観光ルート「宝石の環」

ロシアには「黄金の環」や「白銀の環」といった観光ルートがあるが、新たにウラル地方の工業・鉱物学的ルート「宝石の環」ができた。全長630キロメートルで、スヴェルドロフスク州の150ヶ所以上の観光スポットと9ヶ所の市町村を含んでいる。

コンクリート・ジャングルから

 ウラル地方ではいまだに、光がもれる鍛冶屋の窓を見たり、天然石のお守りを買ったり、本物の金鉱に下りたりすることができる。

 エカテリンブルクから15キロメートルに位置している小さなベレゾフスキー町に来ても、ここが長年ロシア経済を支えてきた金の産地であることに気づかない。金の採掘は今でも行われており、ベレゾフスキー金鉱は、世界でもっとも長く活動している場所だ。ここでは時が止まっているかのよう。黒いコプラ、低い家々・・・地盤の関係で高い建物を立てられない場所がある。深さ10メートルの鉱坑におりると、携帯の電波が届かなくなる。

 

石帯の不思議

 ウラルとはテュルク語で帯を意味する。ウラル地方の山々は2000キロメートル以上のびている。昔は「リフェアン山脈」と呼ばれ、その後「石帯」に変わり、現在は「ロシアの貯蔵庫」になっている。ピョートル1世の時代、ここでロシア初の工場や鉱坑ができた。18世紀からは、世界のさまざまな国の科学・地質学愛好家が、ウラル山脈に行くことを課題としていた。ここには地球上に存在する4000種の鉱物のうち、1000種以上があるためだ。鉄、銅、菱苦土鉱、ニッケル鉱、金、プラチナなどの数多くの鉱山が、ここを有名にした。

 今年初めにウラル中央部のマリインスキー鉱山でエメラルドと緑柱石が発見されたことは、宝飾品業界のセンセーションになった。それまで知られていなかった、特徴的にダイヤモンドに近いマリインスカイトという新たな宝石が発見された。明緑色で、光屈折率が高く、質ではエメラルドと競うことができる。

 「宝石の環」は、ウラルの貴金属、鉱物、宝石の貯蔵庫の歴史を物語る、独特な記念物が保存された拠点をつなげている。ギネスブックに記録されているニジニ・タギルの戦車博物館、めずらしいバイクのコレクション、有名なネヴィヤンスクの斜塔(ウラル版ピサの斜塔)、チェルノフスキー大理石採石場、孔雀石のコレクションや石細工、ザクロ石の鉱山、金やプラチナの鉱坑などがここにある。

 

外国人旅行客がロシアの奥地に

 ウラル地方の鉱物学や工業観光に興味を持つ外国人は増えており、特に中国とチェコからの観光客が増加している。ドイツの旅行業者も、スヴェルドロフスク州の宣伝ツアーに申し込んだ。

 通訳協会の創設者であるエレーナ・キスロワ氏はこう話す。「外国人旅行者について言うと、ウラル地方に来るのは商用でエカテリンブルクを訪れたビジネスマンがほとんど。出張中に合間を見て、鉱物学・工業観光を選んだりする。旅行業者が外国人旅行者を連れてくる場合は、主に歴史的に有名なシベリア鉄道のコースをたどる。夏季は通常、ドイツ人、デンマーク人、メキシコ人、スペイン人などの乗ったバスを受け入れている。ロシア文化やロシア文学の愛好者か、ロシアに何らかの関心を持っている人が多い。例えばあるドイツの女性客は、自分の父が戦後抑留されていた時に働いていたアスベスト市に行きたいと言っていた。ロシアの奥地はヨーロッパ人にとって興味深い場所…」

 

最後のロマンティストたち

 ロシアで鉱物学観光はまだ新しく、発展途上。一部施設周辺でのインフラの不十分さは、ロマンスすら感じさせる。採金の魂を感じ、「本物の歴史に触れる」ことができる。

 ベレゾフスキーには、1945年に地元の工場が建設した、ヨーロッパ初のプレキャスト建築物がある。80歳代の元鉱山労働者たちの多くは50歳ぐらいに見える。若さの秘訣は地中の探索だという。旅行者は希望に応じて、深さ512メートルの鉱坑に案内してもらえる。ツアーの料金は1万5000ルーブル(約4万5000円)ほど。

 ベレゾフスキーでは今年9月、砂金発見200周年を記念して、民俗フェスティバルが行われる。ベレゾフスキーの住人で採金者であるヴァレリー・ロバノフさんは数年前、砂金を最初に発見した有名な坑夫頭であるレフ・ブルスニツィンの来孫(5代目の子孫)に向って、ブルスニツィンの死体を発掘し、頭蓋骨で半身像を復元し、また肖像画をつくるべきだと説得した。このどちらも地元の金博物館で見ることができる。

 地元のガイドは、夏にプィシュマ川に行くことをすすめる。川にはいまだに金があり、3000杯ほどの水をすくって選別すれば、10~15グラムの金を得ることができるという。これは決して少なくない。1グラムの金から3キロメートルまで金線をのばすことが可能だからだ。

 

「宝石の環」コースの主な拠点

エカテリンブルク

 ウラル地方中央部の中心都市。博物館は50館以上あり、9500年以上前の中石器時代につくられた世界最古の木像、大シギル像という有名な展示品を見ることができる。

ネヴィヤンスク

 最大の古儀式派の拠点がある。ルーシのイコン画法の一派発祥の場所。高さ57メートル、南西側に2.2メートル傾いている有名なネヴィヤンスクの斜塔には、地下室、聴覚室、試金実験所に続く入口などがある。

ニジニ・タギル

 世界でもっとも古い鉱山学・冶金学センター。チェレパノフ父子がロシアで初めて蒸気機関車を建造した場所。独ソ戦争の際、「戦車の街」になったことで知られる。ギネスブックに記録されている戦車博物館がここにある。

ムルジンカ

 ウラルの宝石の中心都市。ブルー・トパーズ、水晶、緑柱石で有名。ウラル地方各地から鉱物サンプルが集められている、アレクサンドル・フェルスマン鉱物学博物館がある。フェルスマンは地化学の創始者の一人。

アラパエフスク

 ユニークな世界の楽器博物館がある。博物館は、作曲家ピョートル・チャイコフスキーが子ども時代を過ごした家でもある。

イルビト

 民族工芸や手工芸の「イルビト見本市」は、1638年から行われている。バイク博物館のコレクションは、世界に類のない珍品揃い。ロシア唯一の特別な版画とイラストの美術館、造形美術館がある。デューラー、ヴァン・ダイク、レンブラント、ゴヤ、ルーベンスなどの有名な画家の本物の作品、ヨーロッパの印刷グラフィックのコレクション、フランスのカラー点線コレクション、モノグラフィックのコレクションなど1万6000点が展示されている。

アルチョモフスキー

 アルチョモフスキー・シャンパン工場では、難しいクラシックなボトリング法でシャンパンが製造され、深さ70メートルの鉱坑に保存されている。大きな鉱坑・貯蔵庫には観光案内があり、トラックが出入りでき、信号まである。

レシュ

 レシュ鉱物学・自然保護区では、歩道沿いにトルマリン、オパール、メノウ、石英、アメジスト、トパーズ、長石の欠片を見つけることが可能。

ベレゾフスキー

 ロシアの金の故郷。活動中の金鉱あり。