写真提供:Geo Photo
18世紀末、アジア諸国との貿易と遊牧民からの防衛を目的として、オレンブルクが築かれた。ここでコサックは国境を守りながら交易に携わり、オレンブルクの輸送隊は冬になると、塩と冷凍魚を積んで、モスクワとサンクトペテルブルクに通っていた。
オレンブルク市
オレンブルク州はウラル地方南部に位置し、緯度はドイツやオランダと同じ、また経度はイラン、カザフスタン、ウズベキスタンと重なる。日本から行く場合は、モスクワで飛行機を乗り換える必要がある。
オレンブルク市の旧市街は、徒歩で観光できる。18~19世紀のロシア革命前の姿はわずかしか残っていない。石が敷かれた4ヶ所の歩行者天国は、オレンブルクの歴史すべてを物語る。赤レンガの大砲局、真っ白な古典様式のルィチコフ邸とチマショフ邸、広い庭園のある2階建ての黄色い軍事病院は、街が築かれた18世紀当時の姿を現代に残す。
旧市街のほとんどを占めているのは19世紀の建物。現在歴史博物館になっている元営倉のレンガ造りの要塞、浅浮き彫りが施された後期古典様式の貴族会館、バシコルトスタンのゲルの形をした八角形のモスク「カラヴァン・サライ」などだ。
オレンブルクは多民族都市。その数119民族でヨーロッパをほぼ上回っている。正教会30ヶ所以上、再建された19世紀のカトリック教会、モスク8ヶ 所、ロシア・ラビ総局の地元代表がいるシナゴーグ、ルーテル教会、地方ではめずらしいセブンスデー・アドベンチスト教会など、世界のさまざまな宗教もある。
典型的な大陸性気候で、年間の温度は-40℃から+40℃まで変化する。もっとも温かい月は7月、もっとも寒い月は1月。旅行に適しているのは、5月末から6月初めの、ステップが開花する時と考えられている。
市はピョートル1世が承認した都市計画にもとづいてつくられており、プロの都市計画専門家が初めて設計したロシアの街の一つである。
独ソ戦争時、オレンブルクは多くの産業施設や企業の移転先となり、現在でもYak型戦闘機や弾道ミサイルの生産が行われている。多くの工場は戦後、掃除機、保育器、食肉加工機械などの生産に切り替えたが、国中に製品が出回っていたわりには、歌手リュドミラ・ズィキナの歌「オレンブルグのにこ毛ショール」のイメージが強い。ちなみにオレンブルグ・ショールとは、この地方の山羊のにこ毛からつくられた、柔らかくてとても温かいショールだ。
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オレンブルク市郊外
オレンブルク市郊外にもさまざまな特徴のある市町村がある。カザフスタンの国境に向って70キロメートルほど南下すると、ソリ・イレツク町にたどりつく。ここは世界最大の岩塩の生産地で、塩湖と泥湖がよく知られている。塩湖は氷点下になっても凍結せず、また湖面から2~3メートルの深さから湖底までは、1年中を通して負温度が保たれている。塩分濃度は死海に近く、生物や植物は生息していない。泥湖は塩湖とは異なり、1年中水温が高い。2メートル以上の深さまでもぐると、やけどをすることがある。ソリ・イレツク町は泥治療の保養地として有名で、どの季節でもロシアや隣国からの観光客が訪れている。
オレンブルク市の東250キロメートルにあるのは、ヨーロッパとアジアの境い目が通っているオルスク市。オルスク市の歴史地域はアジア側、新開発地域は ヨーロッパ側に位置している。市内のポルコヴニク山ではロシア全土で有名な多色碧玉(へきぎょく)が採掘されている。青以外のほぼあらゆる色調が存在するのが特徴。サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館では、オルスク碧玉からつくられた製品を見ることができる。モスクワ・クレムリンの皇帝の寝室の床板として、またモスクワの地下鉄マヤコフスキー駅の装飾として使われている。
オレンブルク市の東100キロメートルに位置するサラクタシュ地域のサラクタシュ村とジョルトエ村では、にこ毛ショールが生産されている。職人工房や工場で購入することが可能だ。
オレンブルク市のおみやげ
この地方の山羊のにこ毛からつくられた、ショール、ストール、セーターなど。本物の地元産ショールは非常に薄く、指輪の中をすり抜ける。スタイルを華やかにするファッション・アイテムだ。起毛の長い厳寒用もある。
オルスク市から運ばれる多色碧玉からつくられたアイテムやアクセサリーも、おみやげに適している。
ベルギー女王にショール
第二次世界大戦後初、18年ぶりとなる万博が1958年春、ブリュッセルで開催された。この時ソ連パビリオンは金星を受賞。オレンブルク州はショールを出品して大銀メダルを受賞した。万博終了後、ショールはベルギーの女王に贈られた。
オレンブルク州立造形美術館の関係者は、伝説的なこの万博のシリーズ品を探しだし、その一部を常設展の展示品にしている。
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