E・V・アファナシエフ、駐日ロシア連邦特命全権大使 写真提供:在日ロシア連邦大使館
まず初めに、読者の皆様にご挨拶を申し上げるとともに、我が国の祝日である「ロシアの日」をお祝い申し上げます。1990年6月12日、ロシア国家主権宣言が採択され、1992年、この日は祝日と制定されました。その後、この祝日を「ロシアの日」と改名することが提案され、2002年、この名称が正式名称となりました。
E・V・アファナシエフ氏駐日ロシア連邦特命全権大使大使略歴 誕生日 1947年5月25日出生地 ロシア連邦 ロストフナドヌー市 高校卒業まで東シベリアのチタ市在住 学歴 1970年 ロシア連邦外務省付属 モスクワ国立国際関係大学卒業 中国語、英語、フランス語に堪能 外交キャリア 1970年外務省入省 2012年2月〜至現在 在日本・ロシア連邦特命全権大使 |
日本では、本年の「ロシアの日」を良好な二国間関係の雰囲気の中で迎えました。先日、10年ぶりに日本の安倍首相のロシア公式訪問、及びロシアのV.V.プーチン大統領との首脳会談が実現しました。本日はこの機会をお借りして、安倍首相のロシア訪問に関する私の所感を綴らせていただきます。
首相のロシア滞在中にV. V.プーチン大統領が指摘したように、日本は私たちの隣人であり、必然的なパートナーであります。そして、ロ日の協力関係は、信頼と互恵の精神に則って、ダイナミックに発展しています。
首脳会談の成果として、これだけボリュームのある、広範な二国間及び国際問題に関する両国首脳の共同声明が合意されたことは長年ぶりのことであります。これは、事実上、ロ日の二国間協力、及び国際協力の重要な分野におけるロ日の利益が現状で微妙なバランスが取れた内容となっています。
これまで、専門家レベルの会議を幾度も積み重ね、ロンドンでの外相会談やモスクワや東京での交渉を経て、双方が受け入れられる表現で共同声明を取りまとめることができました。平和条約に関する対話という複雑な問題に関しても進展があったことは、共同声明の文面から見て明らかであります。両国の首脳は、平和条約の問題に関し、双方にとって受入可能な解決策を検討するよう、外務省に指示しました。
さらに、首脳レベルを含めたハイレベルな交流、及び両国の外務省やその他省庁の交流を強化することで合意がなされました。また、外務・防衛閣僚級による2プラス2という新たな交流の枠組みも導入されました。日本の安倍首相は、ロシアのプーチン大統領に対し、2014年に日本を公式訪問するよう招待しました。
首脳会談の中で、まったく新しい、かつ極めてポジティブな議題となったのが、大変中身の濃い経済のテーマでありました。
その際、特に重視されたのが、ロ日の経済関係を牽引するような具体的な両国の協力プロジェクトに関する話合いでした。会談の結果、ロ日協力の拡大に関する8つの覚書が調印されました。それは、
‐運輸・エネルギー分野
‐マネー・ロンダリング及びテロ資金供与に関する情報交換
‐ロスネフチと三井物産の間の協力
‐ロシア直接投資基金、ロシア開発対外経済銀行、日本の国際協力銀行との間の日露投資プラットフォーム設立
‐ロシア開発対外経済銀行と日本の国際協力銀行との間の協力
‐ロシア輸出信用・投資保険庁(EXIAR) と日本貿易保険(NEXI)との協力
‐アムール州政府と北海道銀行との間の協力
などです。
ロ日首脳会談の際も、安倍首相のロシア訪問後も、ロ日ビジネス界の協力の枠内で多く文書が調印されました。
このように、金融経済関係が深化され、ロシア輸送インフラ・エネルギー、及び農業部門の改善のための協力が拡大されることによって、これまで順調に発展してきた従来の燃料エネルギー協力に加えて、両国の新たな経済協力分野が開かれることになります。また、双方は、ハイテク工場の設立や医療、都市整備、ロ日の先進技術を用いた省エネなどのプロジェクトに日本の実業界が参加する大きな可能性があることを確認し合いました。
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ロ日首脳会談の中で、燃料エネルギー部門の直近の優先プロジェクトとして、ウラジオストク近郊やサハリンやヤマール半島やロシア大陸棚における炭化水素資源とLNGの生産、及び石油化学分野の協力計画が指摘されました。日本の自動車メーカーのロシア進出の著しい拡大がロシア経済の発展に手ごたえのある貢献を成していることが強調されました。
2012年のロ日貿易取引高は約13%上昇し、335億ドルという記録を達成しました。ロシア対外貿易に占める日本の割合は約3.6%。日本はロシアの貿易相手国の中で9位を確固として占めています。一方、ロシアは日本の貿易取引高で14位。この数字は、これまでの成果を表すとともに、両国の協力関係にはまだまだ発展の余地が十分にあることを物語っていると思います。今後、日ロの経済界がお互いに歩み寄りながら、両国の経済的パートナーシップを大きく発展させてくれることを期待しています。
ロシアのV.V.プーチン大統領と日本の安倍首相の会談の成果として、文化センターの設置及び活動に関する政府間協定が締結されました。これは、人的交流、ならびに文化・人文分野の交流にとって重要なステップとなります。
ちなみに、ちょうど数日前、恒例の第8回ロシア文化フェスティバル2013 in Japanが開幕いたしました。今回も日本の皆様は、ロシアの一流の芸術団や演奏家、ロシアの優れた造形美術や映画に触れることができます。
モスクワでの首脳会談の際、ロ日の首脳は、明2014年を「ロ日武道交流年」と銘打つことを決定しました。これは、両国のスポーツ交流の発展に寄与することは間違いありません。すでに本年7月には、タタールスタン共和国の首府カザン市で第27回夏季ユニバーシアード競技大会が、10月にはサンクトペテルブルグで第2回世界武道格闘技大会が開催されます。2014年2月には、ソチ市で冬季オリンピックが行われます。これら大規模な国際スポーツ競技には、日本の選手も参加される予定です。
近い将来、両国の文化・科学・芸術関係者を対象とした査証簡素化に関する二国間協定が発効されます。ロ日交流をさらに強化するために、ロシア側は、日本のパートナーに対し、短期滞在査証制度の相互廃止の可能性を検討することを提案いたしました。
2012年、ロシアを訪問した日本の観光客数は、約4万5千人。日本を訪れたロシア人の人数は、ほぼ同数の約5万人でした。ロ日は地理的にも近く、それぞれの国には文化遺産があり、個性豊かなレクレーションの環境が整っておりますので、今後、相互の観光を促進できる大きな可能性があります。
さらに、首脳会談では、最重要の地域・国際問題についても話し合われました。その多くの問題で、双方は、近い、もしくは一致した見解を持っていることが指摘されましたが、そのことは共同声明にも反映されました。
我が国の未来は、アジア太平洋地域と切り離すことができません。私たちは、日本をはじめとするこの地域の国々と、政治、貿易・経済、人文・文化関係を大きく活発化していきたいと願っています。この課題は、ロシア連邦のV.V.プーチン大統領が本年2月12日に承認した「ロシア連邦対外政策構想」の中で優先課題として謳われています。このことは、ロシア政府がその発展を優先課題と定めているシベリアや極東地域にとって、なおさら重要なことです。
日本の首相のロシア訪問中、極めて特筆すべき行事が行われました。それは、阿部晋三首相がモスクワの植物園で桜の苗木を植樹されたことです。この苗木は、かつて、父の安倍晋太郎元外相が植えた桜の大木から分けたものでした。この友好的な行為は、隣国同士である両国の現在の関係を如実に物語っています。両国は、モスクワでの首脳会談を受け、ロ日関係の強化は、ロシア連邦と日本の国益にかない、双方が目指していく戦略的パートナーシップの構築にとって、よい前提条件となるとの意見で一致しました。
ロ日間の協力を様々な分野で一貫して発展させていくことは、両国の互恵的協力関係のみならず、アジア太平洋地域、及び全世界の安定と平和を強化する重要な要因になると確信しています。
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