社会学者らはこの現象を、国民の間で君主国の過去に対する思いが強まっている証だと考えている。写真はロシア帝国の国章=ルスラン・スフシン撮影
セルゲイ・モシチェンコさん、59歳、元試験宇宙飛行士、現在年金生活者
「もう行列にならんで3時間。年金生活に入って自由時間が増え、歴史に夢中になっている。今テレビやインターネットでも、王朝の話題が盛んに出ているしね。ピョートル大帝以外に優れた君主はいなかったように感じるが、調べ始めたら、他の皇帝も立派だったことがわかった。ロマノフ王家の歴史はまるでレンガ 造りのようで、平坦な場所もあれば、そうでない場所もある。ピョートル大帝は首をはねていたけど、これは時に必要なことだから仕方ないとして、汚い仕事もしていた。人選びがうまくて、盗みの被害にあうこともあったけど、なすべきことはなされていた。その結果、国が繁栄した。立派な皇帝がいたんだ。君主制へ の回帰は、してもいいのでは?」
サトウ・ケイさん、21歳、日本人留学生、モスクワ大学でロシア語を勉強中
「教授が展示会に行くことをすすめてくれたので、観覧した後で、その印象を話すと約束した。ロマノフ家については以前は聞いたことがなかったし、今はロシアの皇族であることを知っているぐらい」
ヴェラ・イリインチェワさん、年金生活者、モスクワ郊外在住
「ロマノフ家に生を与えた、ニコライ2世の庇護者でもある、聖フェオドル生神女のイコンに関する歴史を知るために、同じ教会の信徒と一緒に来た。ニコライ2世ほどの信仰心があればいいのだけど。君主国が必要かどうかはわからない。君主国が我々を助け、子孫に明るい未来を授けてくれるなんて、国民はもう信じることはできないのではないか」
アレクセイ・ブルィギンさん、28歳、エンジニア、サンクトペテルブルク在住
「昨日出張でモスクワに来て、この展示会のことを友だちに教えてもらったから、自由な時間があるうちに見ておこうと思って来てみた。新しいインタラク ティブな展示会だってことなんで、興味がある。普段は展示会に行くことはない。いつか君主制に戻る時がくるかもしれない。皆がすごく自由になったから、誰かに上に立ってもらって、何をすべきか指示してほしいとお願いするかも。そして自由なんてもういらないと」
オリガ・トリンクナスさん、41歳、実業家、モスクワ在住
「仕事仲間が展示会に行って、すごく良かったからって、私にもすすめてきたの。今回運ばれてきたイコンを見てみたい。大混雑していて、長い行列があるのが残念。土曜日に一度来てみたけど、あきらめて、平日の今日を選んで再び来てみたら、状況は同じ。イコンにそれほど強い関心があるわけじゃなくて、ロマノフ家の何がこれほどの行列をつくったのかってことに興味がある。ロマノフ家はロシアのためにたくさんのことをしたと思う。最後の皇帝(ニコライ2世)の不幸な運命は衝撃的。君主制は有望だし、ロシアには強い人が必要」
ダーシャ・ポポワさん、15歳、9年生、モスクワ在住
「もう3時間もならんでる。学校の担任の先生が展示会に行くことをすすめてくれた。新しい建物が見たくて来たの。何の展示会かは、正直言ってよくわからない。ロマノフ家とか何とか。歴史で習った気がするけど。人が多いのは無料だからじゃないかな。今モスクワで無料ってほとんどないし。君主国は支持しないわ」
「人々が象徴的存在を求めている一方で、選択肢は限られている。大多数の国民の意識の中にあるのは、スターリンとニコライ2世の大きな肖像画2枚。君主国を称賛するのは大々的なショーであり、情緒的な目的ではなく、極めて実利的な目的で、大衆の心に訴えられていると思う。このような風潮になれば、政府機関の魅力と権威が増す。さらに政府の質から、華やかなイメージに注意をそらすこともできる。
ロシアでは最上層部から民衆まで、過去をながめるのが習慣になっている。前を向くことができるのは、自分の実力を確信している人と、自由な人。時にどちらも兼ね備えている人。将来は不透明だから、それについて考えるのは怖い。特にロシアはすべてが不安定で、感覚的に極めて混乱し、頼る物がないため、人々は将来を恐れる。機能している社会的機関はなく、まず学校からして自分たちの社会的役割を認識していないため、機能停止状態。すべては惰性で存在して いるだけで、人々はその惰性に動かされて、慣れた過去を探す。このようにして、過去の魅力的な象徴を求め始める」
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