鈴木章氏は日本の化学者、北海道大学名誉教授、日本学士院会員 =AFP/EastNews撮影
日本の化学者である鈴木章氏とそのグループは1970年代末、さまざまなベンゼン環の炭素原子2つを、非常に“緩やかな”条件でクロスカップリングさせる方法を発見した。
相互反応を起したのは、ハロゲン(ヨード、ブロム、塩素)とホウ酸が結合する原子だ。ホウ素とハロゲンは炭素原子から簡単に外れ、互いの間でしっかり結合し、炭素原子も同様の反応をした。
材料が手に入りやすいこと、取り扱いが簡単なこと、非常に柔軟性があること、すなわち基の試薬への制限がないことなどから、この反応のファンはあっという間に増えた。
このカップリングにより、鈴木章氏は2010年にノーベル化学賞を受賞した。発見以来30年間で、この反応は、研究所だけでなく産業分野でも、今は「古典的」なものとなり、重要な自然結合がなされ、薬が合成されてきた。それは海産動物の毒素のパリトキシン(地球でもっとも構造が複 雑な物質の一つ)、ロサルタンとバルサルタン(心不全に応用)、太陽電池や液晶画面用の導電性高分子などだ。
よりグリーンな化学を求めて
とはいえ、いかなる反応でも、より無毒なものにするといった改善が可能だ。化学製造は大量の有害廃棄物を出すため、ここ20年は「グリーン」化学という分野が発展している。
まず、環境に優しい溶剤が挙げられる。通常の有機物を反応させる際に、その多くの反応が、「グリーン」溶剤で行われるようになった。
化学者らは、鈴木氏の反応も含めた「グリーン」化学を、産業分野に普及させるべく活動するようになっている。
モスクワ大学化学部の上級研究者で、化学博 士であるミハイル・ネチャエフ氏が率いるチームには、モスクワ大学、ロシア科学アカデミー石油化学合成、ロシア科学アカデミー有機元素化合研究所の研究者 が参加し、最近この部門で新たな一歩を踏み出した。鈴木氏の反応用の新たなパラジウム触媒を開発し、かつてないほど“緩やかな”条件に到達したのだ。この成果 は、非有機・有機金属化学分野で権威のある、科学雑誌「ダルトン・トランザクションズ(Dalton Transactions)」で発表された。
「いかに溶剤なしで鈴木氏の反応を起こすかについて論文を書いており、すでにほぼ完成している。つまり、より『グリーン』なバージョンを実現していると言える。基礎 科学を研究しているものの、その成果を最も重要な分野で応用することを常に視野に入れている」とネチャエフ氏は話した。
*記事全文(露語)
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