海外旅行に行けない治安機関職員

セルゲイ・クズネツォフ/ロシア通信

セルゲイ・クズネツォフ/ロシア通信

ロシア外務省が、保安庁、警護庁、内務省、国防省、麻薬流通監督庁、非常事態省、検事局の職員に対し、海外への渡航を控えるよう強く求めた(禁止措置)。国民の半数以上はこれを不公正だと考えている。専門家は、職員を守りたいという気持ちと、反汚職対策が、この要求にあるのではないかと考えている。

世論はこれに反対 

 ロシア人の半数以上がこのような要求に反対していることが、「世論」基金の調査で明らかとなった。71%の国民が、関連省庁の職員の渡航が法律で制限されることに反対している。回答者の主な主張は、「誰もが好きな場所で休暇を過ごせる権利をもっている」であった。要求を支持したのはわずか3分の1だった。

 この春から海外渡航ができなくなった、または一部できなくなったロシアの当局の職員の数は、150万人。

 ウクライナ情勢、西側との対立により、外務省は海外旅行を控えるよう関連省庁の職員に強く求めている。また、アメリカの情報機関の依頼に応じて第三国で行われている「慣習的捕獲活動」を理由に、一般市民にも、アメリカと犯罪人引渡し条約を結んでいる国に行かないよう忠告した。これにはトルコ、エジプト、タイ、イスラエル、ほとんどのヨーロッパ諸国を含む、100ヶ国強が該当する。

 それまで法律で完全に海外渡航が禁じられていたのは、保安庁(KGBの後身)のみであった。保安庁に勤務するシビリアンでも、親戚の病気や自身の治療以外の目的で海外渡航することは許されていない。これはほぼすべての者が、機密書類を閲覧できるためだ。

 

反汚職対策兼ねる? 

 国家軍予備役将校合同協会理事会のアレクサンドル・カニシン議長は、ロシアNOWの取材に対し、この要求が近く撤廃されると話した。「海外の人がロシアに対して負の感情を抱いている時、当局の人間は挑発を受ける可能性がある。休暇でも出張でも、対立が起こるかもしれない。これは一時的な措置であって、(現在預けられている)パスポートは、次の休暇シーズンには返却されるだろう。状況が落ち着けば、もとに戻る」

 モスクワ市・モスクワ州警察官労働組合のミハイル・パシキン組合長は、この要求が反汚職対策だと考える。「破産した旅行会社の関係者が、当局の裕福な顧客がいなくなったと話している。このような資金の一部は汚職犯罪によって得られるもので、それを使うために海外に行く。汚職を完全に根絶できないとなれば、それを国内で使わせることになる。私だったら、巡視部門や民間警備部門の職員など、一般職員の海外渡航は許可する。ここでの汚職はないため」

 警察官は当初、この要求に不満をもらしていたが、その後代替旅行先を見つけて落ち着いたという。パシキン組合長は、この要求がロシアの観光分野の発展に寄与すると考える。


コメルサント紙の記事を参照

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