ホドルコフスキー氏恩赦の背景は

「ホドルコフスキー氏はもう10年以上収監されている。重い懲罰だ。(恩赦の)決定をすべきだと思う」=ロイター通信撮影

「ホドルコフスキー氏はもう10年以上収監されている。重い懲罰だ。(恩赦の)決定をすべきだと思う」=ロイター通信撮影

プーチン大統領は、今日12月20日、脱税、横領などの罪で10年以上収監されている元石油大手ユコス社長のミハイル・ホドルコフスキー氏(50)に対し、恩赦を与える大統領令に署名した。専門家らは、この決定は西側との関係には影響しないが、ホドルコフスキー氏はビジネスで新たに大きな成功を収められるだろうと見ている。

 大統領令は、即日、20日に発効する。インターファクス通信が伝えた。「人道上の諸原則に則り、1963年モスクワ生まれの受刑者ミハイル・ホドルコフスキーの恩赦を決定し、以後の服役を免じる」と大統領令には記されている。これに対し、ホドルコフスキー氏の弁護士ワジム・クリュヴガント氏は、「大統領令は即時履行されなければならない」と述べるとともに、今後の弁護活動は、ホドルコフスキーが実際にいつ釈放されるかによると指摘した。

 刑法によれば、恩赦を受けた受刑者は、恩赦の指令が実際に当該の刑務所に届いた日に行われる。就業時間以後に届いた場合は、釈放は翌朝となる。

 

1219日の記者会見後に恩赦の意向を示す 

 プーチン大統領は、昨日の年末恒例の記者会見後、「彼(ホドルコフスキー氏)はもう10年以上収監されている。重い懲罰だ。(恩赦の)決定をすべきだと思う」と述べた。

 「すでに私は、ホドルコフスキー氏は法律にしたがって然るべき書類を提出しなければならない、と述べてきたが、彼はそれをしなかった。だがつい最近、彼は書類を提出して恩赦を求めた」とプーチン大統領は説明した。

 「ホドルコフスキー氏には病気の母親もいる。(恩赦の)決定をすべきだと思う。近々に恩赦に関する大統領令に署名する」と大統領は述べ、人道面での配慮もあったことを伺わせた。

ミハイル・ホドルコフスキー氏とユコス事件

 2005年5月31日、いわゆる「ユコスの最初の刑事事件」で、石油大手ユコス社長だったホドルコフスキー氏とそのビジネス・パートナーであったプラトン・レヴェジェフ氏(元メナテップ社会長)に対し、モスクワ市のメシャンスキー地区裁判所は、詐欺、国庫からの横領、大量の燃料の横領、仲裁裁判所の決定のいくつかの不履行、個人と法人としての脱税で有罪と認め、両者にそれぞれ懲役9年の判決を言い渡した(後に刑期は8年に軽減された)。

 さらに、2010年末に、2番目の刑事事件で裁判所は両者に対して、石油2億トンの横領と金銭洗浄で有罪を宣告し、前回の判決を考慮したうえで、懲役14年(後に13年に軽減)を言い渡した。

 昨年12月20日、モスクワ市裁判所幹部会は、刑期を13年から11年に縮小した。

 一方、ホドルコフスキー氏は、これらの容疑はすべて政治的なものだと主張し、欧州人権裁判所(ECHR)に控訴していたが、ECHRは今年7月にこれを却下し、ホドルコフスキー氏の刑事訴追に、ロシア政府の政治的動機があったことを証明するような、確かな証拠は提示されて いないとの判断を示した。しかし、ECHRは2011年5月、逮捕の際の手続きにいくつかの違反があったとしている。

 

 一方、ホドルコフスキー氏の弁護側は、ロイター通信の報道によると、いかなる恩赦の請願もなされていない、と主張している。弁護士の一人であるワジム・クリュヴガント氏は「そんなことはなかったし、これからもあり得ない」と述べたが、ホドルコフスキー氏とそのビジネス・パートナーであったプラトン・レヴェジェフ氏(元メナテップ社会長)のプレスセンターは、プーチン大統領の発言に対し、コメントしなかった。

 ちなみに最近、ホドルコフスキーに対し新たな3つ目の刑事事件が立件される可能性があるとの報道がなされたが、これについてプーチン大統領は、昨日の記者会見で、「いわゆる3つ目の刑事事件については、自分はあれこれ穿鑿したくないが、第三者として正直にいうと、突っ込んで考えるまでもなく、この件に何らかの“発展性”があるようには見えない」と述べていた。続けて大統領は、「この件については、取りざたされていることを耳にしただけだが、今のところ、誰にとっても“脅威”にはなりそうもないと思う」と言った。

 

「ソチ五輪開催前のイメージ改善?」 

 アルファバンクの戦略問題専門家クリス・ヴィフェル氏は、「ロシア・ダイレクト」に対し、ソチ五輪開催を前にしてのこの恩赦は、ロシアのイメージと投資環境を改善する必要性と関係しているだろうと述べた。「先に恩赦されたグリーンピース活動家とともに、この恩赦のニュースは、ロシアとの経済協力において一つのプラス材料になりうる」

 「政治技術センター」のイーゴリ・ブーニン所長は、こうした見方に反論しする。プーチン大統領は再三、ホドルコフスキー氏に対し、請願すれば恩赦することを仄めかしてきたと確信しているという。「恩赦されたのは、専ら請願書を書いたためだ。もし書かなければ、いかなる“投資改善の必要性”も、同氏を助けることはできなかったろう」 

 ブーニン氏は、恩赦はロシアと西側の関係にあまり影響しないだろうと予想したが、大統領が恩赦について発言するや否や、露企業各社の株価は、1・5%跳ね上がった。 

 

露内政への影響は? 

 「政治研究センター」のセルゲイ・マルコフ所長(大統領の諮問機関「社会評議会」の委員)は、外国では、ホドルコフスキー氏が犯罪を犯したことを弁えているはずだと言う。「これで一つの政争の具がなくなる。海外での反露キャンペーンに対する投資も減るだろう。この恩赦は、ホドルコフスキー氏の支持者たちが、そうしたキャンペーンに投資しない旨約束したことへの、一つの回答ではないか」

 マルコフ氏はまた、今やホドルコフスキー氏は、政治的に重要な存在ではないので、ロシア内政に目立った変化は起こらないだろうと言う。「せいぜい、政権反対派に、批判のスローガンが一つなくなるくらいだ」としながら、こう結んだ。「才能豊かなホドルコフスキー氏は、長靴など作らず、ビジネスをやるべきだ。多分、10年もすれば、どこかの大企業を率いているのでは」