タジキスタンで6日、任期満了にともなう大統領選が行われた=AFP/EastNews撮影
タジキスタンの完全な経済崩壊と、アメリカ軍が来年一部撤退する隣国アフガニスタンの情勢不安は、タジキスタンの混乱を招きかねない。ラフモン大統領は状況をコントロールするために、最悪の場合に外国の支援を要請することを念頭に置きながら、多極外交を行おうとしている。ロシア、中国、アメリカ、イラン、EUを常に重視しており、次いでトルコだ。
タジキスタンはこの地域におけるロシアの重要な同盟国の一国と考えられているものの、ロシアとの関係は一筋縄ではいかない。タジキスタンにはロシアの第201軍事基地があり、協定では2042年まで駐留することになっている。だがタジキスタン政府はこの協定の批准を1年ものばし、ロシアからさまざまな特恵をひきだした。
駆け引きのしすぎ
駆け引きはタジキスタンの政治の特徴とも言える。例えば、ラフモン大統領は首都ドゥシャンベ近郊の「アイニ」軍事空港を、ロシア、アメリカ、インドに貸すと約束した。3ヶ国は空港取得に興味を示したが、大統領の多極外交が状況をこじらせたため、今はどの国も消極的だ。
アイニ空港の状況は、より多くのものを得ようとするタジキスタン政府の特徴をよく表している。合意に達した内容を見直してばかりいると、何も残らなくなる。「ラフモン大統領は基地問題と結びつけ、移転条件の見直しをほのめかしながら、兵器供給の特恵を受けようとするだろう。批准された協定は、タジキスタンにとって議題の終了を意味するものではない」とロシア戦略研究所の専門家であるアジュダル・クルトフ氏は話す。
依存からの脱出
ロシア政府は基地協定の批准の代わりに、タジキスタン国民に対するロシアの軍事大学での無料教育プログラムを拡大し、2億ドル(約200億円)の兵器を提供する義務を負った。さらにタジキスタン国民のロシアでの就労許可期間を3年まで延長した。就労条件はタジキスタン政府にとって重要である。ロシア連邦移民局のデータによると、タジキスタン人120万人以上がロシアで仕事をしており、今年だけでも35億ドル(約3500億円)が祖国に送金された。
これほどロシアに依存していながら、他の国との関係強化をやめようとはしない。例えば、アメリカがタジキスタンを注視していることが、最近明らか になった。アメリカと北大西洋条約機構(NATO)は一時、アフガニスタンの駐留軍をタジキスタン経由で撤退させる案を検討していた。だがパキスタンの条件の方が有利だったため、廃案となった。
既に中国からの投資が全体の40%
このような行動がしばしば見られるが故に、専門家はタジキスタンがロシアから、中国、インド、イラン、あるいはアメリカの方へ”逃れようとしている”と 言う。ロシア科学アカデミー経済研究所旧ソ連諸国経済発展部のエレーナ・クジミナ部長は、中国がここ2年で、タジキスタンの主要な貿易相手国および投資国になったと話す。中国の投資はタジキスタン経済への投資全体の40%を占めており、昨年度の貿易額は23億ドルだった。中国はさらに、インフラ整備プロジェクトに補助金も出している。
「それでもタジキスタンがロシアから離れようとしていると言うのは正しくない」とクジミナ部長。ロシアとタジキスタンの間では、多くの分野の協力関係が維持されている。タジキスタンが自国の経済利益圏を拡大しているという方が、正しい言い方になるという。
クルトフ氏も、タジキスタンに急激な地政学的変化は起こらないと考える。「タジキスタンにガスと石油はなく、他の資源の採掘は高山地形によって高くつく。地理的条件のせいで大規模な建設は展開できない。イランに近づき、ペルシア語3国連合(タジキスタン、イラン、アフガニスタン)を創設しようとした が、何も結果は得られなかった」。
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