女性がパイロットになるのは簡単か

ボーイング747-400、ヴヌーコヴォ国際空港

ボーイング747-400、ヴヌーコヴォ国際空港

=マリナ・リツツェヴァ/タス通信
 女性パイロットはロシアでは少数ながらも存在する。パイロットになるのは難しいのだろうか、もう「男の仕事」ではないのだろうか、フェミニズムとは関係あるのだろうか。

 コックピットの中で立つのは不慣れだから怖い。特に着陸時は。これがシミュレーションだとわかっていても。

 「どこに着陸するつもり?どこかの森の中にいるのに」

 「これはシェレメチエヴォ(モスクワ)」

 「日の入りか日の出にして。じゃなければ夜。夜のドバイにしよう」

   これは旅客機のコックピットを99%再現したシミュレーターで、カプセルの中に収まっている。例外的なのは、パイロット自身が飛行条件や窓の外の風景を設定できること。すべてがとてもリアルだ。着陸しようとすると、コックピットが前方に傾き、滑走路が勢いよく近づいてくる。操縦席の後ろにいる傍観者からは、恐怖ゆえの笑いが起こる。

 操縦桿をにぎっているのはエカテリーナ・テレプンさん。航空会社「アエロフロート」の若手女性パイロット。現在25歳。旅客機エアバスA320系の副操縦士である。重心、速度、座標と、無数のボタンやレバーを素早く操作する。テレプンさんは内気な感じのきゃしゃな若い女性で、制服を着ていると航空学生に見える。ロシアの大ヒット映画「フライト・クルー 大地と戦え(Ekipazh)」(日本公開2017年1月31日)に登場する女性副操縦士にも似ている。映画の中では「男の」仕事を選んだ女性副操縦士が、差別に耐える場面が何度もでてくる。

 「そうそう。『これって差別じゃない!』って思った。だけど映画の中の話であって、実際にはまったく違うから...」

 テレプンさんは、航空機の危険なシーンのある人気映画をあまり見なくなった。その代わりに、元エリート特殊機関員が人々を救うような映画を見る。

 「だけどアカデミー時代は『メーデー!航空機事故の真実と真相』をよく見てた。映画で学んだ。他の人のミスを見るのは興味深い」

 

女性を一緒にしない

 テレプンさんの飛行歴は2年。月に平均20便操縦している。すべてのパイロットがシミュレーターで半年に一度練習する。旅客機の操縦歴が長くても例外にはならない。緊急時の操縦を含む、「使わない」スキルを失わないために必要なのだ。

 

「キエフ(ウクライナの首都)に暮らしていて、高校を卒業してすぐに航空アカデミーに入学した。学年で女子は私一人だった。ウクライナでもロシアでも、5~6人の女子学生が同時に学んでるって聞いたことがない。理由はただなりたい人がいないからだと思う。そうでなければ、女性がパイロットになれることを知らないか。私はよく、『ロシアでなれるの?』なんて聞かれる。なんの障害もないし、差別されたこともない。必要なのは健康だけ」

  360問の心理検査、医療委員会に、てんかん検査。「暗い部屋の椅子に座らされて、電球が強く点滅するのを見るの」とテレプンさん。

  シミュレーターに座っているとき、内気さはどこかへ消える。テレプンさんはアエロフロート社に女性パイロットが何人いるのかを数えて、20人強いることがわかった(アエロフロート社にはパイロットが2353人いる)。うち5人は機長だが、テレプンさんは誰とも知り合いではない。飛行前のミーティングですれ違っている程度だ。

 「乗員の中に女性パイロット2人が配置されることはない。調和を考えてそうしているみたいだけど。正確には説明できないけど、配置されない。ソ連では配置されてた。全員が女性という写真を見た」

 ロシア人の多くにとって、女性パイロットはまだなじみのない存在だ。女性戦車兵のように。とても珍しい。客室乗務員によれば、テレプンさんの機内アナウンスが流れると、乗客は静まるという。でも今のところ降りた乗客はいないと、テレプンさんは笑う。

 

男性より頭一つ抜きんでていないと

 「ロシアでは女性パイロットに対する考えが肯定的というより否定的。社会はステレオタイプで考える。どれほどの困惑、批判、性差別、差別、批判的なコメントを受けてきたか。『しかるべき性別』ではないという理由で仕事に呼ぶのを嫌がる。『女と飛ぶなんて』と不満を言う人もいる。私はフェミニスト。この業界で働いたらそうなる」と、ウラル地方のエカテリンブルク市のタチアナ・ビチュギナさん(22)はロシアNOWに話す。

タチアナ・ビチュギナさん=アーカイブ写真タチアナ・ビチュギナさん=アーカイブ写真

 ビチュギナさんは仕事でテレプンさんよりも厳しいいばらの道を進むことになったが、テレプンさんと同様、家族にパイロットがおり、オフィスに座って「書類整理」をすることを望まず、また航空学校の学年で唯一の女性だった。ビチュギナさんは軍用ヘリコプター「Mi-8」の旅客版、すなわち革張りの座席のある優雅なVIP専用機を半年操縦する機会に恵まれたが、出張続き、自由な時間もプライベートもない息のつまるような乗員宿舎での生活で、困難だったと打ち明ける。現在はMi-8の別の改変版に乗りながら、石油パイプラインを上空50~100メートルからパトロールし、事故、油流出、その他の問題がないかを確認している。Mi-8の操縦の仕方を学ぶという条件で採用された。

 「ヘリコプターでの仕事は『美しいライナー』での仕事よりも難しい。ヘリコプターだと騒音と振動が大きいし、常に灯油のにおいがするし、大変で『汚い』仕事なのに給与は低いし。時々、においが自分にしみついていて、消えないと感じる」

 ビチュギナさんは、この職業で成功するのは男性の百倍難しく、自分が劣っていないことを常に証明して平均的な男性パイロットよりも頭一つ抜きんでている必要があると考える。男性であればミスをしても「誰でもそうだよ」と流してもらえるが、女性だと「女性が操縦桿を握るのは猿が手榴弾を持つようなものだ」と言われるためだ。

 「でも今は女性がパイロットを目指すようになってきている。海外の女性パイロットを見て、『彼女がパイロットになって飛んでるのだから、私にできないはずはない。私は決して劣ってない』と考える。ある時、チュメニ空港で客室乗務員が私に近づいてきて、一緒に写真を撮ってと頼まれた。皆に写真を見せて女性も飛行できると話すからって」

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