ロシア外務省はツイッターに70個の公式アカウントを持ち、もっとも人気のあるロシア連邦外務省(@MID_RF)には約6万5000人のフォロワーがいる。=コメルサント紙撮影
政治学者によると、第1期オバマ政権のアメリカの外交政策で目立ったのが、「デジタル外交」の導入だったという。ソーシャル・ネットワークは外交官の手の内で、数百万人の市民と直接対話できる道具に変わった。
スマート・パワー
ヒラリー・クリントン元国務長官は「デジタル外交」について、従来の「ハード・パワー」(軍事力や経済力)や「ソフト・パワー」(文化的活動や人道支援)との相違点を強調しながら、「スマート・パワー」だと表現した。
ヒラリー・クリントン国務長官(当時)は着任後、活発なデジタル化を進めた。ジョン・ケリー国務長官率いる国務省には現在、ツイッター(Twitter)のアカウント200個以上、フェイスブック(Facebook)のアカウント300個以上、さらにユーチューブ(YouTube)、タンブラー(Tumblr)、フリッカー(Flickr)の仮想事務所があり、これらを11ヶ国語で展開している。
この外交システムを調整しているのは、ワシントンにいる国務省職員150人と、外国駐在の専門家900人だ。国務省のこれらのサービスに登録しているユーザーは、2000万人にも及ぶ。
アメリカの例は他国、特にヨーロッパ諸国の外交機関に波及した。より成功を収めているのが、ツイッターで約19万人のフォロワーを持つスウェーデンのカール・ビルト外相と、約13万人のフォロワーを持つイギリスのウィリアム・ヘイグ外相だ。
フランスのAFP通信は2012年、世界発の国別「デジタル外交」ランキングを発表した。SNSなどのサービスにおける高官や外交機関の活動状況、登録者数、引用された数などが調査対象となった。151ヶ国中1位はアメリカで、トルコ、エジプト、サウジアラビア、ベネズエラ、メキシコ、インド、イギリス、コロンビア、日本が10位以内にランキングした。ロシアは13位だった。
こちらもイノベーション外交
ロシア外務省も時流に遅れじと「デジタル外交」を始め、「情報通信技術を活用しながら世論に影響を与えるロシア外交政策の手段」を意味する、「イノベーション外交」なる独自の専門用語まで生みだした。現在ツイッターに70個の公式アカウントを持ち、もっとも人気のあるロシア連邦外務省(@MID_RF)には約6万5000人のフォロワーがいる。
セルゲイ・ラヴロフ外相の声明は、ユーチューブの外務省のチャンネルや、フェイスブックなどで確認することができる。近い将来、外務省の公式サイトも更新するという。
さまざまな動きから、ロシア政府が新しい外交手段にかなり期待していることがうかがえる。ウラジーミル・プーチン大統領が2月に署名したロシアの新外交指針には、「ロシアに対する世界の客観的な認識の獲得」また「外国世論に情報的影響を及ぼす自国の効果的な手段の発展」を目指し、「新たな情報通信技術の可能性が広く活用される」と記されている。
諸刃の剣
それでも新外交指針全体から見えてくるのは、ロシア政府がインターネットやソーシャル・ネットワークを、国の安定や主権を脅かす脅威と考えていることだ。
一部専門家は、これを根拠のある警戒だと考えている。アメリカの「ジ・アトランティック」誌編集者であるブライアン・フン氏によると、「デジタル外交」には、少なくとも他の二つの見えない目的があるという。それは、公開情報源を使った諜報活動と、外交闘争の基盤づくりとして、他国の世論に影響を与えることだ。
ソーシャル・ネットワークは現在のところ、利益よりも損害を外交にもたらすケースの方が多いという。「エジプトで反イスラム映画『イノセンス・オブ・ムスリム』に対する反対運動が始まった時、駐カイロ・アメリカ大使館はツイッターで、この映画を支持する内容のメッセージを次から次へと発信した。このメッセージはアメリカ政府の合意を得たものではなく、結局アメリカに多大な外交問題をつくってしまった」とフン氏。
カーネギー財団のトム・カーバー副理事長は、最近ワシントンで行われた「デジタル外交」に関する会議の席で、ツイッターを使用した外交の失敗例を他に二つあげた。「マイケル・マクフォール駐ロシア・アメリカ大使が着任後、ツイッターでロシアの反政府勢力を支持するような発言をし、プーチン政権との関係が難しくなったことは記憶に新しい。ロバート・フォード駐シリア・アメリカ大使は、国民の反乱についてツイートし、国から追い出されてしまった。『デジタル外交』は諸刃の剣だ」。
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