=Lori/Legion-Media撮影
「まだすべてが失われたわけではない」――機知に富んだ「ロシア郵便」利用者が思いついたスローガンはいろいろあるが、これがもっとも侮辱的なスローガンというわけではない。ロシア郵便市場の独占会社「ロシア郵便」は、小包や郵便物の配達に問題があることで有名なだけではなく、ソ連時代からの利用者サービスの伝統を「守っている」という点でも有名だ。
EMSも例外にあらず
「ロシア郵便」は、ソ連時代の国民へのサービス提供システムからは離脱してしまった。以前のまま残っているのは、郵便局の行列、そして配達に理由なく時間がかかることと、職員の失礼な態度だ。それでも、郵便物のその他の公的配達機関はない。「ロシア郵便」は、標準的な郵便のほかに、急行配達サービスであるEMS(エクスプレス・メール・サービス)を提供している。ロシアではEMSも、通常郵便物と同様に問題がある。EMSで送る郵便物はみな、配達状況をサイトで確かめられるが、それでもやはり郵便物の配達遅延は、かなり度々おこる。
実は着いていたのだが…
アレクサンドラさんはモスクワからの小包を待っていた。モスクワ州にある彼女の都市までの荷物の配達日数は、EMSだと2日と約束されている。「2週間経って心配になり、サイトで配達状況を調べてみた」とアレクサンドラさんは語った。「追跡システムだと、モスクワを出たと表示されているが、私の都市には現れないまま。つまり小包は、途中のどこかで滞留している様子。そこでEMSのホットラインに電話したところ、郵便物捜索係に調査願を出したら、一ヵ月後には結果がわかります、とアドバイスしてくれた。
小包にはサンダルと、あれこれ夏用の品が入っていたが、もう夏も終わりに近い。そこで気休めに、近くの郵便局に行ってみた。長い行列に並んで、わかったのだが、小包はずっと前からここに届いていたが、この局には急行配達の職員がいなかったので、私の家には届けられなかったとのこと。その上、職員が一人だけなので、小包が到着したことをコンピュータに打ち込めなかったという。」
“プロレタリアート独裁”
職員の問題は「ロシア郵便」の最重要問題のひとつだ。寄せられるすべての不平のうち半数は職員への不満で、乱暴な態度、不親切、専門知識の欠如、あるいは単に職員数が足りないことなど。「ロシア郵便」の広報室によれば、職員の平均給与は、月給で300~400ユーロとのこと。これでは有資格者の青年専門家は、郵便事業に就職しようとはしない。郵便局の職員の大半は年金生活直前の女性たちで、新しい技術をやっとのことで覚えている有様だ。
税関でも順番待ち
外国のインターネット・ショップに商品を発注する人は、いつでも配達遅延に遭う。たとえば英国からの急行配達便EMSが二ヵ月半かかることもある。しかし国際配達の遅延の原因がすべて郵便局のせいというわけではない。荷物が一定期間、ロシアの税関に留まることもある。以前には、急行配達小包は、順番通りでなく特別扱いで検査されていたが、2011年からはそれがなくなり、他の荷物と同じように、自分の順番を待つことになった。このようなロシア税関規則の変更は、そうでなくても厄介な情況を、さらに困難にした。
小型小包検査強化の追い打ち
お正月期間は仕事休みのシーズン。配達期間はみな、数倍に延びる。「ロシア郵便」の公式データによれば、年間で紛失郵便物は1%以下とのことだが、遅延郵便物が何パーセントになるかについて、統計は何も語らない。
改善の兆しは見えない。2012年12月に税関当局は、郵便で送られる小型小包の検査を強化した。現在、郵便局は小包を、一枚の書類でまとめて提出するのではなく、一個ずつ、手続きしなければならない。これにより、小包1個の処理にかかる時間が数倍に増えた。お正月期間にはインターネット・ショップでの購入品が急増し、そのほとんどは小さな包装で送られる。しかし税関職員らは、そうした小包装で、たびたび麻薬や武器が送られてくるので、検査は強化しなければならないと主張する。
その結果、郵便局員の仕事量は、ちょうど郵便局の能率が低下したのと時を合わせて、増えることになった。人々が自分の購入品を待つのにどれだけの時間がかかるかは、推測するほかない。
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