ガルガイ塔=写真提供:lunatik38.livejournal.com
イングーシ共和国では、とくに1990年代に、経済的、政治的に不安定な状態が長く続いたため、元々の美しさをそっくりそのまま残しているという皮肉な状況だ。
ここにはファーストフード・チェー ン、商業・娯楽施設、現代的な高速道路、その他の現代文明の影響はない。その代わりにロシアでもっとも古いキリスト教の教会の一つなど、他にはない物があ る。そして北カフカースの複雑な歴史を静かに見つめてきた、ガルガイ人の古代の塔も――。
首都マガス
マガスにはかつて、アラン王国の首都があった。アラン王国とは、北カフカースの大部分を占めていた、中世の王国。マガスがイングーシ共和国の首都になっ たのは、わずか2000年のこと。
他の新しい街がそうであるように、街は今その外観をつくっている最中だ。広々とした大通りが伸びる発展途上の街。
ここには”寂れた地区”や”カフカース色”はない。ヨーロッパの快適レベルに慣れている人のために、マガスには立派なホテルが建設された。「アルティス・プラザ(Artis Plaza)」はその一つ。イングーシ共和国に観光客が訪れるようになったのは、つい最近であるため、今のところホテルは不足状態。1年前にはナズラン市 の小さなホテル「アッサ」と、山岳地域のアルムヒ村の保養所に宿泊できる程度だった。今は新しいホテルが次々にオープンしているが・・・。
イスラム教
イングーシ共和国ではイスラム教が信仰されている。住人の多くがイスラム教のしきたりを守っているため、地元の店で酒類を買うことはできない。 それではつまらないと思う人は、マガスから車で1時間のナズランに行ったり、イスラム教のしきたりがそれほど厳しくない、隣の北オセチア共和国の首都ウラジカフカスに行ったりすれば、ビールやワイン、度数の高いアルコールを買うことができる。
酒の肴には、地元料理の小団子とにんにくのブイヨンの牛煮込、羊肉の料理、新鮮なハーブ、新鮮な野菜、そしてカッテージチーズをのせたパンケーキ「チャピリガシュ」などがあるが、住人はこれをミネラルウォーター「ア チャルキ」の肴としている。
ジェイラフ地区の源泉から得られるアチャルキは、イングーシ共和国の誇りだ。専門家は、この水の成分が、フランスのヴィシーのグランド・グリユに似ていると話す。
ガルガイ人の塔
イングーシ共和国の主な名所は、歴史的建築物の塔だ。現在約2000ヶ所ほどある。もっとも有名なのはヴォヴヌシュキ、エギカル、レイミ、オズディク、ハムヒ。雄大なコーカサス山脈に点在している塔は絶景だ。
もっとも有名な戦いの城、ヴォヴヌシュキ塔群は、「ロシア七不思議」コンテストの最終選考地だ。ガルガイ人の塔の静かな美しさに、思わず心を奪われてしまう。
数百年もの長きに渡り、突然の敵の襲撃から地元住人を守ってきた。比較的最近までここには人が住んでいたが、1944年のスターリンの追放によって、この周辺には現在、ほとんど人がいない。
ソ連内務人民委員部は、ガルガイ人の古代の建築物を破壊しようとしたが、山岳地域に住んでいたイングーシ人が必死に抵抗して、これを阻止した。多くの無名の英雄によって、この世界に比類なき、素晴らしい建築物が、現在まで残っているのである。
ヴォヴヌシュキ塔群の近くには、ロシアでもっとも古いキリスト教の教会の一つ、8~9世紀のトハバ・エルドィ教会がある。
古代の遺跡の見物だけでなく、ジェイラフ地区アルムヒ村には今冬、初めてのスキー・リゾートがオープンする。アルムヒはクールシュヴェルではないし、イングーシ共和国はフランスではないが、ようやく立ち直ろうとしている。
道路
新道(イングーシ)は土砂道、旧道(オセチア)はアスファルト道。どちらも質の良い道路で、国境警備隊が整理している。ウラジカフカスからアスファルト道を走ると、イングーシ共和国の山岳地域の西部(ジェイラフ村、アルムヒ村など)やニジニ・ヒウリに素早く到着できる。
主な名所のエギカル村、タルギム村、ヴォヴヌシュキ塔群、トハバ・エルドィ教会へは、土砂道が導く。この道はイングーシ共和国の山岳地域と、ナズランやマガスの平野を結んでいるため、 ジェイラフ地区東部の名所に行くなら、イングーシ側から走った方が早い。
ヴォヴヌシュキ塔群への道は、春になると川の氾濫で通行止めになることがある。そうなると最後の数キロメートルは徒歩で、さらに”ゴール近く”は川沿いの狭い石のヘリを歩かなくてはいけなくなる。十分に注意が必要だ。
重要な点:入国審査
チェチェン共和国とグルジアとの国境地帯がイングーシ共和国の山岳地域を通過しているため、外国人は特別な許可証を携行しなければならない。これはイン グーシ共和国の観光委員会に、事前に申請する必要がある。そのためイングーシ共和国への旅行は、事前に計画しておかなければならない。しかしながら、外国 人向けの山岳地域訪問許可証は、近々廃止される可能性がある。
日本外務省はイングーシ共和国への「渡航の延期」を勧告
日本外務省は、近年テロ事件が頻発しているとして、イングーシ共和国への「渡航の延期」を勧告し、滞在者に対しては、「退避の手段の検討」を勧めている。
日本外務省の海外安全ホームページを必ず参照すること。
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