ホドルコフスキー氏の今後

=ロイター通信撮影

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一連の詐欺、脱税などの容疑で有罪判決を受け10年間収監されていた元石油大手ユコス社長のミハイル・ホドルコフスキー氏は、恩赦を施され、家族と再会するために空路でドイツへ移り、ベルリンで記者会見を開いて、いつロシアへ戻るかはわからない、と述べた。当局が恩赦に踏み切った背景については、諸説ある。

 ホドルコフスキー氏の記者会見の前日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の報道官であるドミトリー・ペスコフ氏は、ホドルコフスキー氏は、ドイツへ出国したものの、完全に自由な身であるため、支障なくロシアへ帰国できる、と声明した。

 しかし、ホドルコフスキー氏自身は、12月22日の記者会見で、恩赦は施されたものの、まだ無罪と認められたわけではなく、自分に対する訴訟も残っている、とし、こう述べた。「私には、釈放される段階で、選択の余地がありませんでした。夜中の二時に私たちのラーゲリ(収監所)の所長に起こされ、私が家に帰ることになったと告げられました。その後、移動中に、私は、ベルリンへ行くことを知りました。同時に、ペスコフ大統領報道官は、私が好きなときにロシアへ帰国するのを妨げるものは何もない、と言いました。残念ながら、私には、今、そこ(ロシア)から私が必要とするところへ出国できる保証はありません。公式的な観点から、ロシア最高裁判所は、最初のユコス事件に関する訴訟は私と私の友人であるプラトン・レベジェフ氏から取り下げられたとのECHR(欧州人権裁判所)の決定を確認するべきです。今のところそれはありません。ですから、私は、今のところ帰国できないのです」

 

「当面欧州にとどまり囚人たちの権利を擁護」 

 ホドルコフスキー氏は、欧州に留まるつもりでいる。同氏には、一年間のシェンゲン・ヴィザ(査証)がある。ホドルコフスキー氏は、釈放後に何をするかまだよく分からないとしながらも、政治にたずさわるつもりはなく、囚人たちの権利を守りたい、と述べた。

 しかし、政治評論家のアレクサンドル・ネクラーソフ氏は、囚人たちの権利を守るのであれば、政治は避けて通れない、とみなし、テレビ局「ロシアトゥデイ」の番組でこう述べた。「最初に、政治には参加しない、と述べた人が、その後、同じ記者会見で、私はロシア国内の政治囚を助ける、と言うのは、おかしいと思います」

 

「一定の条件と引き換えに釈放か」 

 一部の専門家は、釈放のまえにホドルコフスキー氏は自分が履行すべき一定の条件を提示された、とみなしている。

 国立経済高等学院教授である政治学者のニコライ・ペトロフ氏は、こう語る。「プーチン氏とホドルコフスキー氏の関係は、プーチン政権の“神経”のようなものです。元ユコス社長に対して同氏が履行すべき条件(たとえば、政治にたずさわらないとか、倒産後にその一部が「ロスネフチ」社の所有となったユコスの株式を裁判に勝って取り戻すことをしないとか)が提示されたことは、明らかです。もしもホドルコフスキー氏が約束を破るなら、当局は同氏に圧力をかけることができます。たとえば、刑務所には今も同氏の盟友であるプラトン・レベジェフ氏がいますから」

 

「問題から注意をそらす作戦」 

 政治学者のドミトリー・オレシキン氏は、ホドルコフスキー氏が法的な手続きを踏んで当局と合意を結んだことも考えられるとし、こう述べる。「クレムリン(ロシア指導部)は、100%の保証なしには何もしませんから、何もなしにただホドルコフスキー氏を釈放したわけではないでしょう」

 専門家らは、ホドルコフスキー氏の釈放の背景について述べるなかで、クレムリンにとっての一連の利益を指摘しており、たとえば、ミンチェンコ・コンサルティング社のキリル・ペトロフ氏は、こう語る。「ホドルコフスキー氏に対する恩赦によって、ロシアの銀行問題や経済成長の鈍化やウクライナへの150億ドルもの財政支援などから注意を逸らすことができますし、オリンピックをまえに世界のロシアに対するイメージをアップすることもできます」

 

ドミトリー・バービチ氏:「彼だってオリガルヒ」 

 政治アナリストのドミトリー・バービチ氏は、ロシアNOWへのインタビューで、ホドルコフスキー氏をネルソン・マンデラ氏と同様にみなすことはできない、とし、こう述べる。「1990年代に、同氏は、政治闘争に参加しませんでした。経済次官として入閣し、その後、同氏の会社は、急成長しました。同氏は、あらゆる手段で自分の資産を増やした例の1990年代の出身者なのです。同氏の唯一の政治活動は、野党の「ヤブロコ」と「ロシア連邦共産党」を選挙で支持したことでした」

 バービチ氏は、さらにこう述べる。「ホドルコフスキー氏とプーチン氏の間に不和が生じるまでは、西側におけるホドルコフスキー氏のイメージは悪かったのですが、なぜか、そのことを憶えている人はいません。ユコスは、2000年か2001年ごろにはドイツのいくつかの企業を所有したいと考えていました。しかし、それは叶いませんでした。当時は、ロシアの所有者たちは、労働者たちにまともな賃金を支払わず、彼らを搾取する、などと言われたものでした。同氏は、オリガルヒ(新興財閥)の一人とみなされていました」。同アナリストは、2003年にすべてが変わり、10年間、外国のジャーナリストたちがホドルコフスキー氏のイメージアップにいそしんできたと言う。

 バービチ氏は、今回のドイツの尽力の背景には、ドイツがロシアと合意できる可能性を世界に示す狙いがあり、ロシアとしても、リベラルな国であることを内外に示す好機になる、などとしている。

 

*以下の情報を参照:テレビ局「ロシア・トゥデイ」、通信社「ネフチ・ロシーイ(ロシアの石油)」、「ガゼータ・ル」