プーチン訪日は互いに一歩歩み寄りか

 ロシアのプーチン大統領(右)と日本の安倍首相が、柔道の総本山「講道館」を訪れ、歓談する。

 ロシアのプーチン大統領(右)と日本の安倍首相が、柔道の総本山「講道館」を訪れ、歓談する。

AP通信
 12月16日東京で、プーチン大統領訪日の全日程が終了した。この訪問を安倍首相は「歴史的事件」と位置付けている。

 ロシア大統領の11年ぶりの日本訪問は、2時間遅れで始まった。この遅延を、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「シリア問題」で大統領の日程がずれ込んだためと説明している。訪問の内容はさておき、その表面だけ見ても、この訪問は歴史的意義を有している――安倍首相が、自身のこじんまりとした故郷に、非公式な雰囲気で、外国の首脳を初めて迎えたという意味で。東京で開催された露日経済フォーラムでは、安倍首相は今年2016年を振り返りつつ、未来の世代はこの年を「露日関係が新たな軌道に乗った」年と位置付けるだろうと述べた。

 幾人かの専門家は、訪問の成果は、「突破口を開いた」というにふさわしいものと考えている。訪日に際して、総額3000億円(約25億4000万ドル)の68にのぼる協定が調印された。そのなかには、共同投資プラットフォーム創設、三井物産による、ロシアの製薬会社「Rファルム」の株式10パーセントの買収、国際協力銀行(JBIC)による、ロシア資源大手ノバテクのヤマル半島での液化天然ガス(LNG)基地開発への2億ユーロ(約246億円)融資などがあった。

 

慎重な構えを克服 

 極東連邦大学・世界経済講座のタギル・フジヤトフ教授は、ロシアNOWに対し、訪問の成果は「突破口を開く」ものと述べた。

 「訪問の成果は全体として(それが様々な形式で行われ、経済フォーラムも伴ったことを考えれば)、二国間関係にとっても、国際関係全体にとっても、『突破口』と言わずとも、極めて意義深いものだった」。こうフジヤトフ教授は述べた。

 教授の考えでは、ロシアと日本は、互いへの慎重な構えを克服し、根本的に新しい水準の協力関係を構築し始めたという。「肝心な点は、どうやら露日双方が、周知の慎重さを乗り越えつつ、互いを戦略的に重要なパートナーとして捉え、根本的に新しい水準の協力関係を構築し始めることができたということだ――仮に露日双方がそうした表現をしていないとしても」

 最も有望な協定の一つとして、専門家らは、共同投資プラットフォーム創設を挙げている。

 「非常に有望な協定が数多く結ばれた。とくに共同投資プラットフォーム創設だ」と言うのは、テンプル大学のジェームズ・ブラウン准教授だ。

 モスクワ国際関係大学東洋学講座主任のドミトリー・ストレリツォフ教授もまた、この協定は日本の投資家に対し保障のシステムを与え、露日の協力関係を「停滞状態」から抜け出させ得るとみる。

 「日本の投資家は、ロシアに進出するにあたり、多くの面で困難を味わっている。とくに、投資家の権利保障が未整備で、投資環境が不安定であるためだ。だから、共同投資プラットフォーム創設も、露日経済協力の一定のはずみとなる」。ストレリツォフ教授はこう付け加えた。

 しかしブラウン准教授によれば、プーチン訪日の成果はこのように高く評価されるものの、それはどちからといえば、日本にとってよりもロシアに有利だという。ロシア大統領は、ウクライナ危機発生以来初めて、G7の首都に迎えられた。

 「全体として、これはロシアにとって、日本にとってもよりはるかにポジティブだ。 ロシア側は、ロシア大統領がウクライナ危機発生以来初めてG7の首都で歓迎されたことを喜んでいるだろう」。ブラウン准教授はこう説明する。ストレリツォフ教授も同様の意見だ。「この訪問はある程度、G7の反ロシア的雰囲気を弱めている」

 

「期待外れ」ではない 

 露日首脳の共同声明には、露日両国の南クリル諸島(北方四島)での共同経済活動に関する協議の過程で、別個の国際的約束を締結する可能性があると記されているほか、次のようにうたわれている。プーチン大統領と安倍首相は、長門と東京での会談の結果、「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞諸島における日本とロシアによる共同経済活動に関する協議を開始することが、平和条約の締結に向けた重要な一歩になり得るということに関して、相互理解に達した」

 だが、ブラウン准教授は、日本側の期待はもっと大きかったかもしれないと言う。「一方、日本は、領土問題ではそれ以上の成果が得られなかったことに失望するだろう。これこそが最優先事項だったから。両国は、南クリル諸島での共同経済活動について協議を始める合意が、最終決着に向けて事態を前進させることを期待するだろう。だが、このような共同経済活動を可能にするために相互に容認される法的枠組みが創出されるかどうかについては、不確実な点が多く残っている」。ブラウン准教授はこう言う。

 とはいえ、今回の訪問で一気に領土問題が解決し平和条約締結に至るとは、ほとんど誰も期待していなかったのも事実だ。

 「センセーションはなかったという人もいる。仮にそのセンセーションなるものを、直ちに平和条約を結び、南クリル諸島の問題を解決することであるというならば、果たしてそんなことをそもそも真面目に期待できただろうか?」。フジヤトフ教授はこう問いかける。

 ストレリツォフ教授も、共同経済活動で両国は平和条約締結に近づき得ると考える。「これもまた、相互理解への一歩であり、日本との平和友好条約締結に向けて我々を近づけるものだ」

 いずれにせよ、最初の一歩は踏み出された。そこでは、日本だけでなくロシアの政治的意志も、小さからぬ役割を演じている。

 「接近のイニシアチブを示した安倍首相、そしてイニシアチブを評価し、一歩歩み寄ったプーチン大統領。その両国首脳を然るべく評価すべきだ。二人の政治的意志なくしては、二国間関係におけるこのような進歩はなかっただろうから」。フジヤトフ教授はこう結んだ。