PhotoXPress撮影
社会学者はアルコール中毒、家計の窮迫、狭い住居を主因に挙げる。これらは同時に重なることが多い。政府は離婚件数を抑えるため、離婚手数料をこれまでの400ルーブル(約1200円)から一気に3万ルーブル(約9万円)に上げたが、歯止めになるとは思えない。
レペヒン夫妻の場合
ワレリー・レペヒンさんは解雇された。上司に難癖をつけられ、つい殴ってしまったのだ。新たな仕事を探しているが、どの会社でも前の職場の推薦状を催促される。妻のイリーナさんは夫に元上司に謝るように説得してきた。
「次女はまだ生後6カ月にもならない。お金がいる。私は産休中だし」とイリーナさんはこぼす。「結局アパートを賃貸するしかなかった。毎月ローンを払って、母のところに無心に出かけなきゃならない」
派手な言い合いの後、ワレリーさんは追い出された。家族はイリーナさんの母親の年金で暮らしている。離婚を説き伏せたのは母親だった。
「ウサギ小屋」も一因
家族に亀裂が入る主な原因はロシア人の大半が「ウサギ小屋」に住んでいることだ。モスクワ大学社会学部のアレクサンドル・シネリニコフ准教授は「ロシアでは、アパートの部屋数が人数より少ないのが普通だ。中年の夫婦でさえ、両親と同居している人が多い」と語る。夫婦が離婚後も同じアパートに住み続けたり、場合によっては同じ部屋に同居し続けるのも同じ理由による。
50歳過ぎが第2の危機
昨年離婚した夫婦は65万組で、結婚したのは120万組。結婚した夫婦の3分の1は3年以内に離婚している。
年齢別に見ると、最も離婚率が高いのは35歳以下だ。危機の第2の波は夫婦が50歳を過ぎたころにやって来る。心理学センター「十字路」のキリル・フロモフ所長はこう語る。
「子供が成人すると夫婦の共通の仕事がなくなってしまう。『共通の楽しみ』をうまく共有し続け、あらゆる危機を乗り越える夫婦もいる。だが、大抵の場合は子供が唯一のかすがいなのだ」
国立ロストフ医学大学が結婚後10年以上の夫婦1万1000組にアンケートを行った。「もし過去に戻ることができれば、今の相手と結婚するか」との問いに対し、「する」と答えたのはたったの100人に過ぎなかった。
多くは男性側に問題
「ロシア人は離婚の仕方が下手なようだ。元夫婦の7割以上が不倶戴天の敵になる」とフロモフ所長は指摘する。
「男性は勝手に義務を放棄し、育児も手伝わず、生活費も払わない人が多い」と、クリストフェル・スボデル国立高等経済学院准教授は説明する。
ロシアの夫婦のほとんどは、結婚とは合法的な人間の所有であると考えているようにみえる。特に結婚生活を自分の流儀で仕切りたがる男性はそうだ。毎年900人の女性がしっと深い夫の手で殺され、1万4000人が家庭内暴力で命を落としている。
離婚後、子供は母に引き取られるのが普通だ。「全ロシア世論調査センター」のアンケートによると、離婚後5年以内の父親で、よく子供に会っていると答えたのは44%。それが離婚後5~9年で31%、10年以上で24%に下がる。
再婚を急がない女性
離婚した女性は再婚を急がない。独身生活の間に、自力で家族を養えるようになるし、男の権力から自由になり、自信もできてくる。心理学者は、離婚は悲劇ではなく、成長の糧を与え得るとさえ説く。最近では、「末永く幸せに」ではなく、「短くても多彩な生活」をモットーに結婚するカップルが増えている。
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