温暖化による道路崩壊と飲料水減少

ザバイカリエ地方=

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エフゲニー・エパチンツェフ/タス通信
 学者らの予測によれば、大規模な永久凍土の融解および雪氷圏の崩壊が、今後20年でロシアの北極圏およびシベリアの浸水に発展する可能性があり、さらに新しい病気が発生し、インフラが崩壊する可能性もあるという。

 マリア・アナニチェワ氏は、氷河学者。研究対象は、国土の3分の2が依然として永久凍土のロシアを含む、世界のいたるところで徐々に消えている氷河。

 これはロシアにとって何を意味するのか。建物と道路が崩壊するリスクの高まりだと、ロシア連邦水文気象環境監視局・ロシア科学アカデミー地球環境・生態研究所の専門家は考える。ロシアの永久凍土域には約8万キロの自動車と鉄道、91ヶ所の空港があると、ロシアの交通インフラ企業グループ「トランスポルトナヤ・インテグラツィヤ(交通統合)」のスヴェトラーナ・ヴォロンツォワ第1副社長は話す。

 アナニチェワ氏によれば、氷河はすぐに気候に反応するわけではないという。最初に熱を蓄積し、次に目に見える反応が始まる。つまり、人間が地球の気温上昇を抑えることができたとしても、氷河はとけ続ける可能性があるということである。

 ロシアで観察されている氷河の多くは、すでに最小限になっている。「積雪、積氷の速度はすでに、溶解の速度よりも遅い」とアナニチェワ氏。

 

水が減り、病気が増える

 もう一つ問題がある。それは淡水貯水量の減少である。山岳氷河の融解は何よりも、川に流入する水量に影響をおよぼす。最初は増えるが、氷河が小さくなり、水量も減る。ロシアの極北ウラル地域の小さな氷河は、ここ10年でかなりとけており、人々は淡水源を失った。

 また、永久凍土には炭疽症を含む、危険な病気の病原体が保管されている。2016年のヤマル半島での猛暑は、75年ぶりの病気の激発につながり、約90人が入院した。永久凍土の溶解で、バクテリアやウイルスが、どんどん脅威になっていき、その中には人間にとって新しいバクテリアやウイルスもあるかもしれないと、学者らは考える。

 

サンクトは浸水に備える

 アナニチェワ氏は、北緯領域の気温が地球全体よりも早く上昇していることを指摘する。シベリアとロシア極東の北部の山岳氷河で温暖化とそれに対する反応が感じられるようになったのは、20世紀後半。長きにわたり、比較的安定していたが、21世紀に近づくと、変化が明らかになってきた。

 また、北極すなわちグリーンランド、ゼムリャフランツァヨシファ(フランツ・ヨーゼフ諸島)、ノヴァヤ・ゼムリャ、その他の島や領域で、氷冠の大規模な縮小が起きている。ロシアでは、世界的な海面上昇がサンクトペテルブルクの脅威になっている。

 ウラル連邦大学気候・環境物理学研究所の研究者の予測によれば、浸水のリスクのある領域には、ロシアのアルハンゲリスク州、ムルマンスク州、コミ共和国、ヤマロ・ネネツ自治管区、クラスノヤルスク地方、サハ共和国を含む8地域が入る。

 研究所の職員であるコンスタンチン・グリバノフ氏は、気候的な浸水が今後50年以内に起こるかもしれないと考える。グリーンランドと南極の氷床もとけており、ヨーロッパの一部が浸水する可能性もあるという。

 「中央ウラル地方では主に、海抜が約200メートル。陸上のままになる。だが気候は異なるものとなり、現在の暮らしも変わる」とグリバノフ氏。

 

温暖化加速も

 融解プロセスは均一ではない。ロシアの北極圏では、アナニチェワ氏によれば、氷河が縮小し、バレンツ海とカラ海の間のノヴァヤ・ゼムリャで氷山が崩れている。セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島の氷帽は今のところ、安定している。スピッツベルゲンでは、逆に増大している氷河もある。今のところ、この状況を説明することは難しいが、この領域の降水量に関連している可能性があるという。

 北極の海氷が勢いよく溶け、凍っていない海域を広げる中、北極は日光を反射しなくなり、暗くなってきている。これは地球をさらに暖める。また、永久凍土はメタンすなわち強力な温室効果ガスを中心とする炭素を大量に閉じ込めているため、温暖化を引き起こすことになる。永久凍土がとける勢いが強いほど、より多くのメタンが大気中に流入し、気候変動を強める。