ヴァシリイ・ソルキン撮影/ WWF-Russia
ウスリー・タイガで1年半前、衰弱したアムールトラ5頭(雄3頭、雌2頭)が地元住民によって発見され、そのまま沿海地方アレクセエフカ村のトラ・リハビリ・再帰センターに送られた。その後大統領プログラムによって、今年初めに自然に帰された。ウスチンはそのうちの1頭である。ウラジーミル・プーチン大統領は自らクゼイを自然に帰した。
大統領希少動物研究プログラムのヴャチェスラフ・ロジュノフ総責任者によると、「トラは逃げたわけではなく、領域を広げているだけ」だという。動物、特に雄は新しい領域を探るため、ウスチンが冬にロシアに戻る可能性もある。
世界自然保護基金(WWF)および国の支援を受けている自律非営利団体「アムールトラ」の専門家は、リハビリ・センターで飼育されているトラが人を恐れないという状況と、既存のリハビリ・プログラムの妥当性について考える。
「トラが森に残っていることが成功」と話すのは、WWF極東の調整役パーヴェル・フォメンコ氏。人に近づくトラは”問題児”である。人間に飼育されたトラを自然に帰すための、統一された、科学的に根拠のある実践が、ロシアにはまだない。
トラのリハビリセンター
ボーリャ、クゼイ、ウスチン、イロナ、スヴェトラヤの5頭の母親は、密猟者によって殺された。この5頭も他のトラと同様、飢えまたは寒さで死ぬところだった。国際動物福祉基金(IWAF)のデータによると、極東では毎年最大40頭が殺害されている。
「(5頭が送られた)リハビリ・センターは巨大な檻で、人は入ることができない」とロジュノフ総責任者。2007年に始まった大統領希少動物研究プログラムの一環として、ロシア地理協会の資金でセンターは創設された。プログラムの運営者として選ばれたのは、モスクワのA.N.セヴェルツォフ生態・進化研究所。ロジュノフ総責任者は研究所の副所長を務めている。
リハビリ・センターの課題は、トラが「狩りの行動、人との関係、自分との関係を構築」する部分の支援。「センターの課題はこのように、自然に戻れるようなエサやりと飼育になる」とロジュノフ総責任者。
「科学的密猟」
フォメンコ氏はこのセンターの活動をトラの「実験」、「科学的密猟」と呼ぶ。「簡単な例をあげてみよう。トラは小さな檻の中で飼育される。トラが自分でエサをとれるように、檻には生きたトナカイが放たれる。だがトナカイは一定時間自動車で輸送されるから、トラは自動車の音を聞くとエサだと思って反応する。トラは真っ先に自動車道に向かう」。自然に帰されたトラは「エサをとろうと自動車道に向かう」。すでに1頭は自動車に突進したという。
自律非営利団体「アムールトラ」のセルゲイ・アラミレフ代表によると、リハビリの主な課題として、野生動物に狩りを教えることが、主な間違いだという。トラは生まれながらの狩猟動物であるため、自然界で雌は子どもに狩りを教えず、それができるようになるまで育てるだけだという。「トラは2歳ほどで大人になり、自立する。そのため、人間のあらゆる活動および人間自体を恐れるようにすることが、リハビリの真の課題。このように育てられた動物だけが自然界でうまくやっていける」
動物園とリハビリ・センター
人間に発見された子どものトラを自然に帰せるように、センターでより正しくリハビリしなければならない、とロジュノフ総責任者が話す一方で、トラの年齢別に取り組み方法を変える必要がある、と極東の専門家は話す。
「自然条件での生活が長いほど、人に慣れにくい」とアラミレフ代表。そのため、生後半年未満のトラについては、「センターで結果不明なリハビリに数百万ルーブル費やすよりも、動物園に引き渡して個体数を増やす方がずっと効率的」と考える。
アラミレフ代表とフォメンコ氏は、国家的な方法の考案でリハビリをめぐる状況を修正できると考える。「2~3歳でリハビリ・センターに送られたトラを野生のトラにすることは可能。だがこの技術(A.N.セヴェルツォフ生態・進化研究所のプログラム)でリハビリされたトラが自然界で生き残れる確率はゼロ」とフォメンコ氏。
「明確な決まりが必要。3ヶ月のトラなら動物園、1歳ならリハビリ・センターと。リハビリは何らかの定められたプログラムに沿って実施されるべき。また、トラをいかに、どこに放すかというメカニズムおよび法律も必要。誰が、どう決定するのか。トラが生き延びれるような条件の場所であるか。こういったことに指南書が必要」とアラミレフ代表。
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