Alamy/Legion Media撮影
ウィルスやスパイを防止するソフトウェアを生産しているロシアの会社「カスペルスキー」のサイトに10月に結果が公表された調査によれば、ロシア国民の52%は、コンピュータのウェブ・カメラを通した監視を懸念している。調査は、今夏、「カスペルスキー」と国際マーケティング・リサーチ機関B2B Internationalが共同で実施したもので、これには、世界のさまざまな国のユーザー11000人以上が参加した。ロシア人は、この問題に深い懸念を抱いており、回答者の半数以上が、彼らのウェブ・カメラが何者かに悪用されることを恐れており、26%は、自衛のためにカメラのレンズに何かを被せたり貼ったりしており、5%は、コンピュータばかりでなく携帯電話のカメラにも何かを貼っている。
マニュアルによる監視
ロシアのユーザーのこうした懸念を根拠なきものと呼ぶことは正しくなく、他人のカメラの遠隔操作によるウェブ・スパイ行為は実際に存在しており盛んになりつつある。ロシアの検索エンジン「ヤンデクス」で「ウェブ・カメラによる監視」と入力すれば、ハッカーがカメラをどのようにこじ開けるかに関する情報のみならず、カメラをこじ開けるためのプログラムをどのように取り出して設定して使用するのかについてのハッカー自身による詳細なマニュアルや引用もいくつか見出すことができる。「カスペルスキー」の社員らは、ユーザーの不安は根拠のないものではないとみなしており、「ウェブ・カメラは、実際、しばしばサイバー犯罪の効果的なツールになっている」と調査結果を自社のサイトkaspersky.ruでコメントしている。そこには、同社のウィルス対策専門家であるセルゲイ・ローシキン氏の言葉も紹介されている。同氏によれば、カメラのレンズに何かを貼りつけただけでは、カメラが開いている際の映像の傍受やマイクを通した盗聴を防げないため、とうてい最も有効な自衛手段とはなりえず、安全を確保するためには、特別の装置を使ったほうがよい。
誰が監視しているか
ロシア人がヴァーチャルな空間における仕事や交流に懸念を抱く理由は、ウェブ・カメラを通した監視の可能性ばかりではない。ロシアでは、ユーザーが交流サイトに掲載する秘密の情報へのアクセスを政府や特務機関が有しているという考え方がかなり広まっており、今夏に実施されたレヴァダ・センターの調査によれば、ロシア国民の35%は、インターネット上で自分が監視されているとみなしている。一方、それとほぼ同じ34%の人は、インターネットによる交流の安全性を確信しており、国家が監視を行っているとみなす人たちも、そうした可能性をアイロニカルに捉えている。
監視者捜し
社会心理学者で精神療法士のパーヴェル・ポノマリョフ氏は、政治的状況もかなり影響しているとし、こう語る。「2013年から、ロシアのメディアでは、自国民のみならずドイツのアンゲラ・メルケル首相に至るまでの外国人をも対象としたアメリカの特務機関の監視やスパイ疑惑のテーマが、盛んに取り上げられています…。多くの人は、それを見て、アメリカの特務機関がそれをしているのならロシアの特務機関も同じことをしているのではないか、と考えています」。同氏によれば、最近、一部のユーザーは、最大限の匿名化を心がけており、今のところ多数ではないものの、交流サイトを敬遠している。
しかし、インターネットは、特務機関がユーザーを監視しているかどうかは別にして、いまだに必ずしも安全な場所とは言えない。「カスペルスキー」の別の専門家であるユーリー・ナメストニコフ氏は、こう語る。
「ユーザーは、自分の生命や貴重な情報や金銭までも電子装置に委ねていますが、ロシアでは、サイバー空間における金融攻撃の増加が見られています。たとえば、一旦ファイルを読めなくしておいてから情報へのアクセスを回復する代金を要求するプログラム・コードの専門家らが、大きな危険を孕んでいます。2014年上半期、同社の製品(ウィルス対策ソフト ― 編集部)は、昨年同時期を12%上回る金融攻撃を撃退しました。ロシアのユーザーは、問題を自覚しており、秘密データの保全を懸念していながらも、いわば羨むべき諦観を抱いて、インターネットにそれらを掲載しつづけています。当社の調査によれば、ロシア人の20%は、交流サイトに必要以上の個人情報を晒しています。オンラインの金融操作について言えば、回答者の四分の三は、銀行や支払いシステムやオンライン・ショップは自分のお金を確実に保全していると信じていますが、そうした期待は、余りにも楽観的です」
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