近年、ほとんどのロシア人は、どの国が彼らの祖国に最も敵対的であるかについては、意見が一致している。世論調査機関「レバダセンター」の世論調査では、2013年~2017年に、この質問への最も一般的な回答が「アメリカ」だった。今年は、ロシア人の69%が、米国が好戦的に行動しており、ロシアの敵だと考えている。
しかし、「お互いさま」のようだ。フォックス・ニュースがアメリカ人に同じ質問をしたところ、64%がロシアを敵だと回答。米国人がより敵対的だったのは、北朝鮮、イラン、シリアのみ。
1990年~1991年には、アンケートに答えた人の74%が米国を、ロシアがまず第一に協力すべき国だとし、51%が友好国とみなした。つまりロシア人は、米国を信頼しており、その道をたどることで、ロシアも成功し繁栄すると信じていたわけだ。
だが、蜜月は長続きせず、1990年代末には、多くのロシア人が苦い失望を味わった。レバダ・センターの社会学者、デニス・ヴォルコフ氏が書いているように、新生ロシアは、ソ連崩壊後に生まれたばかりであり、西側諸国の政治的および経済的基準に適合していなかった。しかも、西側のキーパーソンである米国政治家たちは、ロシアの統合にあまり熱心でなかった。
ロシアのエリートたちは、米国が(露米間の貿易関係を制限していた)「ジャクソン=バニク修正条項」を廃止し、ロシアのWTO加盟を助けることを望んでいたが、これは、1990年代には実現しなかった。そして、米国がもたもたしている間に、ロシアの経済状況は悪化していった。
「ロシア人の希望は、速やかに失望に変わった」とヴォルコフ氏は記事articleに記している。「ほとんどの人は、ロシアの地位が、超大国から、『弟分』に成り下がったこと、常に先輩たちに学び、彼らに追いつかねばならない『後輩』に変わったことが分かっていなかった。それはトラウマ、ひいては反米主義を引き起こした」
1999年には、ロシアが支持しなかった、一連のアメリカの「逸脱行為」が起きた。すなわち、ユーゴスラビア、コソボ、イラクの爆撃があり、その後、状況はさらに悪化した。
一方で米国も、ロシアの「第二次チェチェン紛争」(1999~2000)を批判したうえ、NATOの東方拡大を支持し、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)から脱退した。こうして、現代ロシアの誕生後初めて、アンケート調査によると、米国はロシアに脅威となる国の筆頭となった(35%が脅威と回答)。プーチン大統領がブッシュ米大統領の「テロ対策」を支持した、2000年代初めの短期間をのぞけば、関係は悪化し続けた。米国は2003年にイラクを、2011年にはリビアを攻撃。一方のロシアも、2008年にジョージア(グルジア)と衝突し、クリミアを編入し、2014年にウクライナ東部で反政府勢力を支援した。これら一連の事件で、両国はお互いに、「国際法違反」と「帝国主義的利益の追求」を非難し合った。
ヴォルコフ氏は、ロシアの国営メディアにもある程度、反米主義を広めた責任があると考えている。
一方、「アメリカ・カナダ研究所」のウラジーミル・ワシーリエフ主任研究員は、アメリカ側と、そのロシアに対する態度についても、同じことが言えるとする。上述のフォックス・ニュースの世論調査に関して、ワシーリエフ氏はコメントし、「ソ連崩壊後、アメリカの支配層は、ロシアへの否定的な態度を変えることはほとんどなかった」と述べた。
だが、露米両国の政治的関係がいかに難しいとしても、それは、両国民の互いに対する態度には影響していない、とキスリャク大使は信じている。「政治的な緊張は依然としてあるが、にもかかわらず、ロシア人は、アメリカ国民には否定的な感情をもっていない」。大使はコメルサント紙にこう語った。
こういう見方は、ロシア人の間でかなり広くみられる。例えば、サイト「The Question」に、「なぜこんなに多くのロシア人がアメリカを嫌うのか」という質問があったが、これに編集者・翻訳者セルゲイ・コジン氏はこう推測して答えている。
「敵というイメージは曖昧で、顔が見えない。現実の個々のアメリカ人なら話は別だ。ロシア人はどんなアメリカ人でも好きになって、親切にするだろう」
*この記事は、ロシアに関する人気の検索ワードを集めてそれぞれの問題に答える、「なぜロシアは」シリーズの一つ。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。