街で”島”となった場所はすでに、極東のベニスと呼ばれている。道は急流の濁った運河に変わった。 =AP通信撮影
アムール川中流では水がひき始める
それでもアムール川中流ではようやく水がひき始め、1日5センチメートルないしは50センチメートル水位が下がっているところもある。沿アムール地方では9月末頃に降霜(こうそう)が始まるが、数千軒の家は住める状態にない。
ウラジミロフカ村の住人のマリーナ・マスロワさんは、ため息をつきながらこう話す。「もうかれこれ1ヶ月も屋根裏で生活している。腰の高さまで浸水して、もう部屋は使うことができなくなってしまった。湿気臭くて、あちこちカビだらけ。寮の入居申請書を今日提出したばかりだけれど、できるだけ早く引っ越して普通の生活に戻りたい」。
避難民は冬の間、サナトリウムや軍の兵舎にふりわけられる。復旧可能な被災家屋は、温風送風機で乾燥させることになる。すでに300機が送られているが、政府予備基金は他に2000機発注した。温風送風機は電力を大量に消費するため、地元政府は被災した住民の電気代を3分の1に軽減する決定を行った。
ユダヤ自治州とハバロフスク地方では水位上昇続く
中国黒竜江省政府からも支援の打診があったが、ロシア側はまだこれを受けていない。というのも、中国の水害も深刻だからだ。中国では今夏の洪水で450万人が被災し、直接的な経済損失は120億人民元と試算されている。黒河市の貨物ターミナルはアムール川の氾濫で浸水し、税関には12トンの国際郵便物がたまった。だがアムール川の水は一部ひき始め、8月29日には水害後初となる貨物はしけ船2隻が川を横断した。船はロシア側に機械や郵便物3トンを届けた。
一方で、ユダヤ自治州およびハバロフスク地方流域の、範囲1000キロメートル強のアムール川では、水位の上昇が依然として続いている。ハバロフスクの例年の水位は、晩夏または初秋で4.5メートルだが、現在はこれが8メートルに達している。市民、救助者、軍人は、アムール川の氾濫のひどい箇所を定めるようにしながら、すでに長さ18キロメートルの堤防を築き、毎日高くしている。
「極東のベニス」
街で”島”となった場所はすでに、極東のベニスと呼ばれている。道は急流の濁った運河に変わった。アムール地方知事は、住民に危険区域から避難するよう呼びかけているが、100人以上の”島民”が浸水した家屋に居座り続けている。穀物、砂糖、即席ラーメンなどを備蓄しており、救助者はボートに乗ってパンや水を届けている。住居ビルでは上階の住人が下階の住人を集めて、空いている部屋に住まわせている。
地元の名物になっているのは、年金生活者のウラジーミル・ニコラエヴィッチさんだ。もう何日も精進を守り、水害がやむよう祈りをささげている。天が与えるこの試練を、感謝の気持ちを持って受ける必要があるという。ウラジーミルさんの家に救助者がやってくると、屋根から喜んで宗教談義をし始める。
軍需工場にも大水が迫る
極東の産業の中心であるコムソモリスク・ナ・アムーレでも避難が始まった。ここは原子力潜水艦、軍用機、中距離旅客機を建造している街だが、今は堤防をつくっている。
ウラジーミル・プーチン大統領は被災地を訪れ、延々と続く浸水地を上空からヘリコプターで視察し、地元住民と言葉を交わした。「これほどの規模の災害に我々は直面したことがない」と大統領は話し、洪水が起こった際に、地元の行政が法と規則に従って活動したかを調べるよう、調査委員会に指示した。また一時滞在した場所で、20人の被災者を見舞った。
ところで、大統領の車列を被災地に通すために、3本の主要幹線道路のうちの1本が封鎖された。他のもう1本は洪水で数ヶ所が流されたことから、これまた”封鎖”されてしまい、ハバロフスクの被災していない地域の交通はマヒしていた。
プーチン大統領が被災地を訪問した後、極東連邦管区大統領全権代表兼極東発展相のヴィクトル・イシャエフ氏が解任された。新たに大統領全権代表となったのは、ユーリ・トルトフネフ大統領補佐官。次の極東発展相は、今後政府が決める。正式な発表では、今回のイシャエフ氏の人事異動は洪水とは無関係で、1ヶ月前から決まっていたという。
アムール川河口に最大の洪水が到達するのは15~20日後と予測されている。川の水位は数週間かけて下がっていく。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。