かつては水上輸送の大動脈

GettyImages/Fotobank撮影

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ボルガ川は16世紀、ロシアの大動脈と考えられた。イワン雷帝がカザンとアストラハンを征服すると活発な水上輸送が始まった。

 経済的役割が最高潮に達したのは現在のロシア連邦統一深水系が登場した20世紀半ばだ。白海、バルト海、アゾフ海、黒海、カスピ海を結ぶ交通網が確立された。

 だが最近、ボルガ川は経済的にほとんど影響を及ぼさなくなった。ロシアの投資分析会社インベストカフェによると、ボルガ川の輸送量は平均して国の貨物輸送の2~4%にすぎない。

 近年輸送されているのは石炭、鉱石、建築資材、木材、農業生産品、肥料、自動車、農業技術品などである。

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ボルガ川

 ロシア船舶会社協会によると、河川船舶の使用平均年数は28年に達した。ソ連時代の1980年代には年間数百隻の河川船舶が建造されていたものが、現在では20隻弱にまで減少している。

 旅客船舶は1990年代初め以降ほぼ建造されていないため、こちらの輸送も減少している。昨年の国内水上旅客輸送人数は1360万人だった。

 旅客河川航路の営業は地域予算によって定められる。ボルガ川沿岸で最も古い町の一つであるヤロスラブリ市では8キロの距離の乗船料は16ルーブル(約48円)だけ。常に満員だとしても、この運賃だけでは運航会社は経営することができない。

 船舶の新しいエンジン1基だけでも450万ルーブル(約1350万円)もする。州の補助金は年間1800万ルーブル(約5400万円)にも達するため、多くの地域が対応できない。ちなみにモスクワでは短距離の乗船でも450~900ルーブル(約1350~2700円)の運賃を運航会社が徴収する。これくらいの運賃でようやくビジネスは回収可能だ。

 ロシア船舶建造センターの専門家であるエドゥアルド・メドニク教授は「先進国では河川航行が家業となっており、採算も取れている。必要なのは簡素かつ安い船舶だけで、乗組員が夫婦2人だけという場合も多い」という。

 欧州連合(EU)では国内水上輸送で平均11%の貨物が運ばれている。

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母なる大河ボルガ

 運航会社はボルガ川活用の可能性を信じている。ロシアの運送会社ドライマンタのドミトリー・プリュシチェフ最高責任者は河川船団の集中的な発展が必要だと考える。

 「輸送国としてのロシア発展国家プログラムを基調として、ボルガ沿岸地域の交易・経済関係拡大のため、旅客・貨物船舶の建造と運航が求められる」。このプログラムは地域で数十万人の雇用を生み出すことができるという。

 だが、最も大胆な国家計画でさえ、河川貨物輸送を1.5倍、すなわち輸送全体の1~2%に増やす程度の提案だ。水路の維持費用は同じ距離の自動車道や鉄道と比べ50分の1程度なのだから、これはもったいない話だ。さらに河川貨物輸送の経費は鉄道の8分の1、トラック輸送の20分の1である。