2018年、ロシア軍と兵器メーカーは2027年までのハイテク兵器製造に関する3000億ドルの契約を結んだ。軍は毎年新しい飛行機や戦車、艦船、潜水艦を得ることになっている。2022年も例外ではない。
来年ロシア軍が手に入れる兵器のうち、特筆に値するものをご紹介しよう。
1. 極超音速ミサイルを備えたジェット戦闘機
来年ロシア軍は極超音速ミサイルを装備したジェット戦闘機を導入する。ロシア空軍司令官のアンドレイ・ユージン中将が11月に公表した。
これは、極超音速ミサイルKh-47M2「キンジャール」(ロシア語で「短剣」の意)を備えたMiG-31ジェット戦闘機のことだ。
「MiG-31はソビエト時代のジェット戦闘機だが、新兵器を搭載する飛行機として選ばれた。数ある戦闘機から同機が選ばれたのは、これが他機よりも早く離陸でき、他機よりも高い高度に達することができるからだ」と21世紀技術推進財団発展部長のイワン・コノヴァロフ氏はロシア・ビヨンドに話す。
彼によると、MiG-31の平均飛行高度は地上25キロメートルだという。同機はこの高度から、最大2000キロメートル先の飛翔物体を「キンジャール」で撃墜できる。
「このミサイルの大きな特徴は、その速度と射程だ。簡単に言えば、現代のロシアや外国の防空システムで、2000キロメートル先の標的を撃ち落とせるものはない」と同氏は指摘する。
彼によれば、「キンジャール」の最高速度はマッハ10(時速約12240キロメートル)に達し、現代のミサイル迎撃ミサイル・システムでは迎撃できないという。
「防空ミサイルが空中で別のミサイルを迎撃するには、前者が後者よりも速くなければならず、かつ弾道上で捕らえなければならない。現行の防空システムでこれが可能なものは存在しない」と彼は付言する。
来年ロシア軍に納入されるミサイルは「キンジャール」だけではない。もう一つ特筆すべきなのが、海上発射式極超音速ミサイル「ツィルコン」だ。
2. 海上発射式極超音速ミサイル「ツィルコン」
11月下旬、ロシア軍は海上発射式極超音速ミサイル「ツィルコン」の試験を成功裏に終えた。海軍が検証したのは、これが戦艦に適合するか否かだった(これまでは潜水艦からの発射試験しか行われていなかった)。
「試験は非常に上手くいき、軍司令部は、数は公表していないものの、このミサイルを海軍に配備するよう命じた。したがって2022年からロシアの艦船はこの極超音速ミサイルを持ち始めることになる。しかし何らかの理由で潜水艦への搭載は2025年まで見送られることになった」と雑誌『独立軍事評論』のドミトリー・リトフキン編集長はロシア・ビヨンドに話す。
これらの兵器は目標に向かって秒速2.5キロメートル(音速の8倍)の速さで飛翔する。この新兵器はこの先10年はいかなる防空システムにも捕らえられないだろう。
「つまり、最も強力な弾頭を備えたこのミサイルは、その開発国に従来の核兵器に代わる新たな抑止力を授けることになる」とリトフキン氏は言う。
彼によれば、当初「ツィルコン」は10隻の戦艦から成る空母群に対抗する兵器として開発された。
「現時点で『ツィルコン』や『キンジャール』に匹敵するミサイルは存在しない。理由は簡単だ。外国軍は、2018年にプーチン大統領がロシアが極超音速ミサイルを開発したと発表してようやく、同様の兵器の開発に活発に投資を始めたからだ」とコノヴァロフ氏は話す。
限りない予算がつぎ込まれている(2022年、米国は約8000億ドルを軍事と新兵器開発に投入する計画だ)が、極超音速ミサイルを開発するには数年を要するだろう。
3. T-14「アルマータ」戦車
2021年11月、ロシア軍は132両のT-14「アルマータ」戦車を追加生産する契約を結んだ。
T-14「アルマータ」は世界で唯一の第4世代戦車と見なされている。専門家によれば、その戦闘性能は外国のライバル製品を大きく上回るという。
「この戦車には他の戦車が持たない特徴が満載だ。例えば、これは無人砲塔と自動照準システムを備えた唯一の戦車だ。いわゆる『戦術連携制御システム』を持つ唯一の戦車で、上空を飛ぶドローンと連携し、戦場に配備された砲ユニットや防空システムにデータや情報を送ることができる」とコノヴァロフ氏は言う。
「アルマータ」は世界初の「ステルス戦車」でもあり、赤外線や磁場、電波に捉えられにくく、新世代のアクティブ防護システム「アヴガニート」を装備している。新しい装甲板は対戦車砲弾を迎撃でき、「煙と金属」の防御幕を使って対戦車誘導ミサイルの目を眩ませる。
「この戦車には他の戦車にはない特徴がまだまだある。現時点で最も近い類似品は、フランスのネクスター社が開発している戦車だ。同社は現在『主要地上戦闘システム』プロジェクトに取り組んでいる。同社は『アルマータ』の性能を上回る滑腔砲を開発したと発表したが、まだ詳細は明かしていない。したがってフランスの戦車に何ができるのか知るには、しばらく待つ必要がある」とコノヴァロフ氏は締め括る。