ロシアでは、全国標準の学校制服が1992年に廃止された。=タス通信撮影
このアイデアは少数の政治家の発案だが、おかしなことに、生徒、保護者や教員の間からも肯定的な反応を得ている。多くの人は、制服導入によって、学校で 社会的な格差があからさまに露呈されることがなくなり、生徒が伝統的な宗教的衣装を着用することを許されるべきか否かの問題についても、終止符が打たれると期待しているのだ。
学校制服を復活させる法案が、最近、国家会議(下院)に提出され、生徒たちが9月1日から制服を着用し始めることはほぼ確実になりそうだ。
法案の起草者で、与党「統一ロシア」に属するオリガ・ティモフェイエワ議員は、ロシア教育法の修正案も起草した。
「これを実施する目的は、学校を知識の場として保護し、経済的に恵まれた生徒と、保護者にブランド品の服を買うお金がない貧しい生徒を区別しないようにす ることにあります。自由な服装を許可すると、生徒によっては宗教的な服装をし始めるかもしれないので、子どもたちを信仰者と非信仰者に分けることにも反対です。子 どもたちが愛校精神を持つように育つことを望んでいます」。法案の起草者はこう述べた。
鶴の一声
とはいえ、ソビエト時代の女子生徒たちが嫌悪してやまなかった、白いレースの襟と黒か白地のエプロンがついた茶色のワンピースが復活することはない。また同法案 は、全国共通の標準的な制服を課すものでもない。
法案の起草者たちは、上から指図するのを控え、ロシア各地に自由な選択権を与えるために、学校制服に関する厳格な要求事項もあえて既定しなかった。どのようなタイプの制服がふさわしいかは、それぞれの地方自治体によって決められることにな る。低所得層世帯の子どもたちには、制服が無料支給されるという。
プーチン大統領は、3月末に開催された超党派の「全ロシア人民戦線」第1回総会で、学校制服を導入する案を支持する考えを表明した。「ロシアには学校制服がなければなりません」。
プーチン大統領は、制服導入を地方政府に義務づけるよう連邦レベルで決定し、その詳細については、決定権を自治領や自治体に与えることを提案した。
女子生徒は茶色のワンピース。 |
ヒジャブ論争が火付け役に
ロシアでは、全国標準の学校制服が1992年に廃止された。女子生徒は茶色のワンピース、男子生徒は紺色のスーツという制服は、1990年代初頭に姿を消 した。ソ連崩壊後は、ジーンズとTシャツ姿で登校する機会を得られたこと自体が、新しい自由な社会を確実に象徴しているかのようだった。
とはいえ、現在では既に、独自の制服を導入した学校もある。ほとんどは、フォーマルなビジネス風にするか、他の何らかの方法で単に見苦しくなければいい、という方針だ。なかには制服を小学校低学年にも推奨する人がいる。
これまでに学校制服が義務化されたのはスタヴロポリ地方(ロシア南部に位置し、チェチェン共和国やその他のイスラム教圏地域に隣接する)のみだ。
昨年 12月に発効したこの措置は、ヒジャブを着用して登校したイスラム教徒家庭出身の女子生徒に関する論争が発生した後にとられたものだ。ヒジャブは、イスラム教徒の女性が頭髪を隠すのに使う布だが、その学校の管理者は、学校でのヒジャブ着用を許可しない決定を下した。
これを受けて、プーチン大統領がロシア社会は本 質的に非宗教的な社会であると述べると、この地方の知事は学校制服を全ての学校において強制するよう指示した。
反対論もあるが賛成派が大多数
学校制服再導入の反対派は、制服一式だけでも2,000〜3,000ルーブル(6,500〜9,700円)の費用がかかり、子沢山の世帯に はかなりの負担になることを指摘している。社会格差について言うなら、最近ティーンエイジャーでも持ち歩くようになった高価な携帯電話などの電子機器 に、はるかに顕著に露呈する。
大規模な腐敗があらゆる学校に蔓延するのではないかと危惧する声もすでに挙げられ始めている。学校当局は、事前に選定された衣料製造業者が、みせかけの受注競争を勝ち抜いて落札することを許すように、学校運営の規則を決めてしまいかねない、というのだ。
ティモフェイエワ議員が主導する法案は、衣料製造業界に対して巨額の政府発注契約をもたらすことになるだろう。いくつかの推測によると、この業界には年 間で360億ルーブルにおよぶ額の契約がもたらされることになる。これは、現在ロシアには1,200万人の就学年齢者がおり、制服一式の価格は3,000 ルーブルを超えてはならないという数字に基づいて算出されたものだ。
こうした反対論にもかかわらず、学校制服賛成派は、懐疑派と反対派をはるかに上回っている。
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