ダリア・ケジナ撮影
今月9日から12日までエカテリンブルグ(モスクワの東1400キロ)で開催されている毎年恒例の見本市「イノプロム」では、出展された新世代の路面電車Russia One(R1)が、「レールを走るiPhone」という異名をとった。最新技術を駆使したこのトラムウェイは、ウラル輸送機械製作工場(産学企業「ウラル車両工場」の傘下)が、設計ビューロー「アトム」と共同で開発した。
「宇宙的なトラム」のデザイン
風変りな形をした超モダンな黒い車体の低騒音トラムウェイは、都市の公共交通機関というよりは巨大な黒水晶かSF映画の高速列車を連想させるが、メーカーは、自社の製品を「世界初のビジネスクラスの路面電車」と呼んでいる。
この「宇宙的なトラム」のデザインを手がけたアレクセイ・マースロフさんは、こう語る。「市民が抱いている都市交通のイメージを改善してロシア内外の都市交通のレベルを向上させることが私たちの課題でした。私たちは、アルストム、ボンバルディア、シーメンスといった超大手企業としのぎを削っています」
このスーパー・トラムは、2015年2月にテストが開始され、2016年初めまでに量産が軌道に乗る予定で、エカテリンブルグに続いて、オムスク、モスクワ、そして、外国にもお目見えするという。
ユニークな最新装備
ダリア・ケジナ撮影
このトラムは、正式な名称は「ニュー・スリーセクション・ノンステップ・トラムウェイR1」で、Wi-Fi、GPS、衛星ナヴィゲーション・システム、ヴィデオカメラ(サイドミラーに代わる)、エアコン、そして、その町の気候条件に応じて明るさを変えられる特殊なランプを装備している。
手すりは黴菌の繁殖を防ぐ医療用の銅で作られており、浄化用の特殊なクウォーツ・ランプが一夜で客室全体を殺菌するので、乗客が病原菌に感染するリスクが抑えられている。
Russia Oneは、初のロシア製のノンステップ・トラムウェイだが、国際標準に見合ったトラムを開発するのは、そう容易ではなかった。R1は、事実上完全に国産の素材で製造され、「鏡張りの」車体は、モスクワ自動車ガラス社製の高級パネルで覆われ、外国のコンポーネントは、安全なドア開閉メカニズムと車両を連結する「蛇腹」のみ。
ウラル輸送機械製作工場のトラム生産の責任者であるニコライ・キルノスさんによれば、ふつうは両輪に一つエンジンがついているが、このトラムの場合は一つの車輪に一つずつエンジンがついており(全部で八つ)、台車の一つが故障しても運転を続けることができる。
この新型トラムは、速度は電車並みであり、50キロメートルまで蓄電池で走れるので、隣接する都市間の連絡にも利用できる。また、路線の特性に応じて客室の形状を変えられる構造なので、座席の数を増減できる。
運転室のセンサー画面には、客室の内部や車外の様子を映すビデオカメラの映像が流れる。また、運転室が路盤の上へ突き出ているために運転手の視界が15%広がっているので、歩行者が停車中のトラムの前を横切ろうとして運転手の死角に入るというよくある危険なケースにも対処できる。
写真提供:Press Photo
この「スマートなトラムウェイ」の価格は、欧州の同じタイプの二分の一(ペサ社のスリーセクション・トラムウェイが200万ユーロなのに対して100万ユーロ)。R1の最も高価なコンポーネントは、ウラル輸送機械製作工場製の台車で、そのコストは、全体の三分の一を占める。
交流サイトの反応
SNSにこのトラムの写真が掲載されると、レスポンスが殺到したが、おおむね好い反応で、「インペリアル・マーチが流れてきた」とか「まるでダルト・ヴェイデル風」といったメッセージが、ロシアのユーザーから寄せられている。
そして、このトラムのデザインが「スターウォーズ」の「サンドクローラー・ジャワ」を彷彿させるという人もいれば、スタイルがバットマンによく似合うとしてそれを「バット・トラムウェイ」と名づける人もいた。
ある人は、そうしたデザインはロシアの町の風景(春と秋は泥だらけになることもある)に相応しくないのではとのコメントを寄せ、その証拠として、R1が水溜りや融けた雪を縫ってエカテリンブルグの街路を走っているように加工した映像を添えている。
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