宇宙飛行士と会話

写真提供:kinopoisk.ru

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ハリウッドの3D映画「ゼロ・グラビティ」が12月13日、日本で公開された。ロシアNOWの記者は、ソ連およびロシアの元宇宙飛行士で、宇宙総滞在時間の記録保持者であるアナトリー・ソロヴィヨフ氏と、この映画を一緒に見てみた(ジョージ・クルーニーは、ソロヴィヨフ氏の記録を映画の中で打ち破ろうとしている)。この映画についての感想、実際の宇宙での生活、SF小説、宇宙ステーションの窓ふきなどについて聞いた。

-ソロヴィヨフさん、映画のご感想はいかがですか。

 なんと申し上げたらよいか。まあ娯楽ですから、評価する意味はないでしょう。これはトムとジェリーですね。考え得るすべての自然の法則を否定しながら、 宇宙でおっかけっこして、90度に旋回して、180度に旋回して...アトラクション、特殊効果、音響効果、色彩効果などでワクワクさせる、ディズニーランドをほうふつとさせます。

 

アナトリー・ソロヴィヨフ氏

-全体の構図はいかがでしたか。実際に宇宙で見たものと似ていましたか。

  地球の上の場面は良くできていて、感動的で、100%見たままでした。ですが残りについては言及しようがないですね。ニュートン、ケプラー、ラグランジュなどの法則が完全に不在なので、物理についてもお話できません。

 

-登場人物についてはどうですか。

 女性宇宙飛行士のありえない行動にびっくりしました。不測の事態が起きているというのに、船長と口論して、ヒステリーを起しているんですから。まるで宇宙飛行士の訓練を受けずに宇宙に行ったみたいです。

 

-制作側はこの映画がファンタスティックだと言っていましたが...

 ファンタスティック...アーサー・チャールズ・クラークの本を読んでみてください。1945年の時点ですでに、自身のSF小説の中で通信衛星の飛行高度を算出していました。今実際にそこを飛行していますし、クラーク軌道とも呼ばれています。レイ・ブラッドベリやアイザック・アシモフもとても興味深いことを書いているので、読むのが楽しいです...これらがファンタスティックなのであって、今日のノンセンスとは違います。

 

-宇宙飛行時間や宇宙遊泳回数などはどこが計算しているのですか。

スライドショー:


宇宙からの写真

 ミッション・コントロール・センターが計算し、後で教えてくれます。どの設備に酸素があるかなどを知るために、宇宙服、システムの作動、その消耗品などを数えます。宇宙貨物船で地球から輸送するために重要なのです。

 

-宇宙遊泳は怖くなかったですか。

 宇宙飛行士訓練センターでは、水力実験所での訓練、飛行機や無重力実験所での飛行訓練、ユニットの訓練などのあらゆる訓練をしています。このような特訓を受けた後は、実際の宇宙での作業が自然に感じるようになります。何度も経験しているので、自信を持って本番でハッチを開けて船外に出ることができるのです。精神的な影響もありますが、微々たるもので、確信は地球ですでに芽生えています。

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-ユーリー・ガガーリンが人類初の宇宙飛行をした時、ソロヴィヨフさんは13歳でしたね。その時に宇宙飛行士になろうと思ったのですか。

 そのようなことは、まったく思っていませんでした。矛盾しているようですが、ガガーリンが飛行機事故にあった時に、宇宙飛行士ではなく、空軍のパイロットになろうとかたく決意したのです。そしてMiG21戦闘機のパイロットになるという夢がかなったのです。

 

-宇宙飛行士になる前に、さまざまな技能が身についていたということですね。宇宙で役に立った技能はなんでしたか。

 宇宙船内外で多種多様な技術作業をこなさなければなりませんでした。私の最初の専門は金属加工職人ですから、工具を使った作業は手慣れたものでした。宇宙ステーション「ミール」では、システムを実装しました。例えば、パーヴェル・ヴィノフラドフと2人で、複雑な空気洗浄システムを基礎ブロック内部から装着したのですが、アメリカ人のデイビッド・ウルフ宇宙飛行士は信じられないという目で見ていました。最初にスイッチを入れてすぐにシステムは作動し、まったく止まりませんでした...

 

-相性で宇宙飛行士の選定が行われるのでしょうか。

 そんなことはないです。他に重要な選定基準がたくさんありますから。正直なところ、乗組員の関係が極めて悪かったこともあります...ですが私は5回の飛行で、どの相手ともうまく交流できました。

 どの宇宙飛行士でも同じことを言うでしょうが、宇宙での作業、無重力状態とは、極めて厳しい環境で、体全体に悪影響を及ぼします。そこに身体機能の低下すなわち筋肉量の低下、非常に大きな肉体的負荷と精神的負荷もあります。作業は実質1日24時間です。弱い人間はこのような負荷に耐えられません。まず訓練には長距離走もありますし。私の場合は1976年に訓練を初めて、その12年後に初飛行しました。

 

-船外に出た時、宇宙の美しさを満喫したり、宇宙の秘密について考えたりする時間はありましたか。

 そのような余裕はあまりありませんでした。宇宙ステーションが地球の影の部分にある時や、ミッション・コントロール・センターから休み時間を与えてもらった時は、まわりを見渡したり、自分の下に動く地球の美を見たりすることができます。

 最初に船外に出た時のことは記憶に残ります。まだ精神的に緊張していて、自然な警戒感があり、手すりを強く握ってしまいます。このような状況では、あえてまわりを見て、楽しんで、自分を普通の状態に戻す必要があるのです。

 

-写真をとりましたか。

 もちろんです。美しいものをすべて撮影するよう試みましたし、写真も残っています。ただフィルムは宇宙で感光してしまうので、保存が大変です。デジタル 技術の出現で、宇宙から見た地球の見事な景色を完全な形で伝えることができるようになりました。映画「ゼロ・グラビティ」の地球の様子は、軌道上から見る景色そのものなのです。

 

-宇宙で定期的に行う必要のある作業はなんでしょうか。

 例えば、1998年にアメリカ人と飛行した時、宇宙ステーションの外部表面の特徴を得るため、また光学特性がどのように変化するかを調べるために、分光計で測定していました。どのような光線を反射しているのか、また吸収しているのかを調べるのは極めて重要です。これはステーション内の温度調節システムに 影響を及ぼすのです。ステーション外部は時間によって大きく変化します。宇宙の光線は影響を及ぼし、近づいたり離れたりする宇宙船のエンジンはステーショ ンの表面で動き、ステーションのエンジンは方位システムで使われ、さらに塵もあります。

 

-空気のない空間に塵ですか?

 はい。ステーションの窓などの外部表面に塵が厚く積もります。微小隕石も影響を及ぼすので、外部から窓を見たら、小さなクレーターのように見えます。

 

-窓をきれいにすることはできないのでしょうか。

 どうやってですか?水を使ってですか?(微笑)均一に積もると、一種のコーティングになります。きれいにしようとしたら、汚れるだけです。名前は言えま せんが、ある宇宙飛行士がふき取ろうとして、彼の手の跡がステーションに永久的に残ってしまいました。後でしっかり注意しましたよ。