サンクトペテルブルク市の 「自転車の夜」 =マーシャ・ミトロファノワ撮影
午前7時 愛車用意
モスクワっ子の私(ダリア=23)の愛車はクルーザータイプの都市型デザイン自転車で、重さは23キロもある。アパートには自転車置き場がなく、荷物用エレベーターもないので、毎日階段で自宅のある4階まで上り下りし、ベランダに保管せざるを得ない。
モスクワに新設された自転車道では平均時速が17キロだが、ラッシュアワー時には時速13キロ以下となる。
7時20分 防塵マスク
私は防塵マスク付きヘルメットを着用する。道路の排気ガスと粉塵(ふんじん)から守ってくれる。
この時刻にはもうかなりの交通量なので、仕事に遅れないためには2時間前には家を出なければならない。
アルタイ(12日間)
アルタイ山脈は急峻(きゅうしゅん)な斜面、うっそうたるタイガ、高地から流れ下る急流で名高い。自転車旅行は混合コースになるのが普通で、自転車のほか、馬に乗ったり、川下りをしたり、車で旅したりする。
コラ半島( 7 日間 )
北極圏での自転車旅行はそれほど難しくなく、ヒビナ大山塊のゆるやかな斜面を1日50キロほど進んでいく。コラ半島はほぼ全域が北極圏に属しているので6月~8月は日が沈まない。
カレリア(4日間)
ラドガ湖周辺と カレリア地峡を回るコースがあり、ラドガ湖の孤島に浮かぶバラアム修道院を訪れることができる。自転車ツアーと船旅が組み合わされるのが常だ。
ウラル(15日間)
自転車ツアーは、南ウラルからバシトコルスタン共和国にかけてだ。カタマランでの1日の川下りが組み合わされていることが多い。
バイカル(7日間)
自転車ツアーをするなら、一番面白いかもしれない。高い岸辺から壮大な湖の景観が広がる。
黄金の環(11日間)
モスクワ周辺の古都をめぐる観光の定番だ。自転車だと、ウラジーミル、スーズダリ、ヤロスラブリなどを約600キロ走破することになる。
歩道走行は禁止
歩道の走行は禁止されているし、車道でも渋滞時には車同士がぴったりくっついているため、自転車でも通り抜けられない。
スーパー・ジョブ社のアンケートによれば、44%のモスクワっ子は自転車専用道ができれば、自転車を主な交通手段に使う用意があると回答している。
問題は危険な市内交通だけではない。サイクリストのセーニャさんは言う。「駐車の仕方も問題で、車道にも路肩にもびっしり止めて自転車でも徒歩でも迂回(うかい)できないんです」
2012~2016年のモスクワの都市交通発展計画では延べ150キロの自転車道が設置される予定だ。サンクトペテルブルクでも同様の計画がある。
危険をすり抜け
私はモスクワで一番長いベルナツキー大通り沿いの自転車道を走っている。この自転車道は、歩道に線が引かれているだけだ。ショッピングセンターのまん前を走る所もあり、買い物袋をぶら下げた人たちが歩いている。
「もし向こう15~20年の間に、自転車が車から3~5%の空間を奪い取れれば、それだけでも成功です」と専門家は言う。
モスクワ市政府は、自転車をレンタルできる場所を増やすことで、サイクリスト増につなげる計画だ。
8時 自転車担いで
私の自転車は、雪解け水に水没した道路を縦横に縫って進んでいく。着替え用の服はリュックに入っている。職場で着替えるのだ。目抜き通りのトベルスカヤ通りを渡るには地下道を通らねばならない。自転車を担いで。
8時10分 やっと到着
私は職場に近い屋外駐車場に自転車を止める。ここに駐輪する許可を得ている。モスクワでは自転車を丸ごと盗むケースはそんなに多くないが、部品は何でも外してもっていかれることが少なくない。
それでも、私は自転車通勤をやめるつもりはない。これは私のライフスタイルだから。私がニコニコしながら街を走っていると、みんなも笑顔で応えてくれる。アパートで自転車を担いで上り下りする時も大抵誰かが助けてくれる。
街全体の問題
「私たちは自転車インフラ整備を訴えています。しかし、道路だけではなく、街全体のシステムの問題でもあります」と独立社会問題研究センターのパチェンコフ所長は語る。
モスクワの若者の2人に1人は、自分の自転車を持っている。街の住民意識が変わり、やがて街そのものが変わると信じたい。
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