは自然の中で育ち、素晴らしい子ども時代を過ごしている。大親友はトナカイと犬で、すべてを自由に探索でき、遊び場はシベリア全土。
エレーナ・ベセジナ撮影
「旅の目的とは、一ヶ所にしばられず、日常の快適さに制限されないこと。自由な放浪者。そして自分の生活の放浪の達人として、ウクライナのステップ、中国の山、また海の真ん中で自活できる」とエレーナさん。
エレーナさんは、これが時に簡単ではないことを認める。「簡単ではない」とは、レストランに行ったり、新しいガジェットを買ったりする資金が十分にないことだ。2人の子どもを抱えた自然の中の旅は、ピクニックではない。「衛星インターネットと太陽電池パネルを自分たちの手と重労働で手に入れた。小さな家族の一人一人が能力を最大限に発揮した。どんな状況でも生きて、どこにでも適応して、困難な時には耐え忍び、そして自分たちですべてをコントロールできたことに喜ぶとわかっている。私たちはどんどん強くなり、自立し、さらに成長する」とエレーナさん。
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