原子力ロケット・エンジンの開発進む

写真提供:NASA

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宇宙で安全に原子力を利用する方法がロシアで発明され、それにもとづいた原子力装置の製造が行われているという。連邦国営単一企業「ケルディシュ研究センター」所長で、アカデミー会員のアナトーリ・コロテエフ氏が伝えた。

「当センターは現在、ロシア連邦宇宙局やロスアトムの企業と密に連携して、この仕事を活発に進めている。期日までに良い結果が出ることを願う」とコロテエフ氏は1月末に話した。

原子力ロケット・エンジンのメカニズムは 

宇宙空間で原子力を安全に利用するこの仕組みは、廃棄物を出さず、閉回路式で、地球に落下してもしなくても安全性を保つことができる。コロテエフ氏によると、特別な冷却システムを使って、この原子力装置を軽量化するという。冷却機は宇宙空間で、パイプ・システムを使わずに直接循環する。

宇宙機を人工衛星に変えるためには、秒速8kmほどの速度にする必要があることはよく知られている話だ。もし我々が他の星への飛行をしたいと思うなら、その速度を秒速11.2kmに上げなければならない。

いかに秒速10kmまで加速するか 

現代の酸水素エンジンならば、太陽系の果てを見ることが可能な秒速10kmまで上げることができるから、この課題はほぼ解決できる。しかしながら、ロケットがそこにたどり着くまでには長い年月がかかる。

一方で、原子力以外にも化学燃料の代替はある。例えば通信衛星は、プラズマ・エンジンと呼ばれるものをかなり前から装備している。このような電気推進機関は、バッテリー、アイソトープ発電機、または太陽電池からエネルギーを得るため、化学燃料を一切使用しない。主な長所は、省エネで長時間作業が可能なことだが、気になる欠点もある。

まず、今日のこのような電気推進機関の推力が、非常に低いことである。そのため、人工衛星の軌道修正をしたり、宇宙空間で軽量機の速度を徐々に加速したりすることに使用されている。

次に、秒速10km以上の速度に加速するのに時間がかかることである。例えば、2003年9月に打ち上げられた、ヨーロッパの月探査用技術試験衛星「スマート1」は、月に到達するのに半年もかかってしまった。

加速段階で原子力ロケット・エンジンを使う 

化学燃料の可能性と、電気推進機関の省エネを、ひとつにすることはできるだろうか。宇宙機の加速段階で原子力ロケット・エンジンを使えば、それは可能になる。

原子力装置を使って、かつてロシアは宇宙機32機を宇宙に飛ばし、アメリカは2機を飛ばした。NASAは今日、有人火星探索に、核燃料を使用する宇宙船の導入を検討している。今後5年で数十億ドルが、2件の研究プロジェクトに投じられる予定となっている。ひとつは原子力エンジンのロケットの製造で、もうひとつは原子力発電機の開発だ。

このように、原子力ロケットという研究目的により、ロシアとアメリカが宇宙開発でひとつになることが可能だ。アメリカが原子力を利用したロケット・エンジンを製造する時、今回の「ケルディシュ研究センター」の開発で示された、この分野でのロシアの実績を、活かすことができる。

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