2000年代末、それまでソビエト連邦軍の縮小版にすぎなかったロシア軍の主要な改革方針が最終的に定まった。ソビエト軍の特徴は、兵士間のいじめのケースが多々あっただけでなく、徴集兵に頼り、米国やその数多くの同盟国と戦争をする前に経済が「軍事路線」に切り替わることを当てにしていた。事実上、軍は大祖国戦争(1941年-1945年)と同じ形式の戦闘に向けて訓練していたが、これは新時代の諸条件や戦闘遂行の方法論には合致していなかった。
軍にはどのような改革が必要だったか
本格的な改革がなされたのがロシア連邦軍の兵員補充制度だ。国の政治的指導部は徴兵制度を残したが、兵役期間は一年に短縮された。軍に徴集される若者の数もかなり減らされた。ロシア連邦大統領令によって2021年秋には12万7500人が徴集された。年間で約25万人が徴集される計算だ。ロシア連邦軍の総数が約90万人であることを考えれば、徴集兵が占める割合は約28パーセントとなる。
こうすることで、予備役兵を動員することなく、常に戦闘準備のできた部隊や兵団を作ることができる。しかもロシア軍には予備役兵を動員する潜在力も保たれている。常に準備のできた部隊とロシア軍の別の部隊の違いは、前者には職業軍人しかいないという点だ。これにより年に2度徴集される新兵を教育する必要自体がなくなった。
もちろんソ連時代にも戦略ロケット軍は常に戦闘準備ができており、徴集兵の割合は比較的小さかった。対空・対ミサイル防衛部隊の班で戦闘当直任務に就く者は、徴集兵は少なかった。しかしそれまでこれが陸軍に適用されることはなかった。ソ連時代は予備役兵の動員なしに陸軍を使用することが想定されていなかったからだ。まして、平時には戦闘任務を遂行できない現役兵から成る(兵員の補充が不十分な)部隊や兵団も存在した。
ロシア軍にはどんな新兵器が必要だったか
ロシア軍の兵器の更新も重要だった。2000年代前半の武力紛争を通して、ロシア連邦軍が、最先端の軍(第一に米国)だけでなく、ソ連崩壊後の世界において彼らのパートナーとなったジョージア(グルジア)からも、装備の面でどんどん遅れをとっていっていることが明らかになった。これは兵器だけでなく、保障システム(例えば通信・偵察・照準システム)にも当てはまった。ロシア軍は運用期間が20年を超えている場合もあるソ連時代の兵器を依然として大量に有していた。
ロシア指導部が2014年から2015年までに採用した方針により、リアルタイムで戦える根本的に新しい軍を作ることが可能となった(それまでこのような軍を持つのは米国だけだった)。このために、容量の大きい強力な衛星通信回線が作られた。間もなく地上・海上・空中・宇宙の偵察システムが軍用回線を使って情報を送るようになった。これにより、各種の照準指示を迅速に攻撃システムに送ることができるようになった。
ロシア軍にようやく現代的な砲システム、装甲車、戦車、軍用機がもたらされた。陸軍はアクティブ防御システムを持つT-80戦車、歩兵戦闘車BMP-3、装甲兵員輸送車BTR-80、装甲車GAZ-2330「ティーグル」、戦術ミサイルシステム「イスカンデル」を、次いでT-90戦車をベースにした152 mm自走榴弾砲2C35コアリツィヤ-SVを大量に配備し始めた。同時にソ連製兵器の近代化改修も行われた。運用期限を延ばしただけでなく、リアルタイムで戦闘を行う能力を含め、兵器に新しい性質が与えられた。
技術的な飛躍だったのが、地上型と空中型の電子戦システム、海上発射型巡航ミサイル「カリブル」、極超音速ミサイルシステム(戦略ミサイル「アヴァンガルド」、空中発射型ミサイル「キンジャール」、海上発射型ミサイル「ツィルコン」)の開発だ。ロシアの多目的戦闘機Su-35、戦闘爆撃機Su-34は世界最高の兵器と同じ水準にある。我々は無人航空機の分野でしだいに先進的な地位を取り戻しつつある。
ロシア連邦軍の兵員補充と兵器更新の分野で先に取られた方針は、2015年秋以降シリアでその効果が証明されている。ロシアは実戦の条件下で最新兵器に仕上げをかけたほか、戦場での大隊戦術集団の連携も調整した。攻撃用を含め、各種のロボットシステムをシリアで使用した経験もまた重要だった。
こうして過去15年でロシアは現代的な軍を作ることに成功した。このことを、ロシアの敵となり得る国々は考慮すべきだ。
*筆者はCIS諸国研究所ユーラシア統合・SCO発展部長、工学博士候補