ロシアとの対決姿勢を崩さないNATOの新事務総長

2014年3月28日。ノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ元首相がNATO次期事務総長に選出された後、オスロの記者団の前でしばし沈黙。=ロイター通信

2014年3月28日。ノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ元首相がNATO次期事務総長に選出された後、オスロの記者団の前でしばし沈黙。=ロイター通信

NATOのイェンス・ストルテンベルグ新事務総長が、10月1日に就任する。ロシアの専門家らは、NATOの路線はその主要加盟国の国益に左右されるので、新指導者の就任はロシアとの関係の改善をもたらさず、NATOの政策は今後も変わらない、と見ている。

アレクセイ・アルバートフ、政治学者、ロシア科学アカデミー・世界経済国際関係研究所・国際安全保障センター・所長 

 ロシアとNATOの協力が新事務総長の個性に左右される度合いは、最小限です。私たちの関係は、現在、深刻な危機にありますが、それには、客観的な原因があります。それらは、複雑かつ多様なもので、具体的には、ここ20年の関係の歴史、NATOの東方への拡大、ロシアの反発を招いたユーゴスラヴィアに対するNATOの攻撃などです。

 別の緊張の原因は、ロシアがここ20年歩んできた欧州選択の道からロシアを逸脱させたロシア指導部の内政および外交です。私たちの相互の疎遠は、ウクライナ情勢が「冷戦」時代を直ちに彷彿させるほど私たちを隔てた究極の「不和の種」となるまで、ますます大きな影響を及ぼしていきました。

 それが誰であろうと、新事務総長が自分の側からできることは、ひじょうに限られています。ロシアとNATOの関係は、私たちがどのようにウクライナ危機から脱け出すか、ロシアがどのように国内の経済的および政治的な問題を処理できるか、ロシアがいつ欧州の道へ立ち戻れるか、ということにかかっています。強調しますと、ロシアは欧州の大国であり、これについては、もっとも高いレヴェルのものを含めて、多くの言葉が語られ、多くの書物が記されています。

 私たちの今後の協力は、また、西側がロシアとの関係における自らの過ちや失策をどのくらい考慮するかにもかかっていますが、肝心なのは、世界のリーダーらが、新たな原則でロシアとの関係を構築しはじめるべく、どのくらい自己を克服できるか、ということです。

 

アレクサンドル・コノヴァーロフ、戦略的評価研究所・所長 

 NATOは、ロシアとの国境における即応部隊の創設および防衛力の向上という方針を定めました。新事務総長は、加盟国の政治的な利益に適う路線を継承し、何ら本質的な変化はもたらさないでしょう。

 NATOは、「ひとつの国に対する攻撃はすべての国に対する攻撃なり」としたワシントン条約の第五条の枠内で義務を履行する決意を東欧および中欧の国々へ誇示しつづけるでしょう。NATO加盟国にとってのまさに黄金期が訪れたのです。これらの国は、数年間、ロシアは見た目よりもかなり危険なのでより断固とした行動をとる必要があり、自分たちを守るためにはより多くの資金を費やす必要がある、ということを証明しようとしてきました。

 今は、東欧および中欧の国々がそれを100%利用して自分たちの安全の保障のための現実的な行動や約束をできるだけ多く欧米から吸い取ることのできる絶好の機会なのです。

 ロシアとNATOの今後の関係の発展は、かなりの程度、ロシアの出方にかかってきます。

 

ヴィクトル・リトフキン、軍事専門家

 最近のウェールズでのNATOサミットは、ここ20年余りでもっとも反ロシア的なサミットとしてNATOの歴史に刻まれました。その首脳会議では、ウクライナ情勢およびNATOが侵略的とみなすロシアの政策への対抗措置のプランが、中心テーマとなりました。

 すでに前任のNATO事務総長であるアナス・フォー・ラスムセン氏は、ウェールズでのサミットの際、イスラム国とともにロシアをNATOの「主な敵」と呼びました。状況は、極めて明白であり、それは、NATOとロシアの蜜月は終わりを告げ、イェンス・ストルテンベルグという新事務総長の就任も「敵」探しとNATOの存在意義の獲得を目指すNATOの定められた路線を変えはしない、ということなのです。

 NATOは、まさに仮面を脱ぎ捨て、ソ連そして今のロシアを抑えつけるために創り出されたNATOの母斑が、すっかり現れました。NATOには、政治的および軍事的な手段で自らの国益を主張できる強い主権国家ではなく、ブリュッセルのNATO本部やアメリカのホワイトハウスや国務省から発出される「助言・指令」に従う用意のある弱くて従順なロシアが必要だったのです。それで、ウクライナ上空でのマレーシアの「ボーイング777」の撃墜を含む、起こりうるか否かを問わぬあらゆる罪が、ロシアに擦りつけられたのです。

 実際、東方の同盟国における7000人規模の即応部隊すなわち合同遠征部隊(JEF)および追加の軍事インフラの配備を見込んだ新たな即応行動計画(RAP)がウェールズでのNATOサミットで承認されたことに、ロシアの主権に基づく政策に対する反応の切実さが見てとれます。別の懸念材料としては、定期的なロシア国境におけるNATO軍の演習および航空機の飛行ならびに黒海およびバルト海におけるNATOの艦船のプレゼンスを挙げることができます。