あなたが(多分)知らないロシアの軍用車両

テック
ニコライ・リトフキン
 これらの車は90度の斜面を上ったり、重装備の兵士らを乗せて水上を走ったりできる。

ティーグル

 この車は巡回と偵察、歩兵の火力支援用に作られた。完全装備の兵士を一度に10人乗せることができ、普通の車が通れない道でも貨物を運べる。

 もっぱら軍用に作られているが、民間用に改変されたモデルもたくさんある。つまり、自宅の車庫に軍用車を持ちたい裕福な人に向けて、銃を外して組み立てられたモデルだ。

 ティーグルには20の派生モデルがある。水面の1メートル下を「泳ぐ」ことができ、700キログラムの装甲を載せていても最高速度時速140キロメートルで進める。地雷の爆発に耐えられるモデルもある。

 現時点でこの車は何度も改良を経ている。目標は、シリアでのロシアによる軍事作戦で本領を発揮した既存のシャーシをベースに、根本的に新しい装甲ボディーを開発することだ。

秘密のあるトラック

 ロシア軍にはヴィーチャシ2という車がある。防水カバーの下に装甲モジュールを隠したトラックだ(ロシア軍では「秘密のあるトラック」と呼ばれている)。 

 ヴィーチャシ2の特徴はその偽装された外観だ。一見すると普通のウラル4320トラックのようだが、中には最大16人の兵士を運べる装甲モジュールがある。この防御カプセルは、最も普及している5.45×39 mm弾と7.62×39 mm弾を使うライフルで近距離から撃たれても耐えられる。

 運転席の防御性能はさらに高い。7.62×54 mm弾を使うライフルで狙撃されても運転手を守れる。

 運転席と荷台のいずれのモジュールにも小さな銃眼が開いており、兵士が中から敵を撃つことができる。

 また、ヴィーチャシ2は地雷やTNT換算2キログラムの即席爆発装置の爆発にも耐えられる。

 ヴィーチャシ2はロシア内務省のために作られたウラル・トラックの発展版で、285馬力のエンジンと9段変速のギアを持ち、最高速度は時速90キロメートルだ。航続距離は1000キロメートルである。 

タイフーン

 この車は全地形・全天候対応の兵員輸送車で、マイナス50度からプラス40度の環境に耐えられる。兵員輸送(最大10人運べる)の他、タイフーンは自走式対空砲や無人機、クレーン、レッカー車などの兵器を運ぶこともできる。

 タイフーン級のトラックはすべてカマズの全輪駆動トラックをベースにしている。そのため、この15トンの車は雪だまりや砂丘、水の障害を踏破できる。

 タイフーンは市場で最先端の装甲板を有し、14.5 mm徹甲弾にも耐えられる。兵員用の小さな銃眼も開いており、中から敵を撃てる。また上部には遠隔操作できる機関銃を備えている。こうした特徴を持つため、タイフーンは動く前哨基地として機能し、行進中の部隊を守ることができる。

 車体に周囲にはカメラが取り付けられており、中の兵士は車から降りなくても周囲の様子を窺うことができる。

 タイフーンは空挺部隊や歩兵部隊用に、2軸車、3軸車、4軸車が作られている。

ヴォドニク

 ロシア語で「ヴォドニク」は「水中を泳げる者」という意味だ。GAZ-2937ヴォドニクは特殊な船体のおかげで水に浮かんで進むことができる。

 このモデルはロシア軍において機能性の高さで知られるBTR-80軽装甲車の特別な派生版だ。ヴォドニクは多目的車両で、全地形対応性能と機動性を併せ持っている。

 航続距離は1000キロメートルで、軍では兵員輸送や架設作業、貨物・機材トレーラーの運搬に利用されている。

ヴィストレル

 これもカマズをベースにした車だが、主に前線で活動する指揮官や衛生兵のために作られている。 

 ヴィストレル(「射撃」の意)はタイフーンと同じ等級の装甲板を持つ。14.5 mm徹甲弾に耐えられるだけでなく、戦闘地域で地雷原を走り抜くこともできる。

 しかしロシア軍における保有台数はあまり多くない。国防省が運用しているヴィストレルの数は現時点でおよそ100台だ。

 ヴィストレルはT-80戦車に匹敵する障害物突破能力を持つ。山岳地帯や標高4.5キロメートルの高地での試験も経ており、摂氏マイナス45度~プラス50度の環境でも問題なく使える。湿度98パーセントや風速30メートルの天候にも耐えられる。 

 ちなみに第二次世界大戦以降、ロシア軍が重きを置いているのは高い抵抗力と頑丈さだ。独ソ戦を踏まえた新たな兵器製造の基準ができた。新時代の兵器は最も過酷な環境でも動ける性能を示さなければならない(ロシアの軍事試験について詳しくはこちら)。

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