内部から見た女子刑務所

受刑者は10~11時間働くこともよくあるが、残業代を支給されており、その収入は矯正施設の職員と同じぐらいになるという。=タス通信撮影

受刑者は10~11時間働くこともよくあるが、残業代を支給されており、その収入は矯正施設の職員と同じぐらいになるという。=タス通信撮影

マスメディアと権利擁護派は先週、ロシアの女子刑務所の現状に注目した。そのきっかけとなったのは、女性パンク・バンド「プッシー・ライオット」のメンバー、ナデジダ・トロコンニコワ受刑者のハンガーストライキ。専門家や事情を知る人は、更生システムをより人道的なものにすべきだと話す。さほど深刻な問題は見出せない一方、実態をつかみにくい面があるという。

 トロコンニコワ受刑者は現在、モルドヴィア共和国の矯正施設にいるが、9月23日にその現状を訴える手紙を、法執行機関やマスメディアに送付。施設では女性に対する扱いがひどく、副所長は個人的にトロコンニコワ受刑者に脅しをかけてきたという。抗議の意を示すために、ハンガーストライキを始めた。矯正施設の所長は脅しをかけた事実はないとし、モルドヴィア共和国の施設の条件は、ロシア国内の同様の施設の条件とほとんど変わらないと主張。大統領直属の人権評議会の会員は調査を始めた。

 ロシアNOWの記者は、トロコンニコワ受刑者のいる施設と類似した、イヴァノヴォ州の女性用矯正施設を訪ねた。

 

記者が見た塀の中 

 高い鉄の柵のわきでは、つながれた3匹の大きな番犬が、女性の列にむかってほえている。女性たちはそのまま立ち止った。この柵は、刑務所施設と縫製工場を隔てている。

 「バッグを素早く開ける」と看守が叫ぶ。すると女性たちは、工場の作業着と作業靴の入った、使い古されたビニール袋を開け始める。看守は受刑者ひとりひとりを見ながら、袋を確認する。このような確認は工場に行く時、そして戻ってくる時に行われる。「縫製工場から持ち出しのないように監視している。女性は男性よりも残酷。縫製工場から持ち出した物で、他の受刑者を襲撃する」。

 ただ、ここでは受刑者の襲撃はめったに起こらない。雑居房の壁には汚れた雑巾がかけられ、湿度の高さからきしんでいる長い廊下の床には、洗濯物が漬け置きされた桶が所せましと並べられている。看守はこう叫ぶ。「何を並べているの。不衛生な状態にしておくと罰室に入れるよ」。

 

20歳のアリーナ受刑者の場合 

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ミス刑務官

 受刑者は皆ひざ下の丈の青いスカートをはき、型崩れした大きなジャケットをはおり、白いスカーフを頭にかぶっているため、あまり区別がつかない。だが縫製工場で作業をする女性の中で、20歳のアリーナ受刑者だけは目立っている。スカーフの下から明るい亜麻色のドレッドヘアをのぞかせ、鼻と眉の部分にはピアスの穴がある。これはアリーナ受刑者がロック・コンサートやテクノ・ディスコといった、ナイト・ライフを満喫していた自由な時代の名残りだ。「自分がここに来るなんて思いもしなかった。犯罪者の女の人と一緒になるなんて。悪夢みたいな現実。刑務所の中は寒いけど、一番怖いのは女子がグループをつくって固まっていること。自分を守るには堂々としていなきゃならない。彼女たちは管理側と仲良くて、残りの女子をコントロールしようとする」。

 アリーナ受刑者は以前、大学の化学部で学び、ディスコで軽い麻薬を売っていた。麻薬を売った罪で3年の懲役刑を科せられ、人生は変わった。元はきゃしゃだったが、いつでも防衛できるがっしりとした女性になった。「最初の半年間は緊張の生活が強いられたけど、今はそれなりに自己主張できるようになった」。

 

受刑者の労働の実態は 

 ロシアでもっとも古い、元受刑者社会復帰センターのアレクサンドル・エゴロフ所長は、女性がこのセンターに来ることはめったになく、再犯もほとんどないと話す。「女性との仕事はほとんどなくなったし、我々の助けもあまり必要としていない。そもそも女性の受刑者自体が非常に少なく、全受刑者の20分の1程度。再犯もほとんどない。女性の再犯者がいたとしたら、それはもう更生不可能で、手を差し伸べることもできない。1年のうちに我がセンターに来るのはほんの数人だが、それでもサンクトペテルブルクの行政は特別なセンターをつくりたがっている」。

 非営利団体「受刑者支援地域間慈善基金」の理事で、ロシア連邦社会会議のメンバーであるマリヤ・カンナビフ氏によると、矯正施設には実際に問題が存在し、権利擁護派もよくこれについて話しているという。

 「刑罰制度を完成させ、より人道的にすべきというトロコンニコワ受刑者の主張は正しい。残念ながら、非常に多くの矯正施設に問題があるし、多くの施設では受刑者が1日8時間以上働いている。ただし働ける施設はロシアの矯正施設の3分の1程度。そして施設は仕事を入札している」。こうカンナビフ氏は説明する。

 受刑者は10~11時間働くこともよくあるが、残業代を支給されており、その収入は矯正施設の職員と同じぐらいになるという。「受刑者と話をしたけれど、食堂の職員とほぼ同額の7000ルーブル(約2万1000円)ほどを受け取っている。ただ、受刑者の労働は強制的で、実態をつかむのは難しい」とカンナビフ氏。最近マスメディアが、実際には受刑者は少額しか受け取っていないと伝えた。だが連邦刑執行庁の幹部はこの件についてコメントしていない。

 受刑者が縫製以外にも、レース編みや、マトリョーシカの絵付けをしているというのは興味深い。カンナビフ氏によると、ロシアには約5万8000人の女子受刑者がいるという。

プッシー・ライオットパンク祈祷

 女性のパンクグループ「プッシー・ライオット」は、大統領選挙中だった2012年2月に、モスクワの救世主大聖堂に覆面をして入り込み、聖職者しか入れない聖壇前で、「聖母マリアさま、プーチンを追い出して!」と歌い、“パンク祈祷”を演じた。

 検察当局は、女性3人は事前に示し合わせて「正教会に挑戦」したとし、「フーリガンの行為」で懲役3年を求刑した。モスクワのハモヴニチェスキー地区裁判所は、8月に禁固2年の実刑判決を言い渡したが、グループの弁護士の要求にもとづき、10月にモスクワ市裁判所で見直し裁判が行われ、メンバーの一人エカテリーナ・サムツェヴィチ被告の刑が、執行猶予付きに軽減された。理由は、彼女が「ギターを取り出し、歌う間もなく、守衛に外に連れ出された」ため。