ロシアで3月末に導入された公式の外出自粛令を前に、弾薬と野球バットの売上が急増し、弾薬は130パーセント、バットは30パーセント増となった。さらに、外出自粛令が出て5週目までに、オンラインショップで刃物を購入して宅配で受け取る人が急増した。
オンラインショップ「オボローナ30トーチカ・ルー」(Oborona30.ru)の店長、セルゲイ・サドロジヌイさんの見積もりでは、ナイフの売上だけで300~400パーセント伸びたという。しかも、人々は大挙して催涙スプレーや唐辛子スプレーを買い占めている。彼の店で最近よくあるのは、最大20本の催涙スプレーを買い、さらに空気銃も買っていくというものだ。これまでは配達員一人だけですべての商品を客の家に届けられていたが、パンデミックが始まって以来、この仕事は3人がかりでやっとこなせているという。
ライフル、ショットガン、弾薬
外出自粛令が発令されてルーブルが下落するまで、モスクワ郊外の民間銃砲店「ノヴォ・オブニンスク」での散弾銃の価格は、最も単純な銃で7500ルーブル(約100ドル)、イタリアのベネリ社の製品で40万ルーブル(約5000ドル)だった。
「危機はロシアでの狩猟シーズンの開始と重なった。実際、外出自粛令が出される以前に猟銃と空気銃の売上が急増した。主に散弾銃とその弾薬が売れた」と「ノヴォ・オブニンスク」のオーナーの一人、アルトゥールさんはロシア・ビヨンドに話す。
彼によると、同店はまだ前年同時期の売上と比較した分析は行っていないという。
「売上は明らかに外出自粛令が出る前に比べて何倍も伸びた。今店を閉めており、ナイフもバットも催涙スプレーも宅配していない。サイト上での価格も上げていないし、今のところそうするつもりもない。数字が明らかになるのは、5月に外出自粛令が解かれた時だろう」と彼は語る。
今のところ、「ノヴォ・オブニンスク」やそのライバル店では、AK用の7.62×39mm弾20発入りの標準的な箱は最低1200ルーブル(約1700円)、トゥーラの銃器メーカーの散弾銃は最低8600ルーブル(約1万2千円)、新型のAK-12の民間モデルは6万9000ルーブル(約10万円)で売られている。
欧米と同じく
ロシアの治安関係省庁の情報提供者がロシア・ビヨンドに語ったところによれば、武器の投機売買が起こったのは、コロナウイルスによるパニックで明日が見えないことに加え、米国の銃砲店で人々が同じように略奪者から身を守るために弾薬を求めて行列を成しているニュース映像が流れたことが原因だったという。
「より優れた欧米の慣習に倣おう、武器とトイレットペーパーを買い占めよう、ということだ。どうやら、人々は恐怖を感じると強盗や略奪者から銃で身を守る準備と、尻を拭う準備をするようだ」とこの人物はロシア・ビヨンドに語る。
しかも、米国人の購買動向は実用主義的で、過去の経験に基づいている。こう考えるのは武器を所有するモスクワ住民のマクシムさんだ。彼は十代の頃米国に留学していた。
「米国の大半の大都市は海岸に位置している。5年に1度彼らは天災(洪水やサイクロン)に見舞われ、その度に街のインフラをすべて再建しなければならない。そこでコロナウイルスのパンデミックが始まった際、米国人は災害に備えて缶詰やトイレットペーパー、銃器と弾薬などの必需品を買い占めたのだ」とマクシムさんは話す。
彼もまた、外出自粛令が出される直前にモスクワ郊外の銃砲店へ向かい、ロシアでは2週間と続かない春の狩猟シーズンに備えて弾薬を買い占めたという。
「弾薬を買うだけで一時間行列に並んだ。過去10年これほどの行列は記憶にない。壁にしか当たらないようなトルコ製の粗悪品も含め、すべての武器が買われていった」とマクシムさんは語る。
彼によれば、彼の前に並んでいた男性は非致死性拳銃の弾薬を1000発(ロシアの法律で個人が一度に運搬することを許されている最大数)も買い占めていったという。