日本へ愛をこめて

日本人男性と結婚したモスクワっ子が、嫁ぎ先の日本の生活や、文化、習慣のニュアンスについて語った。

 

 日本人女性は結婚するとすぐに、無条件で嫁ぎ先の家族の一員となり、一生そのままでいる。外国人嫁の場合、出だしから根本的に違う。

 「ここに立っちゃダメ、ここに入っちゃダメ、こう言わないと、あー言わないと」。日本に来たばかりの時、夫が私にこう細かく指示していたことを覚えている。私が「なぜ?」と聞くと、夫からは「そういう決まりだから」という答えがいつも返ってきていた。家、飲食店、お寺、診療所、幼稚園と、さまざまな場所で靴を脱ぐことが決まりで、エレベーターに乗る時に挨拶をし、降りる時に、では、とさようならを言うことが決まり。皆が座っている時は座り、皆が黙っている時は黙るのが決まり。夫が出勤する時、日本人妻は夫に「行って帰ってきてね(行ってらっしゃい)」と言い、夫は家で自分が待たれていることを知っている。職場では退勤時、どんな立場の人でも、相手が評価されていると感じることのできるように、「おつかれさまでした」と言う。

 

両親との初対面 

 私は当初、夫の家族に会うことをちゅうちょしていた。自分があれこれ間違うのではないか、地元の習慣を知らないことで、尊敬する夫の両親が激怒するのではないか、と不安だったからだ。侍の子孫は侮辱を許さないと、本で読んだことがある。動画で挨拶した1年後、夫の両親と会った。洋食レストランには白いテーブルクロスのかかった円卓があり、丁寧なスタッフがいた。すべてがきちっとしていた。厳格なお母様は、すでに正式な妻となっている私のことを入念に調べ、私の家族、仕事、趣味について質問をしてきた。私は夫とこの面会について打ち合わせをしていたため、ストレスは感じなかった。

 日本の伝統に従い、年下の新しい親族である私は、食事の時にお茶を注ぎ、オシボリを置き、舅と姑の世話をした。日本の家族では、食事の際、家長にすべての注意が払われる。最年長の男性の茶碗には、最初にお茶を注がなければならない。女性は辛抱強く自分の順番を待つ。順番は男性の後。家庭内でもこの順番を守る。

 私がオレンブルク柔毛の製品、グジェリ陶器を、お土産として新しい親族に渡すと、喜んでくれた。特に、ロシアのクラシックなオレンブルク柔毛の靴下は気に入ってもらえた。冬、日本の家はセントラルヒーティングがなくて寒いため、このような靴下は役に立つ。結婚の承認の印として、私も真珠のネックレスをいただいた。

 

笑えない失敗例… 

 日本人と知り合いになる時、ある特徴をふまえておく必要がある。それは日本人が人を判断することに長けているということだ。日本人が心の中でどう考えているのかを把握することは無理だが、日本人は相手の感情の細かい変化を見抜き、それにもとづいて、密かに自分なりの結論を出す。日本人は話し相手から発せられる否定的な言葉を嫌い、乱暴な表現を恐れる。沈黙は金なり。優しく、かわいい人はとても愛される。私が自分自身に課した最初の決まりは、「黙って、ほほ笑む」だった。これは新しい親族に評価された。

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ロシアの結婚と離婚

 あまり準備のできていない外国人女性が日本に来ることもある。私の知り合いのロシア人女性は、最初に未来の夫の両親の家を訪れた時、大きな水槽があることに気づいた。魚を見て、日本語の知識を披露しようと、「あ、刺身!」と叫んだ。両親は魚を食べられるのではないかと当惑した表情で、この婚約者を見つめた。他の知り合いの女性は、夫の両親にプレゼントを買うことを決めた。両親が別の街に住んでいたため、自分の暮らしている東京で買い物をして行った。だがこの贈り物は嫌がられた。美しいランタンは、お盆に死者を供養するためにつるす提灯だったのだ。これはいまだに後を引きずっている。

 

依然強力な家族制度 

 歴史的に、日本の家族制度は非常に強力である。結婚は永久のものだ。離婚率が上昇している現代の日本においてさえも、多くの日本人は仏教の伝統を信じており、そのつながりは強固で、死後も続く。そして、このために、近親者に対して我慢強くいる心構え、責任を取る心構えがある。

 家族の価値観は代々受け継がれる。日本では継承者の問題も重要である。100年前と同様、長男が最初の継承者で、両親の面倒を見る義務をおっている。両親が亡くなった後は、長男がその財産を管理する。嫁は通常、夫の両親の家で同居し、家事を手伝う。この役目があるからこそ、両親は日本人以外を息子の嫁に迎えたがらないのだ。外国人は嫁ぎ先の伝統や価値観を守らない、と考えられている。もし長男が青い目の女性に恋をしたら、会うことを禁じられ、財産相続させないと脅され、何とかして地元の女性と結婚させようとする。私の夫が長男だったら、きっと私たちは結婚できなかっただろう。実際、夫の兄は結婚を反対されたことがある。

 悲しい恋の物語は、日本の作品にあふれている。恋人の悲しい話は何百年も本や、映画、歌で描かれている。出会ってしまったら、忘れることなどできない。けれど一緒になれない。誰もが昔の祖先によって形成された無限の閉鎖的空間から抜けだすことができずに、我慢して生活している。

 それでも、外国人女性は日本の家族の一員になることができる。私は現にそうなのだから。ある条件さえ守れれば。それは、この不思議な東洋の国の文化を理解しようと努めること、親戚や友人に温かく接すること。そうすれば、日本はお返しをしてくれる。(談)