ロシアのメドベージェフ首相と訪露した中国の李克強首相(左)がモスクワでの会談後、最後の記者会見前に握手する。=AP通信
国や民間の二国間協定は38件調印された。ドミトリー・メドベージェフ首相によると、これは記録的な件数だという。中国の李克強首相のロシア訪問(12日から14日まで)に合わせて、書類が用意された。
融資
協定の非常に重要な一部分となったのは融資。アメリカと欧州連合(EU)から制裁が科されているロシアの銀行は、中国輸出入銀行の融資枠を得た。ロシアのVTB銀行および対外経済活動発展銀行も、それぞれ20億ドル(約2000億円)に相当する融資の枠組み合意を結んだ。資金は中国からの輸入への融資に使われる可能性もある。
ロシアの投資分析会社インヴェストカフェのミハイル・クジミン氏はこう話す。「欧米からの資金調達が難しくなったロシアの銀行にとって、これは大きなプラス。この資金で外貨建て債務の償還はできないが、自由になった自己資金を必要なものや他のプロジェクトにあてることができる。つまり、部分的な融資置換が起こったと言える」
一方で、ロシア経済・国家行政アカデミー金融システム分析センターのアレクサンドル・アブラモフ上級研究員はこう話す。「総額40億ドル(約4000億円)の融資は、ロシア経済への欧米の融資の代替にはならない。この資金は中国製品を買うためのもの」
他には同じく欧米の制裁対象になっているロシア農業銀行と中国輸出入銀行が結んだ融資の枠組み合意や、ロシア連邦中央銀行と中国人民銀行が結んだ3年の通貨スワップ協定などがある。スワップ枠は1500億元(約2兆5000億円)。 ロシア中央銀行によると、これは「ロシアと中国の今後の貿易拡大および相互投資のための条件整備を目的」としているという。これは融資ではなく、通貨交換条件にすぎない。両国の中央銀行は今後3年間、総額1500億元を固定為替レートで交換するということである。
目的はまず、中国元の余分な変動を省くこと。次に事業の安定性を確保すること。「中国との協定によって、大手企業は通常活動を行える。中国との決済がわかりやすくなり、1ヶ月後に変動したりしないと経営者は安心できる」とFX会社アルパリのアナリスト、アンナ・コロレワ氏は説明する。
ガス
ガス分野では、特に大型の協定はなかった。今回の李首相の訪問では、すでに締結済みの、ロシアの国営ガス会社ガスプロムと中国の国営石油・天然ガス会社「中国石油天然気集団公司(CNPC)」の、東部経由の天然ガス供給契約(「シベリアの力」分岐パイプライン、30年間380億立法メートル)の正式な発効に必要な、政府間ガス協定に署名が行われたのみであった。
中国はその代わり、液化天然ガス(LNG)合弁企業をロシアと創設することに言及した。ロシアの国営石油会社ロスネフチはこのように伝えている。「ロスネフチとCNPCは、中国へのロシア産LNG輸出を含めた共同LNGプロジェクトについて実現可能性を調査する」。これについての関係者のコメントはない。
ロシアの投資分析会社インヴェストカフェのアナリスト、グリゴリー・ビルク氏はこう話す。「中国側がLNG工場建設への参加を望んでいるという話なのかはわからない。恐らく、今ロスネフチとエクソンモービルが共同で建設しているサハリンの工場から、LNGを輸出する話だと思う」。これはまず、中国にとって供給者の多様化になる。つまりガスパイプライン経由のガスを売るガスプロム以外に、他の供給者があらわれる。次に、輸送手段の多様化になる。
ロシア鉄道
もう一つの重要な協力の方向性には、高速鉄道の建設がある。両国は提携に関する覚書に調印した。「ロシア鉄道」の中国のパートナーは、1兆ルーブル(約2.5兆円)のモスクワ-カザン高速鉄道建設プロジェクトに共同融資し、そのための車両をロシアで現地生産化する構えだ。
高速鉄道プロジェクトには、ドイツのシーメンスやフランスのアルストムも参加の意志を表明している。中国には列車の生産に特化した大手企業が2社ある。それは中国北車集団(CNR)と中国南車集団(CSR)。高速鉄道プロジェクトは高い現地生産化(50%以上)を定めている。中国の生産拠点は、シーメンスとロシアのシナラがすでに高速列車「ラストチカ」を生産している工場になる可能性があると、ロシア鉄道の関係筋は伝えている。
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