エボラ治療で期待の抗ウイルス薬

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ウイルスや感染症の多くに効能のある新抗ウイルス薬を、ウラル地方の研究者が開発した。

 ロシアの薬局で今年末までに、作用の幅広い抗ウイルス薬「トリアザヴィリン」が発売される。インフルエンザ・ウイルスで引き起こされる疾患だけでなく、他の感染症にも効能がある。開発者はウラル連邦大学化学・技術研究所の研究者。

 薬はクリミア・コンゴ出血熱、リフトバレー熱、ウエストナイル熱、動物に危険なウイルス感染症に対して有効である。トリアザヴィリンは、人類がすでに150年ほど使用しているアスピリンの運命をくり返す可能性があると、研究者は考える。

 

海外の関心

 ロシア医療科学アカデミー研究員、インフルエンザ研究所所長、生物学博士であるオレグ・キセリョフ氏はこう話す。「この薬には確かに、固有の薬理学的特徴がある。現在、さまざまな薬物標的に向けられた類似薬剤を5種類調査している」

 トリアザヴィリンの製造業者は「メドシンテス工場」。年間生産量は1200万パックほどになる可能性がある。 1年目はロシア国内の限定販売で、処方箋提示が条件となる。将来的には世界市場でも販売する計画。

 キセリョフ氏によると、海外ではすでに、トリアザヴィリンへの関心が示されているという。アメリカは2年前、ウエストナイル熱に効果があることを試験で確かめた。9月中旬には世界保健機関(WHO)の会議で紹介された。「エボラ出血熱への抗ウイルス薬比較分析で、トリアザヴィリンは上位だった。現在世界市場にある薬の中で有数の薬。毒性学、治療濃度域において優れており、重病患者に静脈内投与することが可能で、他のさまざまな療法と合う」とキセリョフ氏。

 

主なメカニズム

 この新薬は特定の作用機序を有するグループ「トリアゾロ・トリアジン」に属し、ウイルスにとって重要な初期の細胞感染段階で阻害する。トリアザヴィリンの分子はウイルスのタンパク質と結合しながら、ウイルスを成長不能にし、また疾患のあらゆる段階で身体を保護できる。臨床診療でこのような薬剤が使用されたことはなかった。今日の抗ウイルス薬のほとんどは、人の免疫を維持する、または疾患の症状を解消することを目的としている。

 「トリアザヴィリンは具体的な生産、市場での販売まで、ロシアの科学的アイデアを高める例。ウラルの科学者ヴァレリー・チャルシン氏とオレグ・チュパヒン氏は、有機合成物トリアゾロ・トリアジンとトリアザヴィリンの基礎の開発に対し、ロシア連邦賞を受賞した」と、「ウラル生物医学集積」監査役会の会員で、ロシア下院(国家会議)健康保護委員会の委員であるアレクサンドル・ペトロフ氏はロシアNOWに話した。

 

低毒性

 トリアザヴィリン開発グループの一員である、ウラル連邦大学化学・技術研究所のウラジーミル・ルシノフ所長によると、リバヴィリンという作用の幅広い抗ウイルス薬が世界の医薬品業界にすでに存在している。ただし、毒性があり、赤血球に蓄積するという。例えば、中国で重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時、患者にこの薬の大量の単回投与が行われた。ウイルスを阻害することはできたが、患者の肝臓や造血臓器は害された。一方で、トリアザヴィリンの毒性は非常に低い。

 「試験で投与量を増やしたが、トリアザヴィリンはマウスを殺さなかった。これは低毒性を示している」とルシノフ所長。

 

開発に20

 マウスおよび霊長類での臨床検査を長年行った後で、人の治療に使用。中度のインフルエンザ患者に対する有効性を調べる臨床試験が、サンクトペテルブルクのインフルエンザ研究所で成功した。1990年代初めから20年以上行われた開発、基礎研究の結果である。

 ロシアでの豚インフルエンザ蔓延防止がテーマだった2009年、ヴェロニカ・スクヴォルツォワ保健相によってこの薬が初めて高く評価された。保健省から支援を受けたこともあり、その後2相試験および3相試験に合格し、エボラ出血熱の治療および予防内服の必要性に関連して、登録された。

 トリアザヴィリン研究に貢献してきた主な機関は、ロシア科学アカデミー・ウラル支部ポストフスキー有機合成物研究所(エカテリンブルク市)、エリツィン・ウラル連邦大学、ロシア連邦保健省インフルエンザ研究所、軍事医学試験研究所(サンクトペテルブルク市)、ロシア連邦国防省ウイルス学センター(セルギエフ・ポサード市)。