試作止まりの恐ろしいロシア製兵器は何か

 これらのモデルは一度開発されて世界を震撼させたが、謎めいたまま忘却の彼方へと消えていった。

 どの兵器も、量産される前にいくつもの軍事試験を経る。ロシアの武器庫には、国の厳しい試験をクリアできなかったものの兵器開発史上の傑作であり続けている、独特かつ唯一無二の兵器システムが数多く存在する。

 

レーザー銃搭載輸送機

 70年代半ば、ロシアの技師らは、映画『スターウォーズ』シリーズのXウィングと同じ方法でジェット機を撃ち落とすことのできるロシア初のレーザー兵器を開発しようとしていた。

 初試験用に開発者らは巨大な輸送機Il-76MDを選んだ。こうしてよく知られた航空機は、レーザー銃を搭載した全く新しい“鳥”になった。

 前部には通常のノースコーンの代わりに、照準ライダー用の光線照射可変砲塔が取り付けられた。さらにこの航空機は、機体の底部にレーザー兵器用の追加の発電機を備えた2つの大きな格納室を有していた。

 だが当時の技術では、さまざまな気象条件下で金属製の目標を爆破できるだけのしっかりとした安定的なレーザーを照射することができなかった。70年代のレーザーが飛翔目標を破壊するためには、雨や霧などが一切ない快晴の天気が必要だった。加えて、機体底部の追加の2機の発電機をもってしても、1発毎のエネルギー消費量は凄まじく、2、3発撃てばレーザーは切れてしまった。

 このようなわけで、軍の司令部はレーザー計画を将来に延期し、当時有望だった他の計画に投資し直すことを決めたのであった。

 

Su-47ベールクト

 Su-47「ベールクト」ジェット戦闘機の試作機は20世紀末に登場し、ロシア空軍初の前進翼を持つ航空機となった。

 この革新はジェット機に優れた敏捷性と操縦性を授けた。機体のデザインのおかげで、パイロットは低速での新次元の操作性を手にした。さらに複合材料により、当時のレーダーでは大変捕捉しにくいものとなった。

 試作機は軍事的に潜在性の高いものだったが、これらの明るい側面も、この戦闘機を嘲笑っているかのようだった。というのも、この戦闘機の翼と機体は高価な炭素繊維強化プラスチックでしか作れず、量産すればとてつもない予算の負担は避け得なかった。Su-47の維持費だけでも空軍にとって大きな負担となることは言うまでもない。

 このようなわけで、この戦闘機はロシア空軍の量産戦闘機たり得ないことを運命づけられたが、のちに第4++世代ジェット戦闘機Su-35や、ロシアで最新の第5世代ジェット戦闘機Su-57に用いられた最新軍事テクノロジーを試すのに完璧な試験機となった。

 唯一現存するSu-47はモスクワ郊外のグロモフ飛行調査研究所で見ることができる。

 

ロシアで最も低車高の戦車

 60年代半ば、ロシア軍の技師らはミサイル砲を搭載した「不可視」戦車の開発に取り組んだ。当時レイ・ブラッドベリのSF小説の技術はいずれも実現不可能だったため、開発者らは車体の大きさに焦点を絞った。こうしてロシア軍はオブエクト775と呼ばれる最も低車高の戦車を得た。

 新戦車は、四六時中砲塔内で何トンもの金属、エンジン、その他の装備に囲まれて過ごさなければならない乗員の数を、標準的な3名から2名に減らした。この工学的決断により、この戦車は当時の他の戦車の車高と比べて1メートル低い170センチメートルにまで押し縮められた。

 しかし、当時としては大変強力で破壊力抜群のミサイル砲を搭載していたにもかかわらず、この戦車の低い車高はかえって乗員の視野をかなり狭めることになり、いかなる障害物も車体と装備にとって深刻な問題となってしまった。

 当時のミサイル誘導レーザーは、障害物や地面の盛り上がりは言うに及ばず、煙にさえ遮られてしまうほど繊細なものだった。このように、潜在的に強みであるはずの諸特徴が弱点に変わってしまい、開発は忘却の彼方に葬られたのである。

 今日、この戦車は一台だけ現存しており、モスクワ郊外にあるパトリオットパークの戦車博物館で見ることができる。

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