9月24日に、ペチョラ海で拘束した環境保護団体グリーンピースの活動家30人を、「海賊行為」で告発した=タス通信撮影
海賊行為ではないが犯罪
まずくどいようだが、事件がロシアの領海内で起きた点を強調しておかねばならない。抗議船「アークティック・サンライズ」から、活動家たちはモーターボートに分乗して海上石油掘削基地に近づき、よじ登ろうとしたのだが、抗議船にはオランダ国旗が掲げられており、掘削基地からわずか3海里まで接近した。事件では物的損失も犠牲者も出なかったが、活動家たちは、海賊行為で起訴された。
ロシアの法律では、海賊行為は、「海上及び河川での、略奪を目的とした、暴力及び脅迫を用いた船舶に対する攻撃」と定められている。
活動家らの行為は、海賊行為(財産の略奪の試み)と既定できそうだが、その“攻撃対象”は船舶とは言えない。海上石油掘削基地「プリラズロムヌイ」は、海底に固定された常設の施設であり、その施設及び作業員への不法行為は、何か別の名称で呼ぶべきだ。
ロシア捜査委員会は、9月24日に、ペチョラ海で拘束した環境保護団体グリーンピースの活動家30人を、「海賊行為」で告発した。先週、様々な国籍の活動家たちは、 ロシアの海上石油掘削基地「プリラズロムヌイ」によじ登ろうとして、彼らと抗議船(砕氷船)は拿捕され、ムルマンスク港に曳航された。同地で、活動家たちは尋問を受け、報道機関筋によると、留置場に送られた。
なぜ犯罪行為なのか
とはいえ、大陸棚の掘削基地の安全を脅かす不法行為を既定する議定書に基づき、こう言うことができる。暴力及び脅迫を用いた、掘削基地を奪取または占拠は、犯罪であり、同様に、掘削基地上の任意の人員に対する暴力行為、またはその安全を脅かす行為もまた犯罪である、と。
したがって、グリーンピースの活動家らが、掘削基地によじ登ろうとしたとき、彼らは犯罪を犯したのであり、国境警備隊の行動は合法的なものであったことになる。
要するに、治安機関は、この犯罪者たちに刑事犯罪を適用することができるわけで、「ロシア連邦の大陸棚及び排他的経済水域に関する連邦法」に違反したかどで、告発できる。
海事法にも違反
ロシアの領海内に外国船が入ったことは、もしその船が平和目的の航海を行っているか、ロシアのいずれかの港に向かっていた場合にのみ、合法となる。ということは、アークティック・サンライズ号は、ロシアの領海内(基線から最大12海里)に入ったことで、「ロシア連邦の国境に関する法律」を犯したわけだ。
一方、排他的経済水域(基線から200海里)に入ったにすぎない場合でも、以下のケースでは法律違反となる。つまり、奴隷を運搬するか、麻薬を取引するか、許可を得ずに海上から放送を行うか、海底ケーブルを破壊した場合だ。
以上の違法行為の疑いが生じたとき、それを阻止するために、国境警備船を用いることは十分可能になる。
保釈金払えば釈放
だが、「船舶のアレストに関する1999年の国際条約」に基づき、十分な保釈金が支払われた場合は、速やかに釈放しなければならない。つまり、釈放するか否かは、今では金銭次第だということだ。
とはいえ、釈放しても、それは、その後の捜査を妨げるものではなく、自らの責任を認めることにもならず、今後の安全対策を放棄することにもならない。
*筆者はS.O.マカロフ提督記念海上・河川交通大学・海事法学部長。
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