ウクライナとの宇宙協力が停止して

ロイター通信撮影

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ウクライナ南東部の問題やロシアへのクリミア編入があった昨年前半から、ロシアとウクライナの二国間宇宙協力は凍結されるようになった。どのようなプロジェクトに影響がおよんだのだろうか。

 ソ連崩壊後、ウクライナの宇宙関連企業は、ロシアとの協力にほぼ集中してきた。平和的な宇宙プログラムや国際宇宙ステーションの活動のための製品については、ロシアからの発注は依然として続いている。しかしながら、多くのプロジェクトは危機にさらされている。ウクライナの企業は昨年、打ち上げロケットおよび宇宙機をロシアからまったく受注していない。 

 

海上発射

 「シー・ローンチ(海上発射)」は、世界で唯一の浮体式宇宙基地およびその打ち上げの同名の国際コンソーシアム。このプロジェクトは、日本製石油採掘リグを改造した発射台「オデッセイ」から、ウクライナ製中型宇宙機打ち上げロケットを発射するものだった。

 このプロジェクトに参加したのは、アメリカの航空機会社「ボーイング」、ロシアのロケット宇宙企業「エネルギヤ」、ウクライナの設計局「ユジュノエ」と工場「ユジュマシュ」、ノルウェーの造船会社「アーカー・ソリューションズ」。

 ウクライナはロケット「ゼニト3SL」の1段目と2段目の製造を担当。部品の7割がロシア製だった。しかしながら2009622日、国際コンソーシアムは破産を宣言し、201041日、ボーイングがエネルギヤにプロジェクトの運営権を渡した。昨年1224日、ロシアはプロジェクト「シー・ローンチ」をウクライナと継続することが不可能であること、ブラジルと協力する可能性があることを伝えた。ブラジルはウクライナの支援を受けながら、アルカンタラ射場でプロジェクト「サイクロン4」を実現させようとしたが、4月、プロジェクトからの撤退を明らかにした。

 

地上発射

 「ランド・ローンチ(地上発射)」は、シー・ローンチの設備などを最大限に活用するもので、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から宇宙機を打ち上げるために、「ゼニト3SLB」と「ゼニト3SLBF」を使うことを提案している。

 2008428日から201391日までに、このプロジェクトでゼニトは6回打ち上げられ、すべて成功した。ゼニトはより安価で環境に優しいロケットとして、バイコヌール宇宙基地の「プロトンM」に徐々に置き換わると考えられていた。

 ウクライナ側は、シー・ローンチとランド・ローンチが「エア・ローンチ(空上発射)」のプログラムの一環として復活する可能性も排除していない。このプログラムでは、「ゼニト」の打ち上げが、最大積載能力を持つ輸送機An-225「ムリヤ」から行われることが想定されている。

 

ロコット

 最大2トンの貨物を近地球軌道に投入できる軽量級三段式打ち上げロケット「ロコト」を製造しているのは、フルニチェフ国立宇宙科学・生産センター。ウクライナの「ハルトロン」社は、制御システム用の設備を納入している。

 ロコトの主な発注者は、ロシア連邦国防省であった。この主な長所は低コスト。製造と打ち上げを含めて2000万ドル(約24億円)ほどである。だが国防省は、納入を断念せざるをえない。ウクライナ側がロシアに二重用途技術品を供給することを制限したのがその理由。

 

ウクライナの宇宙飛行管制センター

 ロシアへのクリミア編入後、ウクライナはエフパトリヤ近郊のビチノ村に位置する国家宇宙資源管理・試験センターを利用できなくなってしまった。ここには、ウクライナの宇宙機シリーズ「シチ」の制御卓や、まだ打ち上げられていないウクライナ初の通信衛星「リビジ」の制御システムがある。

 ロシアは国家宇宙資源管理・試験センターの設備を、ウクライナに返却していない。現在はロシア航空宇宙防衛軍チトフ宇宙試験センターの管理下に置かれている。ウクライナはリビジの管理機能を、キエフの宇宙会社「ウクルコスモス」に渡した。ウクルコスモスの敷地には、新たな管制センターが創設される予定。それまでのリビジの制御については、ウクライナはイタリアのステーションを借りて行おうとしている。ウクライナは衛星コンステレーションを管理するために、西部フメリニツィカ州に施設を創設しようとしている。