軍が北極に回帰

ロシア連邦国防省は来年、北極に軍を配備する=PhotoXPress撮影

ロシア連邦国防省は来年、北極に軍を配備する=PhotoXPress撮影

ロシア連邦国防省は来年、北極に軍を配備する。ウラジーミル・プーチン大統領は12月初め、国防省との会合で次のように述べた。「ロシアはこの有望な地域をより積極的に開発するようになっており、そこへ回帰しつつある。自国の安全と国民の利益を守るため、すべての拠点に軍の配備が必要だ」

 ソ連崩壊後ほぼ放置されていた、北極圏の7空港の改修工事が今年始まったが、年末までにさらに2空港の改修契約が結ばれることも伝えた。また、ラプテフ 海と東シベリア海の間に位置するノボシビルスク諸島で今年、軍の基地の改修工事に参加した人々に、感謝の意を表明。プーチン大統領は、「北極地域の管理のために重要な意義のある」諸島だと述べた。

 

ロモノソフ海嶺の領有問題 

 プーチン大統領がこれを発表したのは、カナダのスティーヴン・ハーパー首相が国連への自国の大陸棚延長申請に北極点を加えるよう指示した1週間後。カナ ダ政府はこれ以外にも、ロモノソフ海嶺周辺の海底の大規模な調査を行おうとしている。ロモノソフ海嶺はカナダとグリーンランド側から北極点を経由して、ノボシビルスク諸島に伸びている。

 ロシア、カナダ、デンマークの間に存在するロモノソフ海嶺の領有問題は、それぞれが排他的経済水域を拡大する上で、重大な意義を持っている。1982年の国連海洋法条約によると、排他的経済水域(海岸から200海里まで)を350海里まで拡大することが可能。その条件とは、200海里の外側にある海底が、自然な大陸棚の延長であること。

 

目当ては石油・ガス鉱床 

 この問題は領有そのものよりも、存在し得る北極圏の石油・ガス鉱床をめぐる問題である。ただし、厳しい北極圏の気候条件のもとで鉱床を開発することには、採算性という難しい課題もある。

 アメリカ地質調査所によると、北極圏内に世界の天然ガスの30%、石油の13%が備蓄されている可能性があるという。

 ロシアの長期的な経済成長に、この資源は欠かせない。ロシア連邦天然資源・環境省によると、2012年初めの時点でロシアが保有していた炭化水素は、今後30年の経済的需要を満たす可能性があるという。

 

なぜ軍の配備が必要か 

 ロシア政府がこの地域で軍の関与を拡大する目的は、北極圏の経済的利益を守り、ここで活動する予定の企業の安全を保証することだと、専門家は考える。軍事評論家のドミトリー・リトフキン氏によると、軍事的脅威は今日、北極にはないという。軍の配備は、領海問題に関連する将来的な脅威への備えだ。

 「企業が有用鉱物の開発を行えるようなプラットフォームを、ロシア政府がつくっている。ただし国が保証できるのは、例えば、ガスプロムがこの領域でガスと石油を平穏に採掘できるようにすることぐらいだ。北極圏にはロシアとノルウェーが領有権を主張しているシュトックマンなどの油層があり、さらにここを戦略的に重要な北極海航路が通っている。この航路には管理が必要。ニッケルの輸送も行われている」

 

軍事衝突に発展するか? 

 ロシア政府は昨年、ロシアの大陸棚とロモノソフ海嶺の関連性を証明可能な地理的データを収集するため、調査活動を実施した。「この活動によって、ロモノソフ海嶺がロシアの大陸棚の続きであることが証明されたため、ロシアの領海はこれまで考えられていたよりもずっと先になる。アメリカ、カナダ、グリーンラ ンドはこれを認めていない。この海底には将来的に採掘されるであろう有用鉱物が豊富に眠っているからだ」とリトフキン氏。

 専門家らは、このような領海争いが軍事衝突に発展するとは考えていない。政治・軍事分析研究所のアレクサンドル・フラムチヒン副所長はこう話す。「これが軍事行動まで発展するとは思えない。北極におけるロシアの軍事的潜在性が強力であるほど、軍事衝突の口実が減ると、ロシア政府が考えているにすぎない」