タス通信撮影
最高仲裁裁判所廃止=憲法改正
プーチン大統領が、最高裁判所と最高仲裁裁判所の統合を初めて公に持ち出したのは、今年6月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムにおいてのことで、裁判の手続きを統一するためにそれが必要だと言う。アレクセイ・クドリン前財務相もこのフォーラムの席で、ロシアの裁判制度への不満が多い点については、大統領に同意した。
実際、この秋、下院に法案が提出された。それは、あらゆる経済上の係争を扱っていた最高仲裁裁判所を廃止し、その権限を最高裁に移すという内容だ(最高裁は、民事、刑事、行政事件その他、全般的な訴訟を裁く最高審で、裁判の手続きを監督し、その是非についても判断を下す)。
法案が成立するということは、憲法が改正されるということで、最高仲裁裁判所での訴訟手続きなど、同裁判所に関するすべての、憲法における言及が消えることになる。
ハードルの高い改憲手続き
下院議員たちは早くも、今秋この法案を優先的に審議する用意があると表明しているが、下院のパーヴェル・クラシェニンニコフフ民間法・刑法・調停・訴訟法委員長は、憲法改正は長時間を要するとして、早期成立の可能性については懐疑的だ。3分の2以上の自治体(連邦構成主体)が改正を承認したのち、「下院が定数の3分の2、上院が4分の3、賛成しなければならない」と、同氏は指摘した。その後で、半年間のうちに最高仲裁裁判所が廃止され、その権限が最高裁に委譲される運びとなる。
「2つの最高審がしばしば異なる判断」
しかし、モスクワ国際関係大学・市民社会講座主任であるウラジスラフ・グリブ教授(社会会議副書記)は、法案は通るし改憲もなされるだろうと、あっさり言う。「この法案は、あまり反対意見もないし、やはり最高審は一つであるべきだ。これはほとんどの国のスタンダードであり、単一の裁判制度があらゆる問題を裁くシステムになっている。さらに、同じ問題について、最高仲裁裁判所と最高裁の判断が食い違い、その結果、経済と法秩序に悪影響を及ぼすケースが再三あった。だから、アクチュアルな法的問題に関しては、単一の裁判所の単一の判断が必要だ」。
ただしグリブ氏は、統合されるのは最高審だけで、州など自治体の裁判所は、仲裁裁判所も一般のそれも、そのまま残ると強調した。
“最後の言葉”は誰に?
統合が済むと、全部で170名の新たな裁判官を選ぶことになる。以前は、最高裁判官資格審査会が選出していたが、法案によると、各種社会団体の代表と大統領代表1名から成る特別審査会が選ぶ。
この統合に関連して、仲裁裁判所の独立が問われることとなる。この裁判所こそが、ロシアで最も進歩的とみなされていたと、パーヴェル・チコフ氏は指摘する。チコフ氏は、地域間弁護士協会「アゴラ」会長で、この協会は、行政の被害者救済に最も積極的な団体の一つだとみなされている。
「欧州人権裁判所は、ロシアの一般の裁判所を褒めたためしは一度もないが、仲裁裁判所については効果的だと評価している。そういうシステムを創り上げたのはアントン・イワノフ最高仲裁裁判所長だ。今問題なのは、誰が統一最高審の長になり、今後どんなシステムを創っていくかだ。私は、イワノフ氏に勝る人物を知らないが・・・」。
今年のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムが終わると、専門家、評論家らは、新最高裁判所長になるのは、現在首相のメドベージェフ氏かもしれないと取り沙汰した。もう一人の候補は、セルゲイ・イワノフ大統領長官で、最近の報道では彼の名が挙がることが多い。
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