市民が法律を変えられるか

タス通信撮影

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アメリカ人がロシア人の子供を養子にとることを禁ずる「ジーマ・ヤコブレフ」法、宗教的信仰の侮辱に対して刑事罰を科すことが可能な「信者の感情保護」法、未成年者に同姓愛を宣伝する行為を禁ずる「同性愛プロパガンダ禁止」法は、ロシアの法体系を一層厳しくする法律の例だ。運転者の血中アルコール濃度0パーミルに関する法律についても議論があった。市民が努力すれば、このようなすでに成立済みの「不便な」法律でも、変えることが可能だということがわかった。

運転者の「0パーミル」撤廃 

 もっとも印象的だったのは、運転者の「0パーミル」の撤廃だ。ドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)は2010年7月末、自動車運転者の体内の 血中アルコール濃度が0パーミルでない場合を飲酒運転とする法律に署名した。それまでは0.3パーミルという許容基準が存在していた。

 アメリカでは 0.8パーミル、ヨーロッパの多くの国は約0.5パーミルだから、他の国と比べて、かなり厳しく見えた。飲酒だけでなく、アルコール分の入った薬剤の服用でも運転ができなくなる。

 0パーミルの撤廃を訴えたのは一般市民。市民主導を推進するウェブサイトで、この提案に多くの署名が集まり、その後下院(国家会議)で検討され、最後に大統領が署名した。

 このようにして、成立してから1年後に撤廃され、元の血中アルコール濃度の許容基準が復活し、没収された運転免許 証も返却された。

 ロシア自動車保有者連盟のアレクセイ・スホルコフ副理事はこう話す。「これは政府への反抗ではなく、ごく普通の人間的ロジックの保護、良識の勝利だ。良識が勝利したことは、理解できるし妥当」

 

下からの撤廃 

 2013年に行われた緩和も自動車関連だ。自動車が対向車線にはみ出すと運転免許証を没収されていたが、2013年1月からこれが罰金のみとなった。この案を作成した「統一ロシア」党のヴャチェスラフ・ルィサコフ議員は、自動車の保有者と話をして、このような動きを取ることに決めたと述べている。

 0パーミル撤廃と罰則緩和は、政府に国民の声を聞く用意があることを示していると考える専門家もいる。

 有名な法律家のアンナ・ヴァリヤス氏はこう話す。「法律の撤廃を決定することは、自分の間違いを正式に認めることだから、どこの国の政府にとっても簡単ではない。前例ができたこともそうだが、この文脈においてより重要なのは、いかにしてその決定がなされたのかということ。イニシアチブが下から生まれて、大統領まで到達した。これは国民を鼓舞するものであり、自分の国の法律が自分たちの手中にあることを示すものだ」

 

法改正を「提案」するために10万人分の署名が必要 

 市民の主導する内容が検討されるためには、積極的に活動しなければならない。提案に10万人分の署名が集まって初めて、国の上層部で検討される。だが、署名が集まればいいというわけでもない。政府の専門家グループは2013年10月、10万人分の署名のあった「海賊対処法」撤廃を求める請願書を却下した。ミハイル・アブィゾフ「開かれた政府」システム構築担当大臣は一応、法律に修正が必要で、市民の希望はそこで参考にされると話してはいるが...。「海賊対処法」は、2013年8月1日に成立した。著作権を侵害するインターネット・リソースを、裁判前にブロック可能なメカニズムを定めている。

 「ロシア社会イニシアチブ」のウェブサイトでは現在、2法案の緩和を求めて、署名集めが行われている。それはタバコの宣伝と公共の場での喫煙を禁止する「反タバコ」法と、「信者の感情保護」法だ。今のところ、この提案が立法者まで到達する可能性は、非常に低い。「信者の感情保護」法の撤廃を求める提案に は5500人、「反タバコ」法の修正を求める提案には1000人強の署名しか集まっていない。

 「ロシアの法律を緩和する話ではなくて、市民が自分の意見をどれだけ固持するかという話だと思う。話題に出たすべての法案は賛否両論があり、承認前に何度も議論されていた。議論は承認後も続いているし、実を結んでいる」