タラス・リトヴィネンコ撮影/ロシア通信
ロシアでは依然として、紙の本を読むことが好まれている。ロシア「世論」基金の2013年の調査によると、印刷された出版物を読んでいると回答した人は全体のほぼ半数の49%で、電子書籍をダウンロードしていると回答した人はわずか9%だった。ただ、これは少なくとも月に1回以上本を読んでいる回答者の話で、まったく本を読まないと答えた人は37%にのぼった。
本屋めぐりはおもしろい
アンナ・ユジナさん(29)は、本を読むのが大好きで、いつも本を買っている。もっともその後、置く場所探しという悩みもついてくるのだが。「本屋に行ったり、屋外の古本市であれこれ見て歩いたりするのが大好き。多分これは、一番の息抜き。その後で祖母の家に本を運ぶ。今のマンションは賃貸だから保管しておけなくて」とユジナさん。印刷物への情熱にもかかわらず、出張で持っていくために、電子書籍をダウンロードすることの方が多いのだという。
「メシチェリャコフ出版社」のヴァジム・メシチェリャコフ社長は、ロシアで読者層に変化はなく、人数も安定していると説明する。「これらの人々の一部は電子書籍に移行しているが、かといってこれは紙の本を読むことを妨げるものではない」。現在の読者の主な特徴はつながりだという。 「本を読む人は本に関する情報を交換しあい、入念に選んだ後で購入する。読者は文学作品の品定めがうまくなった。本の好みは流行とは無関係に、子ども時代に決まる。両親に好みがあると、子どもにそれを伝えることができるため。このようにして、読者が自分の後継者を育てていることがわかった。読者層は固定している。本を購入し、読んでいるのが裕福な人ではなく、むしろ逆であることは、興味深い。買う人の収入は平均か平均以下」。メシチェリャコフ社長によると、「ブッククロッシング」または屋外でミニ図書館をつくる「公園内の本」などの、ロシアの街で生じる新たなトレンドは、読者の数に影響をおよぼすものではないという。「本が大々的に宣伝され、誰かがそれを買ったとしても、読むとは限らない。三文小説を読む人は、ドストエフスキーを読むようにはならない」とメシチェリャコフ社長。
1990年代ほど人々は本を買わなくなったという。「今は本の価格も高騰している。書店を訪れる人の数で言えば、ロシアが一番本を読む国になったことはない。ドイツやフランスでは書店の棚のわきにいる人はロシアよりはるかに多い」とメシチェリャコフ社長。
状況を改善するには、書店を支援し、補助金を与える必要があるとメシチェリャコフ社長は考える。書店チェーンが拡大すれば、読者がインターネットのページだけでなく、実際に交流することができるようになる。
現在、インターネットのフォーラム以外で読者の交流の場となっているのは、図書館だ。ネクラーソフ図書館のリリヤ・バグロワ館長によると、現在の来館者数は年間9400人。以前は年間5000~6000人ほどだった。「最近、紙媒体と図書館への関心が急に高まった。情報を求めて人々はここに来る。情報空間が専門別にわかれている現在、誰もが総合的な知識に非常に関心を持っており、図書館員は知識の世界の案内役になっている」とバグロワ館長。
多くのモスクワの図書館が、イベントの開催で来館者を増やそうとしている。 「当図書館を支える要因となっているのは、記念建築物内にあること。建物を見に来た人が、ついでに本を見に立ち寄ってくれる。愛書家、映画愛好家のクラブの会合が当館で行われ、学校との共同イベント、見本市、写真展などを開催している。コワーキングや、蔵書を見せて図書館の沿革を紹介する図書館ツーリズムといった、我々にとってまったく新しい形式もある」とバグロワ館長。
紙の本には保管という問題も存在している。図書館には市民からの持ち込みがあるという。「今月だけでも市民から83冊を受け取った。本の選定を行って、保管する。本を持ち帰ることのできるブッククロッシング棚もある」とバグロワ館長。ロシアでもっとも長い歴史を誇る書店「作家の本屋」のリュドミラ・ヴァシリエワ店長は、人々が本を捨てないように販売しようと試みるところも見ている。「お年寄りは自分の書物を整理している。お年寄りが本を持ってやってきて、『孫に、部屋なのか、本置き場なのか、と言われる』と」とヴァシリエワ店長。書店では本は入荷後4ヶ月以上置かれず、売れなければ書店が引き取る。
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