1979年、ムッサ・アチタラ山の斜面にホテル 「タレルカ (皿)」が建てられた。その支柱は特別な設計がなされており、雪崩が起きた際には、この 「皿」ごと滑り落ちてけが人が出ない仕組みだ。=GeoPhoto撮影
多様な共和国でリゾート開発進む
2013年、ロシアの南部連邦管区の観光部門の投資額は61億ドルだった。大部分は冬季五輪を招致したソチがあるクラスノダール地方で費やされるが、北カフカスの各共和国の観光開発にも力を入れている。
情勢不安乗り越え
アドイゲヤ、ダゲスタン、カラチャイ・チェルケシア、カバルジノ・バルカル、イングーシ、北オセチア、チェチェン。
これらの北カフカスの共和国はすべて、戦争のつめあとを残す歴史や不安定な情勢にもかかわらず、ロシア全土から旅行愛好家が集まる観光の名所であり、エコツーリズムの中心となった。
エコ・スポーツ・ツーリズムの愛好者たちをひきつけているのはもちろん山脈の連峰だ。
北カフカス西部はかねてから山岳スポーツおよびトレッキング好きの人々に知られてきた。これに対し、東部の共和国におけるアルペンスキーリゾートの観光文化はまだ産声を上げたばかりだ。
今後期待される「成長スポット」はイングーシ、チェチェン、ダゲスタン、北オセチアだ。
イングーシでは昨年3月、保養地アルムヒに起点を置く1.2キロの最初のコースが完成した。近い将来、北オセチアではオールシーズンの保養地マミソンの建設が始まる。
チェチェンでも建設
チェチェンでもオールシーズンのアルペンスキーリゾートを建設する協定に調印した。
同共和国のグロズヌイの空港から車でわずか1時間という手軽なアクセスが魅力的な町ベドゥチに建設が計画されている。
また、村落で代々受け継がれている武器製造職人や貴金属宝石細工職人たちの豊かな伝統工芸や鉱泉で知られるダゲスタン共和国の山岳地帯には、温泉およびエスニックツーリズムの中核をなすマトラスというリゾートがオープンする。
ドンバイで大滑降
ドンバイは雄大な滑降が楽しめるカフカスで最も人気のあるスキーリゾートの一つ。どんなレベルにも合う総延長約25㌔のさまざまなコースが用意されている。
ムサ・アチタル山の広い山腹にあり、標高は1630~3168メートル。
ここには、フリーライド用のコースもあるが、その利用は十分な積雪がある場合に限られる。
険しい谷に一面の処女雪。森の滑走が楽しめるのは1月から3月。スキーシーズンは12月から4月までだ。
ドンバイはバックカントリー好きにとっての真の楽園でもある。4キロほどのコースは、セミョーノフ・バシの山頂(3602メートル)から始まり、白銀の世界の斜面を駆けぬけていく。
スキー・リゾート「ドンバイ」でスポーツ用品が売られている=タス通信撮影
フリーライドの場所は雪崩の危険が高い。概してカフカス山脈の単独行は危険だ。道に迷ったり滑落したり雪崩に巻き込まれたりしないように必ずガイドがつく。
「私が好きなコースはヘリスキー用のコース。これはアリクベクスキー氷河からセミョーノフ・バシ山を下る斜面です。救護ステーションで、コースを一緒に滑ってくれるプロのインストラクターを見つけられます。コースの状態や降雪情報もここで確認できます」。若いフリーライダーのキリル・ヤルリコフさんはこう言う。
数年前には、カフカス山脈には珍しく大雪が頻繁に降り、ロープウエーが積もった雪に引っかかって動けなくなってしまった。
ドンバイでは昼も夜も娯楽には事欠かない。クアドロサイクル、スノーモービル、セグウェイ、乗馬での山の散策といろいろある。
天気が良ければパラグライダーも楽しめる。
タヌキ、キツネにも出会う
「ここドンバイは自然保護区。斜面を滑っていると、ジャッカルやキツネに出くわすことも珍しくありません。森にはオオヤマネコ、オオカミ、ムナジロテン、タヌキさえいます。ここの有名な料理フイチンの匂いは山中に漂っています。ジャガイモと肉またはチーズを入れたパンケーキみたいなものです」
スポーツジャーナリストでスノーボード選手であるカテリーナ・チェーホワさんはこう語る。
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