最後の高濃縮ウランを返却

セルゲイ・ピャタコフ撮影/ロシア通信
 ロシアとポーランドの核技術者らは、国際原子力機関(IAEA)の監理のもと、研究炉からの高濃縮ウランの回収を完了しつつある。

 傑出した学者で二度のノーベル賞受賞者であるマリア・スクウォドフスカ=キュリーの名を冠するポーランドの研究炉「マリア」から、高濃縮ウランの残余分が、2016年末までに回収される。ポーランドの「エヴァ」と「マリア」の両研究炉からロシアへ返却された未使用および使用済みの高濃縮燃料の総量は、すでに645キログラムを超えており、これは、国際的な専門家らによってロシア研究炉燃料返却プログラム(RRRFR)における「最大のアクション」と評価された。

 

核燃料の不法な拡散を阻止

 この露米共同プログラムは、核の脅威の低減を目指すグローバル・イニシアティヴの一環であり、核物質およびその派生物質の不法な拡散を阻むために研究炉の高濃縮核燃料を生産国へ返却することを目的としている。共同作業の実現は、露米のウランの輸入国の多くが自国の核施設の確実な防御を保障できていないとの懸念に起因している。ふつう、研究用核施設では、ウラン-235濃度80%以上の高濃縮燃料が使用されている。

 大量破壊核兵器がテロリストらの手に渡ることを危惧して、アメリカ政府は、カザフスタン(1994年)、イラク(1993~1994年)、グルジア(1998年)からの高濃縮ウランの回収を組織した。こうした動きや深刻な問題意識を背景として、1999年、ロシアで生産された核燃料を返却する露米共同プログラムが立案された。

 ロシアの設計で建造された研究炉を国内に有する17ヶ国のうち、14ヶ国が、同プログラムに参加している。1999年から2002年にかけて、IAEA、ロシア、米国の専門家らは、研究炉を同プログラムに組み込むための大がかりな準備作業を実施した。2004年5月28日、ロシアで生産された核燃料のロシアへの返却の面での協力に関する協定が露米間で調印され、これが、同プログラム実現のための法的基礎となった。

 二者または三者の協定に基づいて、ロシアへは、すでに、チェコ、ラトヴィア、リビア、ポーランド、ヴェトナム、ハンガリー、ルーマニア、旧東ドイツ、ブルガリア、カザフスタン、ウクライナ、ウズベキスタンの研究炉から、未使用および使用済みの高濃縮核燃料が、再処理および技術的保管のために返却されている。ロシアは、これらの国の研究炉から2529キログラムの核燃料を自国へ戻す義務を負った。

 

原子爆弾に換算すると…

 2015年末の時点で、800キログラムの新しい(つまり未使用の)高濃縮核燃料と1350キログラムの使用済みの(原子炉から抽出された)高濃縮核燃料が、ロシアへ返却されている。比較評価によれば、核分裂性物質がそれだけ(2150キログラム)あれば、80発以上の原子爆弾が製造できる。

 同様の作業は、1996年から米国によっても実施されている。2014年12月までに、米国へは、オーストリア、ブラジル、チリ、コロンビア、デンマーク、ギリシャ、イラク、メキシコ、ポルトガル、韓国、スペイン、スウェーデン、タイ、台湾、トルコの研究炉から、高濃縮核燃料が返却(または低濃縮核燃料の状態にまで稀釈)された。最終目標は、これまでに研究目的で供給された1390キログラムの高濃縮核燃料を米国へ返却することである。

 ロシア研究炉燃料返却プログラム(RRRFR)の全体的な狙いは、高濃縮ウランの二重使用のリスクの除去および核兵器不拡散体制の強化である。同プログラムが、2012年と2014年の核セキュリティ・サミットで関心の的となり、近くワシントンで開かれる同サミットの議題に含まれていることも、偶然ではない。