レストランの制裁対処策

アントン・テェニソフ/ロシア通信

アントン・テェニソフ/ロシア通信

レストラン業者が輸入可能な食材を探している。多くのレストランが以前から国産食材に切り替えていたため、さほど制裁の影響を受けない。しかしながら、一部レストランはロシアにない食材を輸入していたため、代替品探しを余儀なくされる。レストラン業はいかに制裁を乗り越えるのか。

ロシア産モッツァレラで本格イタリアン

 ウクライナ情勢をめぐり、ロシアに対して制裁を科した国の一部に、報復措置が発動された。対象はEU諸国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ノルウェー。これらの国の農水産品は、1年間ロシアへ輸入できない。具体的には牛乳、チーズを含む乳製品、大型有角家畜の肉、ブタ肉、野菜、果物、卵、魚、甲殻類、軟体類、その他水生無脊椎動物。

 このような禁輸措置が国民の生活に影響することは明らかだ。レストラン業者にとっても厳しい状況となる。おしゃれな飲食店の料理長や経営者は、すでに輸入品なしでどう対応するかを考えている。イタリア料理店、またはロシア料理店であっても、チーズや野菜の調達の問題が出てくる。

 イタリア料理店を経営するヴァレンチノ・ボンテンピ料理長は、すでにロシア産モッツァレラを見つけたが、肉、小麦粉、卵も今後見つけると話す。「この点でイタリア料理は簡単。水産物とパルメザンを除いて、ロシアにはほぼすべての食材がある。イタリア産とは質が違うが、あるだけまだいい。料理する側の才能がより求められることになる」

 多国籍レストラン・グループ「プロプカ・ファミリー」のアラム・ムナツァカノフ社長も、いかなる状況でも料理の提供は可能だと自信を持つ。「レストラン業者は順応する。ロシアの市場で買える食材でお客をもてなす。私は年を重ねているから、こんなことでは動揺しないよ」

 イタリア料理店企業グループ「カフェ・デ・マルコ」のアレクサンドル・コジン社長は、制裁がレストラン業者にとって、それほど大きな問題になることはないと話す。「主に国産品を使っている。食材がそろっている間は、メニューを変えることはない」

 業界関係者の中には、禁輸措置に喜んでいる人もいる。レストラン経営者のセルゲイ・オシンツェフ氏はこう話す。「レストラン業者の状況はむしろ良くなる。どの輸入食材も、残念ながら、殺虫剤、抗生物質まみれ。当レストランでは輸入食材を買わないようにしているし、食材が国内の農家でつくられていることが知られているから、おかげさまで20年経営が続いている。国内の生産者も禁輸で助かる。だから禁輸は歓迎」

 

アメリカから輸入する日本食の材料

 国産の代替品が存在しない輸入食材で料理がつくられているレストランの関係者は、禁輸措置に対して楽観的に構えることができない。

 日本食レストラン「相撲さん」のタチヤナ・ミシナ社長は、死活問題に直面していると話す。「今後どうなるかわからないし、禁輸措置前に発注された製品を受け取れるかもわからない。食材は毎週発注している。半年も冷凍させることができないから。日本とアメリカから輸入していて、日本産は今のところ問題ないけど、アメリカ産は輸入できないから激しく動揺している。例えば、カリフォルニアからカキ、カニ、マグロを輸入しているけど、この質のおかげで『相撲さん』が認められている。アメリカからは枝豆すら輸入できない。根菜と考えられているから。アメリカから輸入できるのは海藻だけになるけど、それだけを空輸したら高額になりすぎるから非現実的」。今後は日本産と韓国産に切り替えなければならなくなるが、どちらも非常に高額だという。

 スペイン料理店にも同様の問題が発生すると、多国籍料理店「デリカテッセン」、スペイン料理店「タパ・デ・コミダ」、カフェ「ブテルブロ」および「ダルィ・プリロドィ」の料理長で共同所有者のイワン・シシキン氏は話す。禁輸措置によって多様性が失われることを懸念している。

 「肉類の問題は発生しない。輸入肉を買わなくなって久しい。政治状況からそうしたわけではなく、原産地をしっかりと自分で管理できるように、国内の生産者探しを行ってきた。だが、ナッツ、果物、野菜、乳製品がとても重要。例えば、ヴァリオ社の製品の輸入禁止は致命的。長年探し続けた『トルコ・ヨーグルト』という製品は、ようやくモスクワで販売されるようになったばかり。絶品だから、いろいろな料理に幅広く利用してきたが、以前の状態に戻ってしまいそうだ。メニューからいくつかの料理を外さなければいけなくなる。市場で代替品を見つけるのは無理。すべて試食したからわかる。自分でヨーグルトをつくることはできない。あとパルメザンなしでどうするか見当もつかない。『デリカテッセン』はあまり影響を受けないけど、『タパ・デ・コミダ』はそうはいかない。ただでさえスペイン食材の調達には問題があるのに、禁輸措置となると、今後は他の国の製品で人工的にスペインの味を再現しなければいけなくなるだろう。何か新しいことを考えなければいけなくなるかもしれない。マカロニ、パスタ、米、植物油がリストに入っていないのは良かった。これが加わらないことを願うのみ。当レストランからオリーブオイルが消えたら、通常営業は難しいのではないか」

 シシキン氏はまた、禁輸措置で製品価格が上昇すると指摘する。「製品の原価が上がり、価格を上げるところや、可能であれば自己負担を増やすところがでてくる。品質には無関係な値上がり。今国産品の質が高いと言ったら、皮肉になる。これで農業が繁栄すると騒ぐのは良くない」

 

*以下の記事を参照。

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