クリム・チュリュモフ氏=AP通信
-チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への探査機「ロゼッタ」の到着をどう評価していますか。
このミッションはまだ完了していないので、最終結果を待たなければなりません。今すでに言えることは、大成功ということです。探査機が彗星から10キロメートルほどのところまで迫った時、その表面の起伏に関する詳細な情報を得ました。ヨーロッパの関係者はすぐに彗星儀をつくり、小さなモデルを我々にプレゼントしてくれました。
主な成果はモジュール「フィラエ」の彗星の核への到達です。これは火星、金星、その他の惑星への到達よりもはるかに難しいのです。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のすべての特徴を得て、重力を計算しました。ですがモジュールが表面に到着した時、それを表面で維持するためのハープーンが起動しませんでした。
-複雑な技術が彗星まで到達できたのに、ハープーンが動かなかったのですか。
モジュールは10年間宇宙にありました。小さな連結部、継ぎ手が互いに太陽プロトンの影響のもとで溶接されたかもしれません。太陽風はロゼッタに当たり続けていましたから。それがハープーンのメカニズムに影響した可能性もあります。またはフィラエが最初に3本の脚のうちの1本で到着した可能性もあります。ハープーンは少なくとも2本が着地しないと起動しません。
彗星にはほとんど引力がないため、モジュールは軽く接触しただけで500メートル飛び、その後また表面に接触して、飛びました。3度目の着地でようやく止まったのです。人間であれば宇宙速度で彗星の軌道に飛ぶでしょう。フィラエの電池の問題をすべて解決した後に、通常の稼働を期待できるのです。
-省エネでも地球にデータは届くのですか。
フィラエには高精度装置が10台装備されており、うち8台が起動しました。つまり課題の80%が遂行されたわけです。これは大成功です。この実績のおかげで、将来的には、地球にとって危険な小惑星や彗星に向けて、核弾頭を搭載したミサイルを緊急的に発射させることが可能になります。
-チュリュモフさんは1960年代の時点で、彗星の研究によって地球誕生のプロセスを解明することができると言っていたとのことですが。
彗星には複雑な有機化学があります。ヴィルト第2彗星の尾部ではグリシンが見つかりました。この物質がなければ脳や脊髄は動かず、人間も生きていることができないというのは、よく知られています。海水の同位体組成が彗星の核の水の組成と同じであることは、すでに証明されています。ある理論では、多数の彗星が地球に降り注いだことで、地球に水があらわれたと言われています。その後、DNAの二重らせんが生まれたと。
-現在はどのような研究をしているのですか。
彗星のスペクトルの研究を続けています。アメリカ、メキシコ、チリ、ウクライナの望遠鏡から得られた画像および動画が数万件集まりました。すでに多くが処理されていますが、それでもまだまだ研究材料は残っています。
スペクトルは彗星の指紋のようなものです。似ていても異なるのです。最新式の望遠鏡によって、100%の解像度の画像を得ることができます。レンズの弱い望遠鏡であっても、優れたカメラを装備することで大量の情報を獲得することが可能なのです。宇宙望遠鏡は現在、宇宙の果て、130億年以上前に大きな爆発で生じた物体を見られるほど発達しました。
-チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の発見については、いくつかの伝説があります。実際にはどのような状況だったのでしょうか。
発見したと理解できる前に、観察してから1ヶ月ほどが経過していました。他の物体を観察していて、5枚の乾板で新しい彗星を確認したのです。うち4枚では端部に、1枚では望遠鏡のあつかいの誤りにより、中心部にありました。最初は乾板の傷だと思っていました。
現在ロシアの修道院の長司祭になっている天文学者のニコライ・ベラエフ氏が、正確な軌道を算出し、その後我々が世界の関係者に電報を送ったのです。関係者は指定座標で彗星を確認した後、発見を承認する電報をこちらに送ってきました。そうして発見者の名前が彗星についたのです。
-一緒に彗星を発見したスヴェトラーナ・ゲラシメンコ氏とは、今でも連絡を取り合っているのですか。
もちろんです。電子メール、ウェブカメラで、いつも連絡を取り合っています。発見に関する会議に出席するため、ゲラシメンコ氏のいるドゥシャンベ(タジキスタンの首都)に行きました。ゲラシメンコ氏からとても美しいスカーフをプレゼントしてもらいましたよ。
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